Laub🍃

Laub🍃

2011.11.03
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
トップは褒められる。
 収穫祭もある。

 僕らにないのはお葬式と結婚式だけだ。黒と白の世界、闇と光の世界。
 確かに綺麗だとは思う。花が沢山飾られている。

 けれど僕らには外で行われるそれの意義が分からない。

 死んだ後は分からないし、心で繋がっているのならそれでいいんじゃないと思う。

 親友だってそう言っている。
 綺麗な瞬間は日常にあるのだから、わざわざ飾り立てる必要なんてないって。
 親友が言うのならその通りなんだろう。



 僕らはお金を使わないから、テレビでたまに見る世界で結婚式にいくらかけたとか言っていても大して分からない。僕はそれらの大体の形や、文字の感じ、金額を殆ど覚えてしまっている。

 ちょっとでも興味を持つと覚えてしまう僕の記憶回路は自分でも謎なんだけど、使いこなせないのなら、覚えていても使う必要がない記憶ならば、厄介極まりない。だから、親友が覚えろと言った事と、親友の背中だけをその分沢山、沢山見るようにした。
 それであの白と黒を覆った。

 だけど、忘れかけていた頃に焼き物の授業で失敗して、それを思い出したのだ。
 失敗を、あたかも成功作のように…テレビで見たあのひらひらのようにしてみたら、先生のチェックを通ってしまってびっくりした。

「へぇ!なあ、今度の焼き物面白い形じゃん。何か参考にしたのか?」
「!ありがとう、えっとね、この間のテレビで見た…」

 しかも、君が訊いてくれた。
 僕はそれだけでよかったと思えた。

 ひらひらはすごい。授業で習った脳や腸のひだと似た形をしているのに、何かが全然違う。
 ひらり、ひらりは印象に焼き付く。君の翻るTシャツや割烹着のように。





 ひらひらと、目の前で蝶が舞う。

 記憶は、信じる事だ。無責任に未来に「いつかやって」と押し付けることだ。
 未来の自分は他人事を託される側だ。
 けれど今の僕はあまりに無力だから、覚えて、託すことしかできない。



 いっそ何かきっかけでもあればいいのに。

 冠婚葬祭のない僕らの毎日はあまりに同じ過ぎて、


だから僕は今日も心のどこかでこの世界の破滅を祈っていた。



 ひらひらと、何かが揺れている。
 何だろう。

 僕が揺れているのか。

 閉じていた瞼が、消えていく。
 綺麗に晴れていく。

 瞬間青空の真ん中に、泣き笑っている君が居るのが分かった。


 ひらひら、蝶が舞う。

 ひらりゆらりと、綺麗な曲線を描いて君の涙があとからあとから落ちてくる。

 そうかきっと僕はこれを見たかったんだ。


 いつも真っ直ぐな君の感情が揺れている様に惹かれていたんだ。





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最終更新日  2017.03.20 18:59:22
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