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2010.10.16
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(Ovidius, Ars amatoria )
~岩波文庫、2008年~

 古代ローマの詩人、オウィディウス(プブリウス・オウィディウス・ナソ。B.C.43-A.D.17/18)による代表的な詩の邦訳です。原題を素直に訳せば『恋の技術』『恋愛術』となるところですが、そこをあえて(もちろん内容をふまえた上で)『恋愛指南』という邦題にしているのが素敵です。
 本書の訳者解説にもありますが、本書は「弁論術」のもじりで、恋愛についても技術を伝授しようという意図があるようです。内容も、オウィディウス自身が本文の中に記しているように「たわむれ」で、まじめに恋愛術を伝えつつ、同時代の詩などのパロディにもなっているのですね。ギリシャ神話の逸話がふんだんに盛り込まれているので、ギリシャ神話や同時代の詩や文学作品に詳しければ、もっと楽しめただろうなぁと思います。

 本書は3巻構成となっています。第1巻は、男性がいかに女性をつかまえるか、第2巻は、つかまえた女性をいかに逃さないでおくか、について技術を説いていきます。そして第3巻は、女性の側は男性をつかまえ、また逃さないためにいかにふるまうべきか、を論じています。
 今から2000年も前に書かれたとは思えないくらい、現代にも通じる部分がたくさんあるのが楽しいです。たとえば…。
「鹿の骨髄を混ぜたものを人のいる場でつけることも、人前で歯を磨くことも感心できない。そうすることで美しくはなるが、眼にするのは見苦しい」(109頁)


 また、女奴隷にお化粧してもらいながら、女奴隷を痛めつける女主人や、今では詳細不明なゲームなどなど、当時の状況をうかがい知ることのできる描写もあって、興味深いです。

 ネタとして面白かったのが、オウィディウス自身が失敗したことを書いている部分です(実際にオウィディウスがそういう失敗をしたのか、作品上のネタなのかはこの際気にしません)。オウィディウスはまるで恋愛の達人のように恋愛の技術を説いているのですが、自分がした失敗と同じ過ちをしないように、とも説きます。
 その失敗というのが、「かつて逆上して、愛する女の髪をぐしゃぐしゃにして」(62頁)しまったというのですね。ところが女性には、下着を引き裂かれたと言われます(「そんなことしてないのに!」とオウィディウスは思ってるのですが…)。そこで、下着を買い換えてあげないといけなかった、というのです。なんというか、人間、今も昔も変わらないものですね…。

 本書は中世の諸作品にも大きな影響を与えているということで、今回全体を通して読めて良かったです。今後勉強していく中で、なにかで本書を参照する機会も出てくるかもしれません。
 また、内容的にも楽しい1冊です。

(2010/09/23読了)





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Last updated  2010.10.16 08:38:29
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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