Laub🍃

Laub🍃

2011.06.22
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カテゴリ: .1次メモ
 ある日を境に幼い従妹の接触が減った。

 やばい変態がばれたかと、従妹はぁはぁ萌えすなどと心の中で叫んでいたのがばれたのかと、あああの抱擁カムバック子供の全力大人が本気出せば解けちゃう(でもちょっと痛い)抱擁や笑顔でしてくる無茶振りカムバックあああああおねえちゃん膝枕してぇって断れない事承知で幼子特有の傲慢さ押し出すなんて仕方がないわねもうというかそこまで天真爛漫に言ってくる何てその年じゃレアよ他の大人には大人びた対応する癖にたまにこうしてデレてくれるなんてああでも最近はないなあまた言ってほしいけど無理かなあなどと思っていたら

 ドッ…

 ……え?

 ドッ…ドッ……


 ええええええ、なんですかこのご褒美ぃぃぃぃ!!?






 祖母の家にお泊りする時、正月ゆえに人数が多く、しかも予期せぬ親族の来訪で布団は埋まっていた。

「姫南ちゃん、環緒と一緒に寝てくれる?」

「……別に、いいよ」

 12歳、小学校高学年の大人びた……私この時代はもっとクソガキだったなあ……姫南ちゃんは、少しぶっきらぼうに言い放つ。うーん、見事なまでの無表情。全く何考えてるか分からん。

 彼女の笑顔を見ると私もつられてよく笑顔になれていたものだったが、彼女がこの状態だと私が変に口角を上げていてもなにこのおばちゃんにやついてるきもい、と思われてしまいそうでできない。私の無表情も人をびびらすらしいから私は結局微妙な困った笑みしか浮かべられないのだが。







「……どうしたの、最近の環緒」
「えっ、え、え?」

 あ、貴重な会話だ。
「……」
「ご、ごめ、質問の意味が分からな、」

 無駄にするまいと、その意図を正確に読み取ろうと努力するが、そうすればするほど、枕元の灯りの中の彼女は表情をこわばらせていく。

「……分かんないなら、いいよ」



 ああ、昔の私はどうやって彼女に接していたっけ。思い返せば彼女が私に抱き着いて来るばかりだ。私はそんな彼女を愛したし、彼女が愛する自分を少しだけ好きになれた。ああナルシきもい。

「……明日もちゃんと起きなきゃなんでしょ、課題やんなきゃなんでしょ」
「…え?」

 心配してくれているのだろうか。

「寝なさい」

「よろしい。おやすみ」

 ませた口調で彼女が言う。その声に、昔の私を引っ張り回していた頃の、親しみが感じられた気がして私は少女のことを最後まで考えながら眠りについた。

 彼女との接触が、最大の、襲い来る課題たちへの息抜きになっているから、もう少し、話したかった、なんて考えながら―――







 眠れない。
 数年前までは、彼女と同じ布団で寝ることなんてざらだった。むしろ自分が望んでそうしていたのだけれど。

 だけどいつしか彼女は「かだい」に追われるようになって、久々に会う休みでさえかだいをやるため早く帰ったり、酷い時はかだいを持って来たり……


 そんな彼女に、拒まれることが分かっていて近付ける筈ないじゃないか。

 わたしは、久々に彼女に抱き着く。少しずつ力を籠め、これ以上ないという時になったら力を抜く。彼女は、わたしが大人になったら、違う対応をしてくるんだろうか。

 覚えたての言葉を優しげな顔で聞くだけでなく、対等な存在として、それでも昔からよく知る同士としての距離感で。


 いつかとは逆に彼女の頭を撫でて、久々の匂いの中でわたしは目を閉じた。
















**********





年上:わお 年下:きな  無駄におきなわ





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最終更新日  2015.08.25 04:01:15
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