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2021.06.19
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芥川龍之介『羅生門・鼻』
~新潮文庫、 1985 年~


 「「王朝物」といわれる、平安時代に材料を得た歴史小説」 ( 221 ) 8編を収録する短編集です。
 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。

―――
「羅生門」 行く当てもなく羅生門にたどり着いた下人は、楼閣に噂どおり多くの死体が転がっているのを見る。そこで、一人の老婆が何かをしていて…。
「鼻」 長い鼻を気にしていたお坊さんの話。ある日彼は、弟子のすすめで、鼻を短くする方法を試みるが…。
「芋粥」 誰からも馬鹿にされながら何事もないようにふるまっていた無名の五位は、しかし芋粥を腹いっぱい食べてみたいと思っていた。ある日、それを叶えようという男が現れて…。
「運」 清水の観音のご利益がどれほどが気になった若者は、近くの老人に逸話を話してもらう。お願いをした女性にその後起こった出来事は幸福だったのか。そしてその話を聞いて、若者が抱いた思いとは。
「袈裟と盛遠」 不倫の関係となった袈裟を殺そうと思い詰めることとなった盛遠と、袈裟の独白。二人の思いとは。
「邪宗門」 芸術に長けた若殿は、ある女性に恋していた。女性に仕える男は、若殿をよく思っていない。そのころ、洛中には異形の沙門、摩利信乃法師が現れ、天上皇帝の教えを説いて回り、様々な奇跡を起こしていた。
「好色」 ドン・ファンになぞらえられる平安時代の平中(平貞文)が、ある侍従に恋をする。たいていの女は文数通で返事をよこすが、侍従からはいつまでも返事がなく、これはと送った手紙にも、思わぬ返事が寄せられて…。
「俊寛」 島流しにあった俊寛に、都で仕えていた有王が会いに行く。そこで有王が聞いた、俊寛の生活や思いとは。
―――

 何分古典に疎いので、わからない話もままありました。
「羅生門」は高校生くらいの頃に授業でした覚えがあります。「鼻」「好色」は比較的読みやすく、また楽しめる内容でした。(いずれもただ楽しめるだけでなく、複雑な心模様も感じられる深みもあるように思います。)
 その他「邪宗門」も、どんな展開になるのかわくわくしながら読み進めましたが…。

 巻末の解説では、三好行雄氏による「芥川龍之介 人と文学」でその略歴が示され、吉田精一氏による「『羅生門・鼻』について』で本書所収作品の解説がなされており、いずれも興味深く読みました。

(2021.01.17 読了 )

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Last updated  2021.06.19 22:23:40
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