Laub🍃

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2017.07.02
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カテゴリ: 🌾7種2次表
悪役や笑われ役は見る方向によっては悲劇の主人公だ。





ー物語の中。

描写される人々の時間は跳んでいる。

それを描写されない限り、その時間はあってないようなもの。

感動の再会も、悲劇的な決裂も、日々の暗黙の了解も全て描写されない限り読者には見えない。



それはきっと人間関係でも似たようなもの。

人生が物語で、神様が作者だと言うのならー…
運がいい人、悪い人はどちらが主人公に近いのか。







努力をしたかった。
少しでも理解する努力を、少しでも相手の痛みを知る努力を。
二人ともに助けられた。だから、今度は自分の番だとーおこがましいかもしれないとは思いながらもー少し思っていた。

ナツは叫べない。
活発に運動することもできない。
豆知識もサバイバルに必要なものとは少しずれている。

けれど隕石によってナツは世間の重圧からひとつ解放されてもいた。
都会の隙間を縫って生きる野良猫のように、世間に怯える必要はなくなった。

夏のAチームで日夜過酷な訓練を受けていた安居、未来に因果を遺すコネの下で育てられた花とは立場が違う。

どんくさくて地味で落ちこぼれで神経質気味、しばらくの間ぬるま湯に浸かっていたらまた体がなまけて感覚だけが鋭敏化する。
説教される前に自分で気付くことはできる。

その責任が果たせなかった時、説教をして人を傷付けてまで相手や周囲にメリットを与えられなかった時、その批判を受け止めきれないのだ。

目立つ人たちは、物語なら王道的な主人公になるような人たちは、それでも批判をものともせず躍進する。人に叫び、自分の「正しさとは何か知っている」人生を体当たりでぶつける。
その部分しか知らないなら、体当たりでぶつけられても時間が飛び飛びで分からない。
だけど人生まるごとを受け止めきるほどでなければ駄目というのであれば、人は壊れるか余程相手を選ばないとーナツにとってのナッツのようにー不可能だ。

その点。夏のBチームは、全体的に落ちこぼれ、人生観が社会不適合なものとして設定され選定されているものだから、他のチームよりも「正しく」はない。だから少しだけ、ナツにとっては気楽だった。



それがやはり恐ろしくもあり、それでも羨ましかった。
自分にはできないことだから。

瞬間で行動することは、それまでの自分から一歩踏み出すことだから。

…だけど、そんなナツだからこそ、そんな芯となるナツだからこそ、まつりはいいと言ってくれたのだ。合わせるだけがいいわけじゃないと。
そうしてまつりはその言葉の通り、あの洞窟の中、涼を背に戦い抜いた。
だから蝉丸による担保あってではあるものの、ナツ自身もまた安居を背に言い切ることができた。
その言葉は以前と違って秋のチームに笑われることも蔑まれることもなかった。

これこそが自分のできる、責任を負って行動できることなのだとナツは実感した。
人に言葉をもらって自分で考えて、過去の記憶や周囲の状況と組み合わせて自分で気付いて、自分の能力を活かし切れるように精いっぱい行動すること。

その積み重ねによって、世間の人は人間関係を築いてきたんじゃないかと。

ーだからこそ、今日もナツはそうして生きる。
過去に沢山傷付いたからこそ、自他の痛みを恐れるからこそ、その経験を活かすべく。





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最終更新日  2017.07.24 20:45:20
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