Laub🍃

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2017.07.21
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テーマ: 小説(1398)
カテゴリ: 🌾7種2次表
滅びていく。





*注意*


安居xx歳視点、死ネタ、安居の回想という形です。
※花との関係は番外編がどう出るか想像が付かない為ほぼ書いていませんが謝ったという前提で書いています









ーむかしむかし、
未来だけが生き残る手段だと知った頃。
未来は一縷の希望だった。

だから、日々のちょっとした喜びを全部つぎ込んでまで、神経を張りつめていた。

その記憶も、もうここで終わる。


自分の体と心が滅びていくのが分かる。









 自分の死ぬ時がいつ来るだろうと、のばらのあの無残なすがたを見てからずっと怯えていた。

 何を見ても潰されたものと潰したものが思い浮かぶ。それも生き地獄と外では言うらしい。

 けれど、案外長生き出来て、見送る方の辛さを知ってからはー死が、案外怖くはなかった。

 死にたくなくて、死なれるのが嫌で、どうして代わりにそいつが生きているのか分からなくて、殺意が抑えられなくて、3回殺した。


 あの世と言うものがあるのなら、先に逝った奴らー特にオレ達が殺した奴と、オレが殺したあいつとも顔をあわせるのだろうか。……要さんとも。
 ーそうしたら、オレはどうしよう。……いや、考えても答えはきっと出ない。
 施設で育つ中でオレ達が要先輩や貴士先生達から教えられ、知ってきたのは人を含めて生き物が必ず死ぬことと、そうして他の生き物の糧になることだけだから。
 天国も地獄もオレ達は信じられなかった。この佐渡がこの世の地獄で、極楽だったからーそんな生きる者、そして死んでいく者への慰めはきっと意味がない。

 それでも、角又が以前話していたあの世の話だとか、ナツが思い出しながら書いていく色々な物語だとか、ちまきが描いていた極楽浄土の絵や地獄絵図だとかが頭を過り、あればいいな、なんて柄にもないことを考えた。




 -涼やナツ、嵐、夏Bたちがまるで自分自身が死ぬかのような顔で、覗き込んでいる。









 茂の声がきこえる気がする。

 ごめんな、ちょっと待ってくれ。
 もうすぐに行くから。


 ー涼、お前のその顔は前にも見た気がする。いつだったか。
 -ナツ、お前が死ぬのを見ずに済んでよかった。


 そうやってみんなに言っていると、オレを囲む顔がまた歪んだ。

 そういえば、こうして別れを惜しむ時間なんてこの世界ではなかったなーなんて呑気なことを想う。言えなかったことを後悔したり、人を恨んだり、もしあの時に戻れたらなんて夢見たりーそんな毎日も、終わるとなればどこか懐かしくなる。

 愚かで、情けなくて、弱くて、大人になれなくてー

 それでも、人として、重い体と頭を引きずって、しぶとく、他の命を喰いながらー生きてきた、それがあの施設、そして未来での日常だった。




 ーああ、右手が軽い。茂だ。


「…大丈夫?もうお別れは済んだ?」
「ーーーーああ」



 またな。


ーーそれまで、元気で。





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最終更新日  2017.08.11 21:58:37
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