鷺沢萠『ケナリも花、サクラも花』
~新潮文庫、 1997
年~
20
もともとは雑誌に連載されていたようで、そのときは「ウリナリ日記」という名前での連載だったようで、一冊にまとめるにあたって改題されたとのこと。柳美里さんによる解説での、「本書の白眉は何といっても表題となった第七章の「ケナリも花、サクラも花」である。一冊にまとめるにあたって、雑誌連載中のタイトル「ウリナラ日記」を変更したとき、本書は決定的な意味を獲得するに至ったのだ」との指摘にうなずきながら読みました。
さて本書ですが、鷺沢さんご自身もかなり揺らいでいるのが伝わってきます。
ある雑誌のインタビューへの憤り、学校での友人たちとの語らい、想像力と教育のことなど、それはイライラだったり、喜びだったり、提言だったり、印象的な記述が多い中、最も印象的なのが「ケナリ」の花の名前を記者に教えてもらうシーン(そしてその後の記事)です。
想像力と教育について、特に印象的だったところをメモしておきます。「ひとの痛み、ひとの「事情」を想像する力さえあれば、少なくとも距離は縮まる。(中略)世界中の人間の想像力をあと 20
パーセント上乗せさせたら、この世界はきっとすごい良くなるぞ」 (53-54
頁 )
。「人間が望める最高のことをなし得るのは教育である。そうしてそういう教育の過程で想像力を養うことである」 (164
頁 )
。
あらためて、意識していきたいと考えさせられるエッセイでした。
(2021.10.04 読了 )
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