Laub🍃

Laub🍃

2017.07.30
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
涼視点





ゆがみを正す為には、全てを取り入れ続けるか、全てを拒み続けるしかないんだろう。
生き続ける為には、自分の譲れない正しさを、何を犠牲にしてでも守るしかないんだろう。



あいつらは正しい。

あいつらは、悪くない。

あいつらは、悪い事は何もしていない。

むしろ頑張っている。
余計なことを背負い込んでまで周囲の為に尽くしている、生産的な人間だ。

当たり前のように正しい道を選び、歩く人間だ。
当たり前として正しい道を薦め、押し付ける人間だ。

正論を武器に出来るあいつらが、俺は少し羨ましくて、眩しくて……そして、ああはなりたくない、と思った。



……はなもちならない正論を言い続ける系譜。
自分に非を感じないからこそ相手を責められる声。

それが昔の安居と、花と、そして要さんは似ていた。


一度間違いを自覚して、どうすればいいのか分からなくなった安居は、以前よりずっと感情の起伏が減った。
あの烈火のような感情はたまに俺を叱る時に現れるくらいで、普段は流水のように穏やかに、そして少し悲しそうにあいつは笑ったり戸惑ったりするようになった。

あいつは周囲に正しいと認められなくても、自分の正しさを守れるようになった。
だから正しさを状況に合わせて変化させて、あいつの揺るがない芯を守るのが俺の役目だ。

きっと、これからはもっと穏やかにあいつは周囲に影響を及ぼしていくんだろう。

これからはもっと穏やかに、あいつは周囲から影響を受けていくんだろう。


欠けているから、あいつは今日も誰かを探している。
……いつその誰かが埋まるのかも、その誰かにあいつの穴を埋められるのかも分からないが。





安居の傷を深くして、その経緯を知り、安居の傷を癒した夏Bの話を聞いた花は、以前と違って安居を積極的に責めることはなくなった。
心の中ではどう思ってるのか知らないが。
代わりに花を取り囲む奴らの声が煩わしいとはいえ、あれなら当人同士の衝突には繋がらない。

欠けているから、奴は今日も周囲の話を聞いている。
……その話がどこまで奴に都合のいい話か分からないが。





あの二人を育てた要さん。
あの人こそが、あの二人に真っ直ぐな目と妄信に近い信じる力と、正しさを与えた。


そうして、正しいからこそ、正しさに安居は壊された。
正しいからこそ、正しさを背負って花は安居と衝突した。

日々壊れて、 あたらしい正しさ を殺しかけた安居を、要さんは殺そうとした。

吊し上げは成功、だが断罪は失敗。
告解すべきは要さんなのだから当然だ。

あの人は、今はただ静かに見守っている。
こちらを散々掻き回して傷付けておいて、のうのうと生きていることへの苛立ちと、生きている限りはいつかはまた話をできるのではないかという馬鹿みたいな希望、それで安居が罪悪感や絶望を感じずに済むならいいという安堵。
……俺自身も、まだ、責められる相手が存在しているという安堵を抱けている。

欠けているから、あの人は今日も静かに責任を負ってくれている。
……いつ、その期限が尽きるのかは分からないが。








それでも、誰もが足踏みしている状態を打ち破るのは。
仲間の誰かが馬鹿をやらかして寄り道から帰れなくなった時に、王道でもって元の……遠い過去から確実に受け継がれ、遠い未来へ確実に続いている道へ引き戻すのは。

「だから言ったんだ」と呆れながら、分からないだらけの道の少し先で、ほのかに光りながら待っているのは。


あいつらの持っている正しさだ。


失敗も絶望も全て燃料にして、あいつらの歩む道は太く長く続いていく。






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最終更新日  2018.03.15 12:28:08
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