Laub🍃

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2012.02.24
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カテゴリ: .1次メモ




 人間になろうとして、今日もまた失敗した主の。



 墓場から拾ってきた腕だったものはぐずぐずに、主がその身に受け容れようとして結果弾き出してしまった骨はぼろぼろに、そんなごみの散乱した真ん中でぐすぐすとうずくまり泣いているのが我が主だ。

「主、いい加減に諦めたらいかがですか?」
「や…やだ……らって…あの子にぃぃい……」

 そう言うと、また主は泣きだしてしまった。巨大な捻じれた角も、これではかたなしだ。
 そんな主の頭に手を伸ばし掛けて、引っ込める。私が撫でても、きっと何も意味はないだろうから。

 ……まったく。

 恋心を植え付けていくのならば、後片付けをしっかりして、後腐れの無いようにしてくれればよいものを。


 数週間前に、この森にやってきた奔放な彼女は、親に捨てられたということを全く分かっていなかった。
 薔薇園で転げまわる彼女に苛立ち、追い出そうとする私を「ちゃんと教えるから」と言って止めたのは主だった。

 主はその無邪気さ純粋さにとても関心を抱いたようだった。

「名前、アルジっていうの?」
「そうとしか、呼ばれたことがないからね。……うん、それでいいよ」
「じゃあ、あたしがつけてあげる!」
「え?」

 そう言って遺された名前に、主は未だにしがみついている。

 ……とうに、時間は過ぎ去ったというのに。


「……主」
「なに?」

 失敗を繰り返す毎に声が心が幼くなっていく、それでも彼女の為と言う芯は失わない主。

「アリスが結婚するようです」

 私達の数週間。それは、外の世界へ帰って行った彼女にとっては十数年。



「!……そう。おいわい、しなくちゃ、ね。あ、でも、このすがたじゃ、だめだ、ひとになれない、なら、へんそ、」
「……そう仰ると思っていました」


 主は、それでも止まらないのだろう。

「いつか一緒に、人の街でお祭りに行けたらいいね」


 その約束とも呼べない約束を守る為に。



「……主」
「な、に?」



ならば、私は。



「少し目を瞑っていてくれませんか?」
「う、ん……な、なにをするの?」
「…………これまで試していなかった方法が、一つだけありました」



禁忌さえ侵してみせよう。







 私は足元でもごもごとうるさい麻袋を、――あの少女は、「アナタ」と呼んでいたか――生贄を、掴み直した。
        2015.06.23 08:25:35      



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最終更新日  2016.12.07 17:29:32
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