Laub🍃

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2018.07.13
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カテゴリ: ◎2次裏漫
沢山の死を見送った。

 人の営みの根幹に位置するこの仕事なら、医者と同様に、どこかにいるかもしれない彼らと少しは関われると思った。


 ……けれど今日も俺は、誰一人として見付けられない。





 俺はよく、子供から青年の葬儀を担当する。

 若くして亡くなった人々やその遺族の痛ましさに耐えきれないという同僚に代わりを願い出る……それだけではない。

 俺が昔見殺しにして、弔いもろくに出来なかったあいつらを思い出すから。自然と、俺は前に進み出ているだけの話だ。


 むかしむかし、俺がこの世に生まれ出る前、俺は子供がみんな死んでいく世界に生きていた。
 そうして俺含め少数の子供だけがやがて青年になり、そうして子供たちを殺した奴らと同じ大人になり、老いて死んだ。


 そうして俺は今もこうして生きている。生きているから、弔う。
 あいつらに似た子供たちを。


「……葬儀屋さん、ですか?」
「……ええ、そうですが……あなたは、どなたの……」



 振り返ったそこに、赤。

 とっさに手を見下ろす。俺を庇ったあいつの赤に溢れているはずの。

「ど、どうしました?」
「いや、なんでもない」

 言いつつ、目の前の塾講師だという彼の道案内をする。
 困ったら何でも俺に訊いてきたあの姿があいつに重なる。
 幼い、そこまで関りもない人間の為に涙を流す姿があいつに重なる。


 あいつが大人になっていたらきっと、こんな姿だったんだろう、と思わせるその姿。

 涙に濡れた目から、その幼い仕草から、俺は目が離せなかった。





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最終更新日  2018.09.25 21:43:47
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