~文春文庫、 2012 年~
社会人・水乃サトルシリーズの長編です。いつものヒロイン、美並さんが登場しないので、番外編といえるかもしれません。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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水乃サトルは、経理課の臼田竹美の依頼で、彼女の「婚約者役」として彼女の実家を訪れることになった。
竹美の実家は、名酒製造で有名な鬼蟻村を牛耳る上鬼頭家。竹美の母の姉である加世子が、実質的な現在の当主だが、彼女たち三姉妹は互いに憎み合っていた。
また、サトルは、戦前に上鬼頭家で起こった密室状況の事件を聞く。鬼のかっこうをした人物が、とつぜん、滞在していた少将を斬り殺した。その場にいた人々が鬼を追うも、鬼はどん詰まりの、物置代わりの小部屋に逃げ込んだ。追った人々は小部屋の障子を開けたが、そこには鬼の姿はなく、またどこにも鬼は隠れていなかったという。
そして、サトルが村を訪れたとき、いがみあっていた三姉妹に、あらたな火種が起こる。竹美の母が、前当主の正当な血を引くという青年を連れてきていたのだった。
さらに、加世子と、彼女が次期当主として寵愛していた少年が、毒物を飲んで死亡し、さらに密室状況での殺人事件が繰り広げられることとなる。
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タイトルと、美並さんが登場しないということで、重たい話なのかと思って構えていましたが、基本的にはいつものサトルシリーズ同様、楽しく読めました。
社会人サトルシリーズは、本作以外は実際の観光地が舞台ですが、本作は架空の舞台で、旧家のどろどろした事件を描いています。
過去の事件でも現在の事件でも、不可能状況での事件が提示されていて、わくわくしながら読み進めました。
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