Laub🍃

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2012.10.17
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
ー何故、自分なのだろう。

百舌戸要は今日も考える。

答えのない問いへの答え方を。


自分以外の誰かなら、夢が覚める前に幸せを味わおうとしただろうか。
自分以外の誰かなら、今度こそ大切な人を守ろうとしただろうか。
自分以外の誰かなら、大事な相手の心を助けようとしただろうか。


ーそんなあの子たちを差し置いて、どうして己が、ここに来ている?
過ちを繰り返さない為ならば、歪んで壊れたことにも気付かない私は不適格だろうに。


幸せでもなく大切な人も居ないときに戻ってしまった”僕”には、
未来で人を断罪しようとして早々お役御免になった”私”には、
そのような資格、ないというのに。





人を大切にする気持ちを思い出し、夏Aの子供たちへの教育方針を見直すか。
それとも、そんな気持ちは全く理解不能になっていて色々と食い違った反応をし
卯浪にさえドン引きされるか?




鬱注意。






*******************************




などと思う私はいまだに子供なのだろうか。


いまだに己の状況が信じられない。
蟻に囲まれ、水に蟻ともども落ちた時みっともないことに簡単に気絶した。
渦に吸い込まれるような感覚の直後ー私は、子供に戻っていた。

その数日後、自分より幼い子供たちを任された。
今にして思えば叔父の気遣い、セラピーのつもりだったのだろうが、互いに殺し合ったのがつい数日前だった安居や涼の酷く無邪気な様子を見た私はそれどころではなかった。

ー何故、自分なのだろう。

何度も過去の世界に戻ったと錯覚していた安居や涼…は不安が残るが、小瑠璃や源五郎あたりならば、それこそ何度も戻りたいと願っていただろうに。


だが、この機会を与えられたからには何か理由があるのだろう。



夢かもしれない。死ぬ前に見る走馬燈かもしれない。


だが私は、僕はここでやり遂げて見せる。
夢なら、覚めるまでにやれることをやってやる。


…今度は、失敗などしない。


そう思いながら、楽し気に走り回る安居を見る。

少し不安げな顔をする安居。

…まずい、久しく笑ってないせいで表情筋がおかしい。
子供の頃も暫くはおかしかったが、あの頃はごまかせていた。……どうして、だったか。

だが、そのぎこちない笑みにも安居は笑い返した。
子供らしい、完全な笑み。

思わず目を見張る。

……茂や小瑠璃たちと駆けていく様子は、両親の存在が欠けたーーーーーーーー
ネバーランドのピーターパンのようだった。













目の前の無邪気な子供たちが羨ましくて、けれどこのあとおこることを知っている自分としては哀れでならない。

特に安居。

未来に行き一番狂った彼は、この時代は何よりも誰よりも幸せという顔をしている。
ーそう、妬ましくなるくらいに。
ー幼いころの花を思い出すような顔で。

卯浪先生が矢鱈と安居に手を出していた理由も分らないではない。
未来ではどうでもよかった。
未来のどうしようもなく”強くなった”彼らに、卯浪先生が勝てるとは思わなかったから。
だが、過去ーいま、ではどうでもよくなどない。

安居が人を殺し。
涼がそれを止めるどころか助長し。
小瑠璃がぼうっとして。
他の4人もそうだ、駄目になった理由の根柢の一つに卯浪先生の存在がある。




…邪魔なものは、取り除くか?




もしうまくいけば、未来は変わる筈だ。

ーそう。一番未来を長い目で設計しようとしていたのは私の筈なのだから。
他の誰よりも。


失わないように親という存在は与えなかった。

失って困らぬようにエレベーターなどない古い施設で育てた。

失うことに慣れるように日常的に色々なものを壊してきた。


きっと私は失うべきものを間違えた。



だから、今度こそは、間違えない。






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最終更新日  2017.06.13 00:52:52
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