家曜日~うちようび~

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2019.05.15
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「昔懐かし家電列伝③ 黒電話」

​​​​​​ ​​ ​​​昭和が終わり、平成が始まる頃、

僕は中学生でした。

当時15歳の僕が、自分の将来を見据え、必死で受験勉強に励んでいたかというと、

そんなことは、決して、まるで、全然、無くて、

僕の頭の中は、 「女の子の体のしくみ」 ただそれだけでした。

当時、今の携帯電話のような手軽な移動型の通信手段は無く、

ポケットベルなんてアイテムが出始めるのも、もう少し後のこと、



建設現場や警察などの職場で使われる「トランシーバー」。

または「伝書鳩」。

または「糸電話」。

または「大声で叫ぶ」。

ぐらいのもんだった。あはは。

マトモな通信手段と言えば 「固定電話」 だけだバカヤロー。

いえでん、または公衆電話だコノヤロー。

メールもラインもへったくれもねーぞコンチキショー。

ちなみに、うちは、ずーっと 黒電話

じーーこ、じーーこ、の 黒電話

さて、そんな通信手段しか無い、当時少年少女だった我々の 「恋愛の辞書」 に、

「プライバシー」

当時お付き合いしていた彼女と、夜、お話したいなぁ~、なーんて時も、

自宅のお茶の間にある黒電話を、

コードが引きちぎれんぱかりに隣の部屋へ引っぱり込んで、

襖を閉めて、親が寝静まるのをひたすら待ち、

ぴりっぴりした厳戒態勢のなか、



毒蛾とハエのたかる裸電球の下、

じーーこ、じーーこ、とダイヤルを回すのです。

んでもって、その先には、更なる難関があって、

それは、 「電話口に、タイミングよく彼女が出るか?否か?」 というもので、

これも固定電話にまつわる恋愛ならではの、 「あるある」 だったわけです。



じーーこ、じーーこ、じーーこ、

じーーこ、じーーーーこ・・・・

ぷるるるるるる・・・・

あれ? 出ねえな。

ぷるるるるるる・・・・

・・・○○子のやつ、今晩電話する約束、忘れてんのかな。

ガチャ

よし、出た!

「もしもし」(野太い男の声)

(うわ、やっべえ、オヤジ出ちゃった。)

「・・・もしもし?」

あ、あの、もしもし、僕、○○子さんのクラスメイトで、Q輔と申しますぅ。

「・・・・。」

あの、○○子さん、おみえですか?

「・・・おりますが、どのような御用件でしょうか?」

いや、あの、コーラス大会の実行委員同士で、いろいろと打ち合わせしたいことが・・・。

「コーラス大会???」

はい、歌い出しの音階、「ファ」でいっとく? それとも「ラ」にしちゃう? なんつって、あははは。

「・・・・・。」

ははは・・・・・。

「付き合ってる?・・・え? 彼氏?」

​あり得ないっす!​

「・・・・・。」

ぼ、僕は、コーラス大会の実行委員としての任務を遂行するためぇぇぇ!

「・・・・・。」

○○子さんと、「ファ」と「ラ」の未来について、熱いディスカッションをぉぉぉ!

「・・・分かりました、少々お待ちください。」

(へん! ちょろいぜ、オヤジ。)

​​​​「おーい、姉貴、電話だよぉぉ!」​​​​

お、 ​弟かいっ!
​​​



思春期まっただ中のおおおおお、

弟かいっ!​​

声変わりしたてのおおおおおお、
​​ ​​
​​​ 弟かぁーーーい!


「・・・あんのぉ~。」

え、あ、はい?

「今、風呂入っとるみたいだで~。」​​

ああ、そうですか。では、またかけ直します。 ​弟君、お姉ちゃんによろしくね。

「ほんと孫の風呂は長ご~てかなわん。」
​​
​​ ​じい ちゃん​かいっ !​​


電話対応面倒くさくなった弟からのぉおおお、
​​
​​ ​​ ​​ じいちゃん​かいっ
​​

「ハア、ハア、ハア、ハア。」

(んん?今度は誰?)

​「ハア、ハア、ハア、ハア。」

(誰こいつ、電話口でハアハア、気色悪い。) ​​

「ハア、ハア、ハア、 わん。 ​」​

最後にまさかのお お、
​​
犬っ!



犬畜生っ!

座敷犬にまで恋路を茶化されちゃった、

哀れ悲しき中学生男子の夜は、

もんもんと、もんもんと、ふけました。

昭和と平成の境目に、

もんもんと、だだ、もーん、もーーん、と。


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最終更新日  2019.05.19 08:00:37
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