Laub🍃

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2012.09.07
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カテゴリ: .1次メモ
 僕は宇宙人に恋をした。

 村外れに住んでいる彼女は、宇宙人だった。
 言葉が通じないものだから、外国人だと思っていたのだがある日彼女の耳が本当はとがっていること、彼女の目が白と黒が逆なことを知ってから、にわかに彼女への興味が湧いた。

 だから彼女は、僕に懐いてくれたのだろう。

 僕は彼女に耳を傾けた。今日も今日とて彼女の言葉を、意味が分かっていないながらもうんうんと頷いて。
 その度に彼女は嬉しそうな顔をするからやめられなかったのだ。

 けれど崩壊は突然だった。

「×××××」
「うんうん」


 彼女の無表情。それは村の他の人々に向けられるものしかここ数年見ていなかった。
 僕に向けるのはいつも、家族に向けるような柔らかい笑顔。

 事実ずっと一人で生きていた彼女にとって僕は家族のようなものだったのだろう。

 どうしよう。

 「いいえ」と言えばよかったのか。意味も分かっていないのに。

 彼女はすっくと立ち上がり、僕に初めて触れた。手を繋ぐなんてそんな積極的な、と思ったらもう片方の手でそれを分断した。……絶縁の合図。


「……××××」
「…………さよなら」


 きっと僕と君が本当にお互いの気持ちがわかったのは、今くらいだったのだろう。

 …雰囲気しか分からなくても、お互い、とても楽しかったのにな。







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最終更新日  2016.06.26 22:06:48
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