Laub🍃

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2011.05.31
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カテゴリ: .1次題
赤い夢を彼女は見ている。

といっても、血まみれのホラー映画とかそういった類じゃない。

赤い赤い紅葉の山、赤い赤い鳥居の列の横を通り過ぎていく、それだけの夢だ。


鳥居の中をよく人が通る。彼女とは反対の方向に消えていく。

彼女はそこに手出ししようと思ったことは一度もない。

それは白無垢の花嫁だったり、鎧武者だったり、あるいは銀色の細い狐だったりと、千差万別だったが、見惚れる彼女に目を向けるということがない、その部分だけは共通していた。


それが何を表すのか彼女は分からない。

だが、ひたすら美しい夢だと思っていた。

かなうならずっと見続けたいと思っていた。





だがある日そこに、幼い子供が迷いこんできた。

子供はそこらの鳥居に体当たりして、抜け出そうともがく、そして脇を歩く彼女に気付く。


彼女は驚いて目を覚ました。



悪夢はそこからだった。

毎日のように子供が話しかけて来る。

無視して歩き続ける彼女に子供はここから出してほしいと訴えかけて来る。

ここを抜け切ったら山の神に食われてしまうのだと。

彼女は目を背け続ける。














やがて子供の容貌は少しずつ変化していく。

これは祟りだと子供は言う。

力強く黒々とした毛をはやした腕、眼光炯々、金色の瞳、赤黒くぬめった牙……





彼女は目を背け続ける。


彼女と同方向に歩み続け、逆方向からやってくる者達を喰らって更に異形となるそいつから。


お前こそが山神ではないのか。


彼女は言いかけてやめる。

振り向かない後ろに何があるのかを彼女は知らない。



それでも、そちらに行けば、隣に居るそいつと同じ運命を辿るような気がしていた。





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最終更新日  2018.03.02 04:19:06
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