Laub🍃

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2012.12.22
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カテゴリ: 💫復活裏
※十年後の十代目は街中でフラベルの喧嘩を見かけてしまったようです
※某歌パロですすみません









 街中でフランとベルの喧嘩を見かけると大抵ベルの方が怒っている。
「なんでお前はいつもそうなんだよ!」
 フランの方は戸惑っている様子も見せずにいつもの死人のような青白い顔で「はいはいスミマセンーミーが悪うございましたー堕王子に正論で答えるなんて愚の骨頂でございましたー」と棒読みで返しているもんだから更にヒートアップするだお…いや、ベル。
「なんか大変そうなのなー」
「……周囲の人が巻き込まれないように止める?」
「前にスクアーロの野郎が止めて更に大事になってましたよ」
 取り敢えず今日の所は様子見するか。


「えー、一生懸命話聞いてるんですけどー?嫌ならもうちょっとこっちが返事しやすい発言してくださーい」
「ッテンメェ……」
 あ、ナイフが刺さった。
 周囲の人があれ本物?とかどよめいてる。やばい。取り敢えず骸に連絡するか。
「ほらーちょっと何か言えば鬼の形相で」
「挙げ足取ってんのはテメェだろうが……っこんのバカガエル!」
「あー後輩いじめですー助けてそこの十代目―」
「えっ!?」
 あ。骸電話に出た。あっ、僕は忙しいんですとか言ってワン切りされた。

「……あのね?俺達が願ってるのは争いのない日常なわけだよ」
 一応間に入る。全く効果ないような気がするけど、やらないわけにもいかない。

「ど・こ・が・だ・よ!!!」
 ベルが更にヒートアップする。あーなんかこれ既視感。どっかのパイナップルとどっかの委員長を見てる気分。
「まあまあまあ、落ち着くのな―」
「お優しい十代目がせっかく止めてくださってるんだからてめえらちゃんと聞きやがれ!」
「「だってこいつが」ー」

「声ぴったりじゃねーか」
「ほんとはお互い大好きなんじゃねーの?」
「ちょっと二人とも……」
 ぶふっと少し笑ってしまったのが聞こえたのか、その途端二人は更に臍を曲げてしまったようで。
「罵詈雑言なんてアホみたいですよー先輩。ミーが悪うございましたからはよ許してくださいよー。ほらほら、ほんとは大好き同士ならぎゅっとハグでもして仲直りしますー?」
「……仕方ねえな……なんて言うと思ったかクソ後輩!」
「あー……」
 本当にどうしたものか。一応人の多い所から隔離して公園まで引っ張ってきたとはいえ、未だに周囲のひそひそした目線は消えない。

「っていうか、どうしてこんな喧嘩になったの?」
 気を取り直して聞くも、打開につながるとは思えない。獄寺くんにも山本にも悪いしそろそろ帰りたい。
「えー、知りませんよー。普通に話してたらこの通りですー。まあ先輩いっつもヤクでも幻覚でも自分で決めてるみたいで情緒不安定なんで慣れてますけどー」
「……お前は……ほんとに、ほんっとに……!!」
「げ」
「「「え」」」
 ぼろり。
 ベルのもさもさした前髪の下から、なんか見慣れないものが流れてる。
「ちょ、なんで泣くんですかー」
 珍しくフランがしどろもどろになっている。
「…触んな!泣いてねえよ…」
 おろおろしながら伸ばした腕はふり払われ、
「……泣いてるじゃないですかー…泣きたいのはこっちの方ですよー」
フランはと言えば、涙なんて全く流れていないけれど人を一人や二人威圧感で気絶させられそうな顔をしている。
「すみませんって言ってるじゃないですかー」
「……行動で示せよ…ぐすっ」
「オーケィ、分かりました分かりましたー。今度から先輩命令には体は従いますって」
「お前の場合面従腹背でどーせ口ばっかだろ……」
「よく堕王子先輩がそんな言葉知ってましたねー」
「うっせ……バカエルに言われたくねーし……」
 そう言いながらも言われながらも背中をぽんぽんしているフラン、されているベル。
 なんなんだこの唐突なバカップル空間。出口が見えない。
「先輩を愛してますよー」
「……生意気…」
「昔はそうでもなかったですけどー、最近は先輩が必要としてくれたら嬉しいですー」
「だから何でテメェはそうやって棒読みなんだっつーの……」
「ミーがこの世界で消えてもー、先輩が覚えているなら、それでいいかなって思いますー。それだけは先輩に感謝してあげますー」

「……え?」

 次の瞬間。
 俺達の見ている前で、フランは消えた。

 最後にチェシャ猫のように、笑みだけ残して。

「……」
「……え……」

 そういえば、変わった世界には、少しずつ修正が入っていくと、聞いていたような。
 細かい所は、本人たちしか知らされていなかったようだが。
 ベルになんと声を掛ければいいのか分からなくてベルの方を見ると、にやりと笑ってそっぽを向かれた。獄寺君と闘っていた時に見せたものと似た、あの引き攣り笑いは。

「……あー、せいせいした!あんな馬鹿後輩居ない方が……」

 そう言ってスタスタと歩き出すベルの背中は、気のせいかさっきよりずっと痛々しくて。
 けれどその背中をぽんぽんと叩いていた存在は、もう居なくて。

「……あ…」

 視界の端。

 どこかで見た大きな林檎頭が過る。

「……あれ、もしかして……」

 言うと、振り返らずにベルが返す。
「……やめろ。もう俺とあいつは何の関係もないんだよ。
 …せっかく、穏やかな日常が帰って来たんだから……」

『お互いに』

 そう言って、ベルは雑踏の中に消えていった。
 俺達も、ままならない気持ちを抱えながら、本来の目的地に歩き出した。
 視界の端で林檎頭が、ベルの去って行った方向を向いた気がして、俺はどこかであの二人の喧嘩がまた見られることを願ってしまった。


*****


ベル&ジルBuon Compleanno!

フラベルが言い争ってたのはフランが自分の存在が書き換わることを当日まで言わなかったからです。

世界は良い方向に変わったけど、
フランのベルとの記憶は消えてしまった。
新しい世界でのジルの行方は分からない。
またあの掛け合いが見られるといいなあと個人的な願いをこめて。



ジルは…なんかごめん…この掛け合いに入れたら完全にギャグから帰って来れなくなるから……





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最終更新日  2016.11.08 21:30:01
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