~光文社文庫、 2007 年~
摩耶雄嵩さんのデビュー作 『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』 でも活躍する、木更津悠也さんが探偵をつとめる短編集です。4編の短編が収録されています。
それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。
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「白い幽霊」 木更津の助手を自認する香月実朝が、知り合いの巻き込まれた事件の解決のために木更津に依頼する。戸梶家で殺人事件が発生した。たまたま、その犯行の時間に、現場の部屋を外から見ていた人物がおり、カーテンが奇妙な形に切り取られるのを目撃していた。家族の証言では、香月の知り合いに不利な証言ばかりが得られるが、真犯人は。
「禁区」 文芸部のメンバーが、白幽霊は失踪した部員ではないかと思い、うわさの場所を見に行くと、実際に幽霊が現れた……。後日、メンバーの一人が部室で殺される。死体には、大量の石灰がかけられ、真っ白にされていた。
「交換殺人」 ある居酒屋で、見知らぬ男から交換殺人を持ちかけられたという男。話を忘れかけていたが、新聞で、相手に殺害を依頼されていた人物が殺されたと知り、慌てて木更津のもとを訪れる。男が相手に殺してもらいたいと告げたのは自身の妻だが、自分は交換殺人を犯していない、妻が殺される前に、真犯人を暴いてほしいというのだった。
「時間外返却」 ビデオに幽霊が映っていると噂になり、出現したとされる場所を訪れた人々によって、実際に死体が発見された。被害者の父は、被害者が失踪していたときから警察に相談していたが相手にされなかったこと、今度は殺害が1年前のことで捜査が進まないと告げられたことに怒り、木更津に依頼をもちかける。被害者の死後にビデオが返却されたと思われるが、はたしてその意味とは。
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メルカトル鮎シリーズよりも正当派の作品が多く、安心して読めました。木更津さんの名探偵ぶりに酔いしれる香月さんが、時に木更津さんよりも先に真相に到達し、さりげなく真相解明に導くという趣向も面白く読みました。
この中では、第二話の「禁区」が特に印象的でした。被害者は殺される前、部室でゲームをしているときに、何に気づいたのか。これは面白かったです。
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