Laub🍃

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2018.11.25
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カテゴリ: .1次小
好きな子のノートを盗み読んだら、そこには僕が描かれていた。

だから僕は定期的にこっそりと好きな子のノートを覗いている。

ほら、今日も。そのノートは机の中に置かれている。

もしかしたらあの子は僕に読まれているのを知っていたし、読まれるのを待ってるんじゃないか?
だって僕の発言も僕の気にしてることも全部そのノートには描かれているんだ。

恐ろしい反面嬉しくもある、だってこれは愛だよ。


けれど僕は気付かないふりをするんだ。
ベランダにとまった雀が逃げないように、軒先に育ったつららが落ちないように、そっと君を見守っていたいからさ。



なんて思っていたらその子は他の男とくっついていた。


そうか、焦らして楽しむつもりだね?
僕は気にしてないふりで応援してあげるよ。

その陰でこっそりと君のノートを盗み読む。
そこには僕とーーー名前は書いていないが僕だろうーーーー彼女が付き合う妄想が描かれていた。

はぁ、と生暖かい息を漏らした。
そうか、僕と付き合うのが怖いから、僕に幻滅されるのが怖いからこうして代わりのもので我慢しているんだね?なんて健気なんだろう!




僕はきっとずっと君の心の中で生き続けるんだ!








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



名前もうろ覚えなクラスメイトが、昨日校舎から飛び降りたらしい。
そういえば、少し彼氏に似ていた気がする。

「大丈夫?」


先日やっと両片想いだと判明した彼氏に心配された。
この人のこうやって気持ちをすぐに伝えてくれる所が好きだと思う。


「少し、髪型がきみに似てたから…余計に、辛かった」

こういうことを亡くなった人に勝手に言うのは残酷だろうか。
でもこの世は言ったもん勝ち、生きた者勝ちなのだ。



「えっ、そんなのいいのに」


控えめに笑う彼に申し訳なく思う。

帰り際、好きな食べ物の話で盛り上がっていたら丁度目の前で焼き芋を焼いていた。
代わりに周囲の落ち葉を集め、そして手持無沙汰だったノートを焚火にくべる。


たちのぼる煙がどこか夢の断末魔のようだった。

それから目を逸らすように、手の中の温もりを割って彼と共有した。





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最終更新日  2021.04.14 01:06:13
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