Laub🍃

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2016.07.27
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カテゴリ: .1次題
※王道学園生徒会会計が愚痴を聞かされているようです。
※(王道転校生?(ヤンデレ化)→→→生徒会長) + 生徒会長弟 + 会計
 王道転校生? VS 腐男子






「冗談だと思って聞いてくれ。そして、決して口外しないでほしい。誰かに話さないと精神的にきついんだ。お前は案外口の堅い男だから、大丈夫だと思って話しているんだからな。
 ……そうか、俺のことは決して話さないでいてくれるか。……礼を言う。
 ……では、話そう。俺は最近、ストーカーに悩まされていた。
 この完全無欠な生徒会長嘉市要がそんなもので頭を悩まされるなんてと笑うだろうが、あれは少々俺の理解の範疇を超えていたんだ。

 相手の顔は知っている、最近転校してきた目隠れ男、あいつだ。様々な部の看板破りとして名高い戦闘力に理事長の孫という噂まであるボンボン、須藤夏。出会ってすぐに「友達になろうぜ!」と言ってきたのには驚いたが、俺様のファンになりたい気持ちが暴走したのだろう、致し方ない。快く許可してやった……おい、何を笑っている。その後妙なことになったんだ、聞け。
 何故か俺の行く先々に現れ、やたら貢物をしたいと言ってきて、少し「よくやった」と実家の犬にするように褒めればとても喜び、そして更に「要、要!」と俺様に纏わりついてくるという始末。…それならまあいい、俺様にそれだけの魅力があるということなのだから仕方がない。……何を苦笑している、退席しようとするな。話はまだこれからだ。……そう、問題はその後だ。

 俺の双子の弟、布田清。苗字も立場もおおよその外見も完璧な俺様とは全く異なるものだが、そこそこ身ぎれいにすれば奴と俺様と顔立ちはとても似ている。そしてメンタルはとても強い。
 だから、先日行った修学旅行の時やはりまとわりついてくる須藤の相手をしているのが面倒になり、トイレで立場を交換したのだ。トイレまで着いてくると行ってきたときは本当にどうしようかと思ったが、俺様の用を足す様子をタダで見られると思うなよ、と謎の言い訳をしたら納得してくれた。笑うな、あの時は結構切羽詰まってたんだから。
 須藤と何食わぬ顔をして接する清は凄かった。
「あー、俺?いつもとキャラ違うねって?やっぱりばれたかー!申し遅れまして、わたくし布田清。嘉市要の双子の弟で、時々入れ替わってます。でも君と話すのは初めてだねえ!よろしくー!!」
「お、おう!!よろしくな!!!」
 転校生を上回るハイテンションっぷり、我の強さ。ここで初めて俺は須藤が押されている所とか下品な話をしているのを見た。なるほど、そういった接し方をこれから心がけた方がいいのか?そう思いながら俺は、清に頼まれていた写真係を頑張った。やはり何人かにはばれたが、サプライズとなって丁度良かったのかもしれない。
 帰宅時、会話の内容を恐る恐る聞いたら清はとても嬉しそうに「要なんて好きにもてあそんじゃっていいよ~それをネタにするから!とか話したよ」とか言いやがったが、まあ概ね入れ替わり計画は成功だったと言えるだろう。俺も、須藤にもう少し違った接し方をしてみようか、なんて考えていた。

 ……数日後、あのことがあるまでは。
 俺が生徒会室で仮眠していた時、ノックの音が聞こえた。鍵はかけているから生徒会役員や教師なら勝手に入ってくるだろうし、風紀委員なら急ぎの要件の時にはドアを蹴破ってでも入ってくるだろうと思い、そのまま放置していた。有体に言えば居留守だ。眠気は何よりも強いんだ、仕方がないだろう。
 そうしたら、だ。
 ドアの隙間からしくしくと、「まだ…まだ愛が足りないのか……」とか言う呟きが聞こえてきて、そこから一枚、二枚と万札が差し込まれてきたんだ。


 一枚、二枚、三枚、四枚…と差し込まれた万札が、開けっ放しだった窓から入る風でふわりふわりと舞い始めた。部屋を刻々とあいつの手が触れたものが浸食していくんだ。
 そうして、ソファの上で固まっている俺の上に乗った。

 俺は声も出さず絶叫した。
 依然としてドアの前のぼそぼそという声は止まらない、下手をするとこんな精神状態が危ぶまれる奴とご対面しなければこの部屋を出られない。これが昼間ならまだ分かった。
 だが、仮眠するつもりで夜中までぐっすり眠ってしまっていた俺の目の前の時計は2時。

 なんだかもう、いろいろ無理だった。開けっ放しの窓から俺がここに居ると連想したのか。大当たりだけど、だからといってわざわざ起こしにまでくる執念がまず怖いし、万札に至っては頭がおかしいとしか言えない。お前もそう思うだろ。
 ロープを伝ったりしてこの部屋に入ってこられなくてよかったと心底思った。あいつならそれくらいしそうだったからな。
 俺は生徒会室にあった会計の私物、怪しげな縄と形状記憶の桃色の棒を利用して地上まで降りた。そうだ、あの変な棒を壊したのは俺だ。生徒会の一角を私物化した挙句妙な事に利用していたお前が悪い、反省しろ。
 ……何の話だったか。取り敢えず、その朝泣き疲れて眠っている奴とこじ開けられた生徒会室のドアと舞い散る万札が発見され、あいつは行き過ぎたファンとして教師と親衛隊の監視下におかれることになった。
「俺を慕うのはいいが、器物損壊のような犯罪行為はやめろ。それと、現金とはあまりにセンスがない。俺の「友達」とやらになりたいのならばもう少し周囲に聞くなどして努力してみたらどうだ」
 直接接するのは少し憚られたので、以前渡されていたメールアドレスにメールを送信してみた。そうしたら、この返事だ。
「そうだな!!!!ごめんな、ありがとう!!!!!」
 分かっているのか、分かっていないのか定かではなかったが、取り敢えずこれで分かってくれたのだろうと思うことにした。その後も何度かあいつに対し居留守や清との入れ替わりをしたが、他にも遊び相手が居て俺に執着し過ぎていないこと、清のような暴走っぷりに奴が対応できることを見て、段々とあの夜の記憶も薄れてきた。
 だが、その矢先、食堂で「よー!!今度一緒に学園の外に遊びに行こうぜー!!!」と言ってきたときは正直言って焦った。周囲の目線が凄く痛かった。
「あ、須藤!俺弟のほうだけど、それでもいいー!?」
 と若干ハイテンションについ返したが、仕方がないだろ、背筋がざわりと言ったんだから。なんとなく要として接したくなかったんだ。周囲の弟の存在を知っている生徒達からは「今日入れ替わってたんですか!?」「……気付かなかった」などと言われ、知らなかった生徒達からは「会長にこんなそっくりな弟居たのー!?」「そういえば噂聞いたことある…」とざわざわとされたが、計算の内だった。
「でも、もしかして兄ちゃんと一緒に行きたかったー?」
「お前でも全然いいぜー!」
 あの後結局ハイタッチまでした。仕方ないだろ、テンションが上がっていたんだから。
 結局当日は清に任せたけどな。
 その間見付かる事を恐れ俺は清を装い清の部屋に籠った。一人部屋でよかったとここまで思ったことはない。清のアニメキャラやこの学園の有名人物、主に我が校のありとあらゆる壮年教師の隠し撮りと思われる写真に囲まれた空間はある意味万札吹雪よりも怖かったが、須藤と一緒に居るよりは正直居心地はましなほうだった。
 数時間後。すっかり暗くなった頃、携帯から「終わった」とメールが来たから、清の部屋で落ち合って状況を確認した所、「ちょーいい人じゃーん!めっっっちゃいっぱいグッズ買ってくれた!!!よく知らないっぽいけどちょっとえぐいオタク話にも付き合ってくれた!!いやーーー今度お奨めのBLゲー布教してやろうかな!!」と俺にはよく分からない漫画の登場人物が書かれた抱き枕やら人形やら薄い本やらを取り出しはじめたので俺は帰ることにした。

 ……そういう対処法で合ってたのかよ……!

 若干「良い会長」「頼れる会長」らしさをファンの前では醸し出すのにはいい加減疲れていたのだ。もしかして須藤は俺が暴走したとしても許容出来るような人間なんじゃないか……!?
 とも思ったが、常時清のようにハイテンションで居ることも出来ないし、矢張り先日最後に直に接した時の気持ち悪さが先行して、清にあと2度ほど電話や出掛け先での須藤の相手を頼んだんだ。因みに清は帰ってくるといつも嬉しそうで両手いっぱいに何かよく分からないものを抱えていた。それを見て、もしかして入れ替わっている時にこいつが何とはなしに軽率に話した冗談に聞こえない冗談が先日の番町万札屋敷事件を招いたような気もしたけど…まあ、もう終わったことだ。
 因みに清が居ない時に須藤がやって来た時は今忙しいの一点張りをした。怖かったわけじゃない、断じて違うからな。笑ってんじゃねえ。
 そうこうしているうちに須藤のほうも忙しくなったのか、段々と電話も気が付いたらそこにいるということも少なくなってきた。念のため清に俺と同じ格好をしてもらっていたことも効いたんだろうな。一応須藤以外に対してはそのキャラクターを見せるなと念を押した。
 暫くぶりに会ったそいつは何故かどこかやつれていて、こころなしか震えながら話しかけてきた。
「ひ、ひさしぶり……。か、かなめ…だよな……?」
 そいつの鬼気迫る様子に俺は冷や汗を垂らしながら、先日清に「なんなら、俺のフリでもしてみる?」と冗談交じりに提案された時のことを思い出した。
「こんにちは、弟です!この前のケツトークまたしませんか!?」
 そう言ったらそいつはまたたくまに走り去って行ってな。いやあ、あの時は本当に弟が神に見えた。神は神でも邪神の方だが。ストーカーを追い払った褒美として生徒会のメンバーの隠し撮り許可を求められたときは本当にどうしようかと…いや、流石に許可していないから安心しろ。
 弟にその旨を話したら「チッ…逃したか…」と言っていた。…本当にあいつ凄いな…流石俺の弟だ。……?どうした、嬉しそうだな。俺が無事なのが嬉しいのか?俺の弟の強さに関心してんのか?」
「かいちょー、俺かいちょーが割とまともで、あと天然で良かったと思ってるよ」
「……?まともはともかく、天然とはどういう意味だ。馬鹿にしてんのか」
「かいちょーのストーカー、どっかで見たとか思わなかった?あと、ストーカーに双子の兄が居るってこと、知ってる?」
「……知らなかったが……それがどうした」
「今日の俺、変だと思わなかった?」
「…………いつもより…………口数が少ない……が…」

「気付かないんだ…

 ……ま、いいや。
 これから嫌ってほど、違いを分からせてあげるから。

 もう決して離さない。


 久しぶりに俺とまともに話してくれたな、




 か な め !」









 何があったか思い出したくもない。



 一週間後、俺は清を生徒会に入れた。

 清は何も訊かないで入ってくれた。

 数日後生徒会員の隠し撮り写真が数多く流通したが、俺は見て見ぬ振りをした。





*****









そしてリコールされる生徒会長





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最終更新日  2017.05.04 11:30:57
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