ポール・ショシャール(吉倉範光訳)『動物の社会・人間の社会』
~白水社文庫クセジュ、 1957
年~
Paul Chauchard, Sociétés animales, sociétés humaine
, Press Universitaires de France, 1956
著者ショシャールについての情報は本邦訳書になく、出版年の記載も見受けられませんでしたので、フランス国立図書館のショシャールについての記事から原著出版年の情報は補足しました(
https://data.bnf.fr/fr/12596472/paul_chauchard/
2024.09.16
閲覧)。
本書の構成は次のとおりです。
―――
訳者序
まえがき
第1部 社会の有機的基盤
第1章 社会関係の生理学
第2章 社会と性
第3章 昆虫の社会生物学
第2部 脊椎動物の社会心理
第1章 領分と共同生活
第2章 社会の席次
第3章 動物の水準と飼いならし
第3部 社会意識と人間社会
第1章 人間の水準
第2章 人間社会進化の二段階
むすび
文献
―――
著者は、社会について、「社会的なものとは、他人との、とくに同類との関係における個人の行動にほかならない」 (11
頁 )
、「基本的社会事実は個人の生物的特性、個人が集団を作って他と接触するときに起こる生理的変化である」 (19
頁 )
と述べ、「個人を外部から支配して、個人の行動を団体の行動に合わせる超組織」 (
同 )
ではないとします。
以下、上に掲げた構成をなぞるだけになりますが、第1部の中でも第1章・第2章は本書の前提をなしていて、社会の類型などが論じられる部分を特に興味深く読みました。
第1部第3章は、昆虫に着目し、特にシロアリ、ミツバチ、アリについて論じます。
第2部は脊椎動物に目を移し、第3部は人間社会を扱います。人間は動物から進化してきたため、「人間には動物的のものが残存して」いるため、「人間と動物に共通な行動に向けられるべき面がある」 (101
頁 )
とし、本書で論じる動物社会学の意義を説きます。一方、人間が「古い本能に身を任せれば……腐敗し、けだもののまねをする。人間の生き方にも、生物的のがある」 (103
頁 )
と述べ、いわば人間かくあるべし、といった提言のような論調になっていく印象を受けました。
ふだんふれない分野ですが、昆虫や動物の行動について興味深い言及も多く、また構成もすっきりしていて、読みやすい1冊でした。
(2024.09.06 読了 )
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