Laub🍃

Laub🍃

2018.07.17
XML
カテゴリ: ◎2次裏漫
彼が葬儀屋をやっていると知ったのは、殉職した上司の葬儀でのことだった。

 僕は彼を知っていた。だからことさらよく話しかけた。
 上司とは大して親しくなかったし、そこまで惜しむ相手とも思えなかったけど、正義漢の彼ならきっと好むだろう、いかにも悼んでいるという態度を取った。

 実直で素直で、ひねくれた大人にとっては眩しいけれど危うくも思える彼は容易く乗ってくれて、そうして共に犯人ーといっても薬や銃なんかを扱う組織の一員ということしかわかってないがーをとっちめようという話になった。

 僕の好きな彼のままだった。


 彼の人脈や僕の情報網で、徐々に彼らは追い詰められた。
 そうしてハッピーエンド、彼らは全員死ぬかお縄についた。

 こうしてこの地域は平和になった。
 お互い暇なのはいいことだなんて彼と笑いあって、そうして生きていくつもりだった。



「この野郎…よくも……!」

 ああ皮肉にも僕は、不相応に高い所に立ってしまったせいで、狙いやすくなってしまったらしい。

 町の平和を称え、活躍した者に褒賞を与えるその場で、よりにもよってこんな凄惨な場面が広げられるなんて。

 怒号と、捉えられて喚く犯人の泣き声が遠くに響く。

 鈍い振動、傾いて直後ぶれる世界に赤い花が散る。

 彩られるのは、倒れた先にある彼の顔。
 そういえば彼の葬儀で、赤い花を見たことがないな、なんてどうでもいいことが過る。

 群衆の中、酷い顔で手を伸ばす彼は、いつかの彼と重なって。
 僕は微笑む。

 どうか、君は最後まで生きてと。





 あいつは手柄を立てたがっていた。
 俺に誇れる手柄を。
 俺に認められる手段として。

 昔の俺はそれに気付けなかったし、気付いたとしても矜持が邪魔して、補佐どころか応援さえできなかっただろう。

 負けたくなくて、生きていたくて、そうして俺はあいつを助けなかった。




 だがあそこで死んで生まれ変わってから俺はあいつに本当に会えた。
 死体でなく、ゆめまぼろしでもなく。

 だから今度こそはあいつを支えようと決めた。

 俺を支えたあいつが死んだのなら、
 あいつを支えた俺が、今度は死ぬはずだから。



 ……それなのに、どうしてまたこうなる。


 俺の目の前、あいつが倒れている。

 昔と同じように血まみれで。

 俺も殺されるかもしれなかったのに、あいつだけ。


 嘘だ。


 震える手を、重ねる。

 血が湧き出る腹。
 肝臓だとしたら嫌になるくらいいい狙いだ。

 近くに居た医者のような人が応急処置をしているが、間に合うかどうか。


 それでも握る。
 あの日届かなかった手が、今ここで、少しでも温かいものと触れているから。

「起きろ」

「まだ終わってないだろ、主人公」


終わらせない。
終わらせるな。

今度こそ、一緒にゴールするんだろ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018.09.25 22:11:35
コメントを書く
[◎2次裏漫] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: