高木彬光『死を開く扉』
~角川文庫、 1975 年~
神津恭介シリーズの長編です。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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松下研三は、出版社社長から埋蔵金伝説の話を聞き、小説のネタを得るために福井県を訪れた。そこで旧友の福原を訪ねると、松下の小説をはじめ探偵小説好きの柿山と出会った。
福原と柿山から、四次元の世界を目撃しようとしている男の話を聞き、松下は俄然興味を抱く。その男―林百竹は、2階の自室に、外に向かった扉を作ったという。階段などはなく、危ないということで、扉の外は壁で覆われたとのことだが、林はなおも魔法の研究を続けているという。
松下が、福原の蔵書の中に、林を呪うようなメモを見つけ、不安をつのらせる中、事件が起こる。話題となっていた林百竹が、密室状況の中、銃弾で殺されていたという。
神津恭介と多くの事件の解決に携わってきたため、松下も捜査に協力することとなるが、林家の複雑な人間模様のなか、犯人とおぼしい人物も、殺害の方法もなかなか判明しない。
電話で状況を聞いた神津からの助言を受けながら、手掛かりを探っていく松下たちだが、さらに不可解な事件が繰り返される。
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たまたま、本書の前に 『影なき女』 を読んでいて、その中の「黄金の刃」にも、四次元の世界に行けると豪語する人物が登場していたので、もしや関係のある話かと思いましたが、まったく別の物語でした。
密室殺人の謎も深いのですが、神津さんの助言もまた何を意味しているのか分からず(御手洗さんが石岡さんに一見不可解な指示をするのを連想しました)、どう真相解明にからんでくるのかをわくわくしながら読み進めました。
松下さん、神津さん、福原さんの深い友情が伝わってくるのも味わい深いです。
面白かったです。
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