フィリップ・ティエボー(千足伸行監修/遠藤ゆかり訳)『ガウディ―建築家の見た夢―』
~創元社、 2003
年~
(Philippe Thiébaut, Gaudí. Bâtisseur visionnaire
, Paris, Gallimard, 2001)
知の再発見双書の1冊。
(1852.6.25-1926.6.10)
の、様々な業績と人となりを、豊富な図版を交えて紹介してくれる1冊です。
本書の構成は次のとおりです。
―――
日本語版監修者序文
第1章 カタルーニャ地方の主都、バルセロナ
第2章 イスラム建築の影響とカタルーニャ主義
第3章 ゴシック様式とフランス合理主義
第4章 生き物のような建築
第5章 サグラダ・ファミリア教会
資料編―ガウディがのこしたもの―
1 ガウディの作品マップ
2 シュールレアリストたちの解釈
3 シュールレアリストたちの賛辞
4 写真家クロヴィス・プレヴォーが見たガウディ
5 熱烈な鑑定家、ペドロ・ウアルト
ガウディ略年譜
出典
参考文献
―――
本文約 100
頁、資料編約 30
頁、冒頭にも書いたように図版が豊富なのでとても読みやすいです。
私は近代建築には全く詳しくないので、様式論などについてふれる資格はありませんので、簡単に印象に残った点のみメモしておきます。
ひとつは、ガウディの人柄。たとえば、建築学校時代、墓地の設計図の試験の際に、まわりの雰囲気を表現することも重要と考え、悲嘆に暮れた人々や灰色の雲が垂れこめる空などを書き加えたところ、教授はそれを間違いと決めつけますが、ガウディは修正する気がなく、そのまま教室を出てしまったとか (24
頁 )
。その他、カラフルなタイルをはる作業のとき、新しい建築技法になかなかなじめない石工たちは、ガウディが満足するまで何度もやり直しをしなければならなかったという証言も紹介されています( 69-70
頁)。
一方、サグラダ・ファミリア建築にかかる膨大な資金集めのため、自ら道行く人々に寄付をつのったそうで、みすぼらしいかっこうのガウディを揶揄する風刺画も残されています( 94-95
頁)。
次に、その作品については、独創的な建築物の写真がどれも興味深いですが、特に印象に残ったのは、グエル邸の家具です。曲線が美しく豪華な椅子は、デザインが優れているだけでなく、「シートや背もたれの曲線は座る人の体にきちんと合うように、さらには上品な姿勢を保つことができるように計算しつくされている」 (59
頁 )
そうですし、非常に不安定な左右非対称の鏡台も、脚の部分にブーツのひもを結ぶときに足をのせるための小さな台がついていたりと、実用面でもすぐれています( 42,59
頁)。
最後に、私も少し興味を持っているシュールレアリストのダリも、ガウディの作品を非常に称賛していたということで(資料編3)、こちらも興味深く読みました。
普段はほとんど触れない分野の本ですが、興味深く読めた1冊です。
(2024.01.31 読了 )
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