Laub🍃

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2018.07.09
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カテゴリ: .1次題
ぼくたちは小さな村で暮らしていた。

もともとが流民の家族いくつかが寄り添って所帯を新たにもったような、とてもとても小さな村だったから、みんながみんなの顔と名前を知っていたし、小さな成功も失敗もなにもかも知っていた。


小さな鉱山が近くにあったから、それの掘り出しと、行商人への売り出し、または自分たちが行商人になることでなんとか細々と暮らしてはいけたけど、何か大きなものを望めるはずもなかった。

弱い者いじめはしないけど、何か罪を犯したら村八分にする。何代か経たり、大きな功績をあげれば赦す。
ぼくたちのもとに余所者がやってきたら表向きは優しく扱い、血縁を持てたら今度こそ歓待する。

それらがぼくたちの処世術だった。


裏切らないのは長期的な損をしないため。
正直に生きるのは立場が悪くなることを防ぐため。


……それなのに、ぼくたちはたった一人のよそものでうらぎりものに滅ぼされた。




ぼくたちは当然、自国に助けを求めた。

その中にぼくの姉さんの恋人も含まれていた。

そいつが裏切者だった。
そいつは敵国の斥候で、自国の偉い人を殺し、そしてぼくたち流民の受け入れに頭を悩ませ時間稼ぎをする為にバカなふるまいをした。


そいつが裏切者だとは知らなかったけれど、そいつが最近……といっても5年前だが……やってきた新入りということは言わなかった。それ即ちかくまったと同然とみられ、ぼくたちはみんな殺された。


ぼくを除いて。

小さな村。小さな小さな村だから、大きな流民の街の一角で暮らしていた。
そこでみんな焼き殺された。

ぼくらだけが生焼けの死体の中、生き残った。


呆然としたまま、ぼくは一つだけ思った。


ーこうなることをわかっていて、あいつはあんなことをしたんだ。



ーぼくも、おなじことを、あのくににやればいい。



ぼくの腕の中、姉が託した子が眠っている。

この子の為に。……ぼくの為に。

ぼくは、よそものになろう。





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最終更新日  2018.08.19 00:28:44
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