D. L. d’Avray, Medieval Marriage Sermons. Mass Communication in a Culture without Print
, Oxford University Press, 2001
中世ヨーロッパの説教を研究する上でおそらく必読文献の1つである The Preaching of the Friars. Sermons diffused from Paris before 1300
, Oxford, 1985
の著者による、結婚説教の諸事例を丹念な写本分析も付して提示する著作です。本書の続編(姉妹編)として、 Medieval Marriage: Symbolism and Society (Oxford University Press, 2008)
がありますが、私は未見です。
本書の構成は次のとおりです。(のぽねこ拙訳)
―――
前文
第1章 序論
第2章 ドミニコ会士ピエール・ド・ランス
第3章 ドミニコ会士ユーグ・ド・サン=シェール
第4章 フランシスコ会士ジャン・ド・ラ・ロシェル
第5章 フランシスコ会士ピエール・ド・サン=ブノワ
第6章 ドミニコ会士ジェラール・ド・マイイ
第7章 フランシスコ会士ギベール・ド・トゥルネー
参考文献目録
写本索引
索引
―――
既に
で 13
世紀の説教活動を「マス・コミュニケーション」として捉える視点を打ち出しているダヴレイは、本書の副題にもマス・コミュニケーションの語を用いており、本書は特にその視点を強調しています。当時の結婚観を分析するため結婚説教を分析する、その前提として主要な結婚説教の校訂版を提示するのが本書の目的ですが、選ばれた説教師たちはみな、多くの説教写本を生み出した托鉢修道会に属する説教師たちです。
序論では、俗人へのメッセージとして強調されたこととして結婚の不解消性が挙げられること、取り上げる説教師たちの略歴を示した後、写本分析の重要性や、文学、ファブリオー(諷刺話)、カタリ派のメッセージとの比較の視点などについて論じます。
第2章以下は、それぞれの説教師による主要な結婚説教の校訂版を示しますが、それぞれの章で、冒頭で説教のメッセージの概要を手際よく示した後、(複数ある)写本についての説明とそれぞれの関係などを提示したうえで、ラテン語校訂版とその英訳の対訳を掲載するという、非常に丁寧なつくりとなっています。(それぞれの説教師の特質と比較なども提示されています。)
今回は全体的に流し読みして概要をつかんだ程度(第2章以下は冒頭の概要部分のみ流し読み)ですが、ずっと気になっていた本書に触れることができて良かったです。
(2021.01.13 読了 )
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