北山猛邦『少年検閲官』
~創元推理文庫、 2013
年~
少年検閲官シリーズ第1弾です。
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書物は禁止され、検閲を経たラジオ放送により人々が情報を得る時代。隠れて書物を持っていることが「検閲官」に知られたら、家ごと焼かれてしまう、そういう時代。
イギリス出身の僕―クリスティアナ(クリス)―は、ある町にたどり着いた。そこでは、4年ほど前から、『探偵』と呼ばれる人物が、民家のドアや室内の壁に謎の記号をペンキで書いたり、人の首を切ったりしているという。(犯罪という概念が希薄な世の中であり、首のない死体は「事故死」として処理されていたが。)
偶然知り合ったユーリという少年の父が営むホテルに滞在することになったクリス。ある夜、何者かが窓をノックしてきた。気になって外に出ると、幽霊を見たとわめいている男がいた。そして『探偵』を探す自警団とともに、『探偵』が住むという森に入っていくが、そこで新たな事件が…。
少年検閲官エノが、事件の真相に挑む。
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冒頭では、森の中から忽然と消えた建物、突然現れる壁など、幻想的にして魅力的な謎が提示されます。また、その後も、上の内容紹介のように新たな不可解な事件も発生します。とにかく謎が盛りだくさんで、これらがどう解決されるのかと、わくわくしながら読み進めました。
内容紹介のとおり、(少し昔の決定により)書物が禁止された世界が舞台ですが、クリスは父親から『ミステリ』の話を聞いており、『探偵』にあこがれを持っている少年です。少年検閲官エノが登場してからは、彼がエノの助手をつとめるようなかたちで、物語が進みます。
謎解きには直接関係ありませんが、この世界の人々の識字能力がどうなのかが気になりました。書物が禁止される前の時代から生きている人は読み書きできるのでしょうが、その後の人々はどうなのか。ラジオのみの教育で、紙の生産も激減し、教科書もありませんから、はたして文字が読めるのか。私の読み飛ばしだったら申し訳ないですが、このあたりの設定も書き込まれていたらなおわかりやすかったのでは、と思いました。
とはいえこれは些細な点で、謎解きや物語はとても魅力的でした。
有名なシリーズなのは承知していたのですが、なかなか手に取る機会がなかったため、この度読めて良かったです。
( 2020.11.24 読了)
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