Laub🍃

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2011.04.11
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カテゴリ: .1次題
よれよれな、時代遅れの、蠅の王。

それはまさしくあなたのことですと第一王子は言いかけた。

彼の仕える王は、隣国の王について貶す。

そうして王子たちに言うのだ。

お前の時代には隣国を乗っ取ってしまえと。

第一王子は正直に言って、隣国などどうでもよかった。

隣国が餓えているだとか、悪政だとか、この国とは何の関わりもない。

下手に手を出して馬鹿を見るのも嫌だった。

だと言うのに、王の後妻に踊らされて王は王子達にそうした夢ばかりを押し付ける。



むしろ王政の弱まった時代にそんな民を消費するようなことをしたら民の支持率を失って真っ逆さまだと言うのに。

前の戦争の傷を忘れたのか。

隣国が……そして、この国がどうして、民を餓えさせているか分かっているのか。


王子は、ぎゅうと両の手を握りしめる。
若い有り余る力と血気。なんの役にも立てられないそれら。



その握りしめた手でもって、王子は今日も一人、剣技と勉学に精を出す。

いつの日か、必ず、自分の言うことを全て通す力を手に入れてやると。














王子は力を手に入れた。

自分の想い全て、言うこと全て、周囲の者が従うようになる力だ。


その力を手に入れる頃には、王子は王となり、

老いて、



後妻を得て、

よれよれの、

時代遅れの、

蠅の王となっていた。





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最終更新日  2018.02.28 00:41:39
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