Laub🍃

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2019.09.23
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
安居後天性女体化




*******

 安居の瞳はいつも星のように、或いは流星のように輝いている。
 けれど今日はそれが酷く昏い。

「お前は…誰だ」

 問いかけると、安居の姿を借りた何かは、とても静かに笑った。

*******


「安居」

 茂であって茂じゃない幼馴染。

 この再会を素直に喜べないのは、俺の今の体が俺のものじゃないからだろうか。

 掛ける声は同性のものから異性のものへ。

 着替えもトイレも風呂も別、授業だってたまに分かれる。

 それがどこか寂しかった。

 同時に。

「小瑠璃、近い」
「風呂なんだから仕方ないじゃん…というかなんで人の体から目を背けるのさ。自分は堂々と体を曝け出す癖に」

 小瑠璃がやたら近い。
 もう少し前の年齢なら女子全員から全身丸出しにしてるところを馬鹿と言われてた俺だ、そんなにすぐに女社会に馴染めるわけじゃない。

「あーもううるさいな、これでいいか!?」

 体にタオルを巻きつけると小瑠璃が満足げに鼻をふんと鳴らした。


「……」

 卯浪が確かこの数週間後に性教育をして、子供を作ることへの気構えについて話し始めるんだよな。
 俺は、もしこのまま未来に行くことになるとしたら、誰かと子供を作るんだろうか。
 -いや、そもそも、一生このままなのか。もうあの世界に帰れないのか。
 せっかく要さんと話して、花に、秋に謝って、夏Bとも話すようになったのに。


 分からない。この世界で育ったであろう「俺」の方が、あいつらとうまくやっていけるなら、その方がいいのかな。


 そう。男だろうと女だろうとやることは変わらない。

 ぜんまいのネジをぐるぐると巻くように、歯車をギリギリ回すように、俺が誰かを助けることはあらかじめ決められたプログラムで使命で存在意義なのだから。

「-んご、あんご!」

 そんなことを考えていたら、唐突に頭をわしゃわしゃと掻き乱された。

「あんご若白髪生えてる、切ろうか?」
「!……いや、いい」

 俺のかつての持ち物だった白髪は今たった一本になっていて、それでも。それがあるということが何故か無性に悲しくて、それでも心強かった。

「ありがとう」

 ー元の世界には、大丈夫だ、きっと帰れる。
 なぜかわからないけれどそんな確信がある。

 だから今俺がすべきことは、この世界で、俺が今まで学べなかったことを学ぶことだ。
 俺の大きな強みは、成長していくことなのだから。

 見上げた風呂場の空には、俺を勇気づけるかのように北極星が光り輝いていた。





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最終更新日  2020.09.25 03:30:58
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