Laub🍃

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2018.02.10
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
外伝後の源五郎独白三人称。
・源五郎にとっての安居とは
・今後の関わり方は
・追放について
・群れ・リーダーの形

それらについての一つの行く先の話です。

おおいに自己解釈的部分があります。苦手な方ご注意ください。












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田中源五郎は、群れのリーダーを務めている。



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安居が怨恨を乗り越えて自らの非を認め、謝罪をし、和解をしようとしたことは源五郎にとって安心材料となっていた。

和解した振りをして騙し討ちをする器用さなど安居にはない。

我らがリーダーの復活。
涼のそんな目線を、源五郎は少し微笑ましく観察していた。





要の使命感を最も受け継いだのが安居ならば、要の冷静で穏やかな目を最も受け継いだのは源五郎だ。


群れを乱す個体が追放や隷従、あるいは殺害により無力化されれば、残った群れが結束力を固める所まで同じだ。

それも自然だ。力だけでなく、周囲の支持を集められるような、よりよい種を残す為の。

源五郎達は使命を背負っている。よりよい種、よりよい能力、より繁栄できる力を未来に継いでいくための使命だ。
手段がどうであれ、能力は能力であり、経緯がどうであれ、追放は追放。争いには意味があり、そしてまた、その結果である勝利にも敗北にも意味がある。

勝利と敗北。それは状況と向き合う相手との相性で決まる。


また、夏Bのように危機的状況の経験が足りなかったり、特にナツのように自分の判断力に自信が持てないタイプの子は、指示された、向いているとされた内容をやってみて、そこで開花しやがて自分の足で歩けるようになる。

一方で後任を継いだ源五郎は、常にみんなの意見を聴き、頼む時にも話し合いの場を設けるタイプだ。その方法は平穏な時、安定している時……そして関係が煮詰まっている時に最も能力を発揮する。無駄な火種を作らず、争っている場を納め、調停し、和やかに公平に管理する。複数の立場、役割、人間関係、過去にあった出来事のうち尾を引いているもの。それらを源五郎は客観的に、柔らかい口調で言及出来る。
こうした安定した時期においては、突発的な他の脅威がなければ安居は力不足だ。
動かなくていい時に動いてしまう。状況の変化に過敏で、些細な、見落とすべきことでさえ見咎めてしまう。運動能力も判断力も神経質なまでの察知能力も、同族への攻撃衝動と繋がれば全ては裏返る。

常に先生達の試練を受け、先頭の風を切り続けていた頃ならよかった。
敵対するものは先生達と、死だったから。

だが洞窟の中暮らすならば、その性質はむしろ逆効果ともなる。

源五郎も、深夜徘徊する安居を痛ましいと考えてはいた。
風通しの悪い状況でもがいて、窒息するかのように日々顔色を悪くしていく安居。
仲間として不安だった。

だが、その案じる対象は他ならぬ安居によって増加した。

『一緒に暮らす』ことを提案した安居の声を、源五郎は回復の兆しとして捉えた。
そして源五郎も鷭も小瑠璃も、あゆも、虹子でさえ、他のチームとの交流を始めた。
夏のAにとって案じる対象が徐々に増えていくこと、協力し支え合える事は良い事の筈なのに、安居の状態は悪化した。
矛盾している。
夏のA皆がそう思っていた。

そして、安居と涼しか知らない何かしらの事件と、花が関係していたことがとどめだった。

今の安居と、かつて築いた絆との間に次第に亀裂が走り始め、そしてとうとうあの日、源五郎は彼らとの別離を決意した。







結果的に、分裂したことは正解だった。
分裂した後、要が必要以上に安居を見下げたことで、源五郎や小瑠璃は反感を持った。
そして、やがてそれぞれ再評価をするようにもなっていった。

あの施設を温室に例えるならば、劣悪な負荷による淘汰と変異はさしずめ品種改良といった所かもしれない。

源五郎は評価をする。生物全てが源五郎の愛する対象である。
適した環境で水を得た魚の如く生きる生物を評価する。
劣悪な環境に馴染むべく、劣悪な環境でこそ輝く生物を評価する。

そんな評価の対象が、要にとっては、人間だったというそれだけだと源五郎は推察する。
劣悪な未来の為に劣悪な状況に適応出来るよう育てられた種。
そのエースが安居だ。


安定しない危険な、突発的な新しい脅威の訪れるものというのがまさしく要の考えた、そして他のチームが初めに闘った未来。
安定した比較的安全な、例えば子供を安心して育てられるような状況というのは、徐々に皆が立ち直り、旧世代の、あるいはそれより少し原始的な村社会を築いた……未来の未来だ。


ゆえに、安居が少人数で外の世界に向かうことは源五郎にとっては正解に近かった。

外の世界で難題、特に初めて向き合う羽目になる問題に対して、効率的かつ頼もしく安居は渡り合っていけるだろう。恐らく銃弾がなくても、外の人々となんだかんだで協力しながら帰って来るだろうと源五郎は半ば確信に近い想いを抱いていた。

勿論、あまり使いこなしきれない船を、通用するように進化させることも、安居と、そんな安居をサポートする涼が居れば容易であるように源五郎には考えられた。

止まらない恨みや恐怖を前に進む力に変えるのは素晴らしいことだ。
だが先生達から与えられ、慣性の如く、先生達が居なくなっても止まらずに、更に足される燃料でもって勢いづいたその足をもって、誤った指針に基づいて進めたことがいけない。
指針は修正された。だからもう大丈夫だ。
やったことは消せない。恨みも消せない。歩んだ足跡は残っている。今後似たようなことをするかもしれないという疑心もある。それでもこれから歩む道では、もう少し共感できるようになるかもしれなかった。

源五郎はリーダーをできると、安居が言っていたことを源五郎はナツから聞いていた。
かつてのリーダーに認められたこと。それが源五郎にとっては少し誇らしかった。







陸で導く代表は源五郎が。
海で導く代表は安居が。


そうした未来も、もしかしたら訪れるのかもしれなかった。

共感して、たまに互いの抱える問題を話して。
そんな日がまたいつか、来ればいいと源五郎は思った。





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最終更新日  2018.03.02 20:58:42
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