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2021.04.19
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アンソロジー『現場不在証明』
~角川文庫、 1995 年~

 タイトルどおり、アリバイものを集めたアンソロジー。ミステリのアンソロジーを読むのは今回がほぼ初のような気がします。


―――
赤川次郎「二つの顔」 有名芸能人・有沢とそっくりなことから、たまに身代わりをお願いされるようになった西崎だが、ある日、有沢が自分の恋人と過ごしているのではと疑うようになる。そんな中、身代わり中に、恋人が殺されてしまい…。
姉小路祐「ダブルライン」 キャバクラで知り合った女性と付き合いながら、出世のために別の女性と近づき始めた多田は、同期入社の男から交換殺人を持ち掛けられる。綿密な計画を聞き、多田は話に乗るが、途中から思わぬ事態になり…。
有栖川有栖「ローカル線とシンデレラ」 山伏地蔵坊が語る物語。単線のローカル線で、人が殺された。動機がありえる人々は、被害者が乗っていたのとは別方向の電車に乗っており、アリバイがあった。
今邑彩「黒白の反転」 過去の有名女優のもとに、5人の映画研究会というサークルの学生たちが訪れた。オセロゲームなどをして過ごした後、メンバーの二人の婚約宣言から、一気に険悪な事態に。翌朝、婚約発言をした女性が殺されているのが見つかった。
黒川博行「飛び降りた男」 青年が深夜に暴漢に襲われたという事件に、妻の知り合いが関係者であったため、つてをたどり情報を得始めた私だが、同期が追っている窃盗事件と事件がリンクし、容疑者も浮上。しかし、男はアリバイを主張し、暴行事件への関与を否定する。
高橋克彦「百物語の殺人」 有能プロデューサー・宇部が北斎の百物語をモチーフにした舞台を企画し、共通の友人でミステリ作家の長山を通じて、絵師研究者の塔馬に監修の依頼に訪れた。結果的に興味をもった塔馬は、宇部の企画した舞台稽古兼パーティーに出席するが、そこで宇部が殺害される。動機のある人物たちにはアリバイがあった。また、有能なはずの宇部がやらかした様々な矛盾の意味するものとは。
深谷忠記「凶悪な炎」 別荘で男女の焼死体が発見された。女への動機を持つ男にアプローチしたところ、男は女が火をつけたという。しかし、それらしい女には、アリバイがあった。
―――

 今回のアンソロジーで初めて作品を読む作家さんも何人かいらっしゃいました。不勉強さを痛感するとともに、いろんな作家さんの作品が読めるアンソロジーも面白いと思った次第でした。
 有栖川さんの「ローカル線とシンデレラ」は、同​ 『山伏地蔵坊の放浪』 ​(東京創元社、 1996 年)に収録されているものをすでに読んでいますが、例によって内容を覚えていなかったので、あらためて楽しめました。
 その他、姉小路さんの作品は綿密なアリバイトリックが先に提示されながら、意外な結末に至るという面白い構成ですが、ややホラーというか、後味は悪いです。
 特に面白かったのは「飛び降りた男」と「百物語の殺人」。前者は、主人公たちの会話も軽妙で、また真相も意外で楽しめました。後者は学者が感じた様々な違和感から真相にたどり着く過程が秀逸と思いました。
 もう 25 年も前に刊行されたアンソロジーですが、「アリバイ」ものの奥深さが味わえる作品集です。

2020.11.27 読了)

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Last updated  2021.04.19 22:11:42
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