Laub🍃

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2011.02.21
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はじめは、単に絶世の美女や世に一人と居ない良妻賢母を求めていたそうだ。
しかしうちの一族は美しいものでなく、賢いものでもなく「世界に一人と居ない属性の」者を求めた。





義務のなかで不必要なことをもとめることが我ら一族の本願だ。

常に迎え入れる嫁は違った風を呼び込める人物でなければならない。

不細工だろうと、半分男だろうと構わない。
むしろ異端なほうがいい。

友人の腐男子とかいう奴の言葉で言うと『属性コレクター』ってやつだろうか。

……しかし、未だかつて先祖が受け入れていない属性がある。




へんた !お前、この人は三世代前の本家の嫁さんにそっくりじゃないか!」
「違います!この人には…この人には、気になっている人が居るんです」
「その属性は五世代前の分家の嫁さんにそっくりだ!」
「いえ、それだけではありません。この人の気になっている人と言うのはストーカーで、お互いそのことに気付いていながらも話し合っていないんです!」
「……まあ、よし!」

兄さんの声に、ほーっと胸を撫で下ろして…兄さんから返された写真を受け取る。

先祖が迎え入れたことのない属性。
それこそが、僕たちの愛するもの。


『嫁』のキャラ被りをけして許さない厳しい態度が僕たちの家系の最大の特徴だ。

恐らく外の人には理解してもらえないだろう、このニッチ好きなクソ家は。


マイナー大好き一家。
僕らを知る人はそう呼ぶ。

その根源にある想いは、「脱・平凡」そして「脱出・王道」。

僕たちの家系は創成してきてからここ1000年、何故かすべての代で”王道転校生”に”平凡”として絡まれ続けている。

その代を断ち切ることが我らが悲願。


どうなってるんだこのシステム。どこから湧いてくるんだ王道転校生も非王道転校生も。
そして、どうしてそこまでやってるのに俺達は平凡ポジションをやめられない。

自分自身もまた、息子に「いいか、平凡にだけはなるなよ」と言うのかと思うと嫌気がさす。
自分が脱平凡しようとして失敗したくせに。

脱平凡を平凡が頑張ってやったら、身の程知らずの変人が出来上がるだけだ。
しかしそれだって本当の変人にはかなわない。結局俺は平凡なのだと思い知らされて、中学時代に折れて高校ではその過去を隠した。

過去を隠す…フッ…かっこいいじゃないか…

と思っていたのも束の間の事。

周囲に過去を隠す人が居まくる中では僕のそれなんて黒歴史どころかコックローチ歴史でしかなかった。

僕たちはもしかしたら、永遠に平凡の軛から逃れられないのかもしれない。



あー、やだやだ。

平凡も王道も、変人も非王道も、そんな概念この世から消えてしまえばいいのに。


最終更新日 2017年05月04日 11時41分08秒





彼は、ストーカー…今回の代の王道転校生が、平凡を自負する彼の気を引こうとしていたことなど、知る由もない。


平凡を自負する彼らの最大の異常性は、その『平凡以外』に対する絶対的な吸引性にある。
ーゆえに、何かしら彼らが『変』であっても、それ以上の『変人たち』に群がられることによって塗りつぶされている。


それを、彼らは知ることがない。


彼らの『平凡』。
それが自分の異常性への鈍感さと、他者への卑屈かつ傲慢なレッテルによりうまれていることを、彼らだけが知らないままである。





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最終更新日  2017.05.18 22:30:00
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