Laub🍃

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2019.12.27
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「ザウベラさんは大丈夫かな」
「そんなのレインの気にすることじゃないよ。大丈夫だってきっと。あのしぶとくて嫌な奴なら」

 話していてまたザウベラに言われたことを想い出したらしく、ウィズは顔をしかめる。
 そうかな。そうかもしれない。

「それより、レイン。こっちはこっちで大変だろ」

 水の魔王。光の魔王の無尽蔵の魔力を食って、いくらでも死霊や魔物を生み出して使役してくる。
 交渉はきかない、もとより期待していない。

「こいつにも人質が効けばいいのに」
「無理だよ。こいつの人質は泉の中で丁重にしまわれているから」

「この際手段は選んでられないよ」
「レインって結構ドライだよね…そういう所も好きだけどさあ」

 ウィズが笑みを深める。

「ねぇ。レイン、こいつに人質は効くの?生き字引きなら知ってるんでしょう、先代魔王たちのこと」
「……効くよ。だってこいつは、その人が大事過ぎて、傷付けた人間たちを子々孫々滅ぼそうとしてるくらいなんだから。もちろん失敗したら命は無いし、以前それを試して失敗されてからは更に守りは厳重になったから、不可能だけど」
「不可能を可能にするのが、呪いだろ?」
「……ウィズ。何を、考えて」
「レイン、オレの最初の職業忘れたの?『盗賊』」
「……!」
「レイン、大神殿の権能使えるんでしょ?オレを転職させてよ」
「でもそんなことしたら、体力と防御力が一気に減るよ。能力を発動させるまでに殺される」


 ウィズが私の首飾りに手を伸ばす。

「身代わり……」

 木の魔王を封印した時、木の魔王の影武者ブレスがくれたものだ。

「でも、私にしか使えないようにしてあるって」
「それは大丈夫。数秒だけなら「騙せる」から」


 ウィズの長い髪が、展開した泥盾の隙間を縫って来る水の魔王の攻撃に散らされる。

「私はお前。お前は私」

「チェンジリング」

 瞬間、火の魔王と同じ色の炎がウィズを包み込む。

「-どう?似合ってるでしょ」

「……!!!」

 それは、火の魔王の眷属ーーーーコジョウの能力!

「何をしたの、ウィズ。いくら元が盗賊でも、能力まで盗めるわけがない」
「契約をしたんだよ。この戦いが終わったらあいつらに力を貸すって」
「怖いよ、何それ……」
「どんな対価を払ったって手に入れたいものがあるんだよ」

「レインと居られるなら、どこでもいい。レインと居られるなら、なんだってする。
 そこが天国だろうと地獄だろうと」

 そう、私にそっくりなウィズは言って、私の展開した領域に足を踏み入れ、「盗賊」に転職した。

「『大盗賊』発動ーーーーー対象、水の魔王の宝物。」





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最終更新日  2020.12.26 22:05:48
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