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長押綴

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2015.09.24

ー好奇心と、度胸だ。

人はそれさえあれば前に進める。

とにかく試してみたかった。

自分の力を。仲間の力を。

とにかく読み込んでみたかった。

世界の事を。自分達の事を。

だから成長の可能性があるもの、新しい自分たちに出会えるものならなんでも試した。
外の世界に憧れもしたが、それだって好奇心と度胸…自信のお陰だ。

だから。

しまいにはそれ以外が口に出せなくなって
ノーと答える事すら死を目前に言えなくなって

そうして俺は過去でなく未来を選んだ。

自分でなく異物を選んだ。

＊

僕にはここ数年の記憶がない。

そんな僕をみんな憐れんで手助けしてくるけど、正直力なら僕の方が強いし、サバイバルの知識だって僕の方がある。

唯一足りないのはこの世界での実践的知識くらいだけど、そんなもの見て盗めばすぐに追い抜ける。
……ここの皆は、追い抜かれて悔しがる人、教えてと素直に頼む人、色々な人が居る。

僕が元々居た施設みたいに。

じりじりと魚の焼ける音。

だけど思い出したくない気もする。

……そんなの、僕じゃないのに。

僕はいつだって知りたがりで、色々な所に真っ先に飛び出すやつで。
小瑠璃にはたまにバカって言われて、茂には心配されて。

今だって、嵐と水泳対決をしていたら牡丹さんには男ってバカねえとあきれられたり、海水が冷えてきたらナツには心配されたりしていて、何も恐れることなく飛び出せるはずなのに。

思い出す事で僕は消えてしまうんだろうか。

未来の僕はどんな大人になっているんだろうか。

……卯浪みたいなのは絶対やだな。

……要先輩みたいな人に、なりたいな。

＊

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