存生記
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「英国王のスピーチ」を新宿で観る。吃音に悩む王子がオーストラリア出身の言語聴覚士と出会って克服し、第二次世界大戦が勃発したとき、ジョージ六世となって国民を鼓舞する演説を成功させる。要約すればそれだけの話なのだが、最後まで見させる作りになっている。イギリスや日本の皇室にとりたてて興味がなくても、理想のリーダーという主題やスピーチの重要性は、時節柄、日本国の総理と比較せずにはいられない。とはいえ、ジョージ六世にはカリスマ性があるわけではなく、映画では自分の悩みに真摯に向き合う愚直で不器用な人間として描かれている。 父との確執や窮屈な環境に由来する心身のこわばりを解こうと中年の言語聴覚士が奮闘する。吃音の克服も上手なスピーチも、リラックスすることが鍵になる。音楽や罵詈雑言を意識的に取り入れた独特の療法は、怪しさ満点で、そんなものに振り回される国王の七転八倒が見所となる。放送禁止用語を連発する場面などは、日本の皇室ではおよそ想像がつかない。ちなみに昭和天皇のラジオ演説を国民が初めて聴いたのは、敗戦のときの玉音放送だったといわれている。 吃音障害があるからドラマになっているが、もともとラジオ放送のマイクの前で用意された原稿を読むだけの話。どこまで自分の言葉で語っているのか、現状を理解しているのかはよくわからない。映画では個人的な悩みに振り回されている部分が強いように感じた。 選挙が近いのか、駅前で候補者が通り過ぎる人たちに「こんにちは。お帰りなさいませ。よろしくお願いします」を連呼していた。あまり気分のいいものではない。平身低頭いがいのメッセージが読みとれないからだ。しかしこれが一番効率的なのだろう。駅前の演説なんて誰もききやしない。ワンフレーズで情に訴えることが票につながるのだろう。
2011年04月04日