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2019年02月12日
「南十字星」と「小郡」の関係、そして・・・
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当日記では「山口と九州を貫く南北軸」という観点から、この山口から南方に展望する「由布岳」を何度も取り上げてきたのだが、不思議なことに今の私の心中には、南天に輝く「南十字星」を形成する4つの星のうち上方の3つの星が、まるで「由布岳」が傘を被るかのように重なり合って観えている。
さて昨年7月の日記(以下の関連記事)では、山口市内の「小郡」という地名の由来に関して、古代氏族の物部氏から続く代々「暦法」を生業とする家系の真鍋氏による著作から引用させていただいた。
☆関連記事・・・
〔 小郡 ⇔ 南十字星 〕の伝承より
その書籍『 儺の國の星 』 真鍋 大覚 著(那珂川町 発行)によると、上記の山口県の「小郡」や福岡県小郡市の「小郡」という地名は、南天に輝く「南十字星」を古くは「日向星(かふりのほし)」と呼んだことを由来にする伝承が記されていた。
おそらくは「南十字星」を意味する「かふり」に、これを称える接頭語「お」を添えて「おかふり」の発音となり、やがてこれに「小郡」という漢字が充てられ、「おごおり」という発音が定着したと考えられる。
そして、つい先日のことだが・・・そういえば中世において山口を拠点とした大内氏が大きく活躍していた時代に、現在の福岡県小郡市を含む「筑前国(現在の福岡県域)」を領地としていた期間があったことから、もしかするとその大内時代に「小郡」という地名を福岡から山口に持ってきたのではあるまいか・・・という着想が生まれた。
だとするなら、その大内時代に山口から「南十字星」が見えていたのでは…ということで、最近PCに搭載した天文ソフトで、その大内時代をおおよそ西暦1350年~1550年の約200年間と想定し、その間を取って西暦1450年2月の今頃に設定(場所は小郡地区のある地点)、南天の夜空をシミュレートしてみた。
すると驚いたことに…午前2時頃に「南十字星」を形成する4つの星のうち、上方の三角形を形成する3つの星が南中する、つまり山口の「小郡」から見てほぼ真南の水平線上に存在していたことを確認できたのである。
加えて古代において、例えば船団を組んで渡航してきた外国の使節が、南方の有明海から当時の九州を統治していた行政機関の「大宰府」に赴く場合には、福岡の古くから交通の要衝であった「小郡」で必ず下船して宿泊し身支度を整えたという伝承がある。
以上のことから類推すると、時代が下って「筑前国」を領地としていた大内氏が活躍した期間に、歴代当主の本拠であった山口地区(古くは吉敷郡の北域「山口宰判」)の「大内氏館」を筑紫の「大宰府」に準えるとすれば、その南方にあって海に近い山口の「小郡」は、福岡の「小郡」と「大宰府」の関係と同様に古くから山口の外港であり、京都から繋がる日本海側の「山陰道(現在の国道9号線)」と瀬戸内海側の「山陽道(現在の国道2号線)」が交わる交通の要衝であった。
さらに興味深いのは、福岡の「小郡市」には、創立年代の古い主要三社が南北に連なるように鎮座しており、その南北軸が示すほぼ真南にある高良山(標高312m)の中腹には筑後国一の宮「高良大社」が、その北方に並んで鎮座する神社群から視認できる位置に鎮座しているのである。
この上記のことが確認できたとき、私には耳納連山の西端に位置し福岡の小郡からほぼ真南に見える「高良山」と、山口の小郡からほぼ真南に見える「由布岳」が重なって観えてきたので、すぐにその地域を天文ソフトでシミュレートしてみたわけだが、予想通りというか「大宰府」が設置された7世紀頃は、小郡市の南北に連なる神社群から見た場合に、2月頃の深夜に南中した「南十字星」の上三つの星は「高良山」の山容に重なるような位置になった。
それまで耳納連山に隠れていた「南十字星」が、山影から突如出てきて山腹の「高良大社」を覆うように輝き、西側の山麓をなぞるように沈んでいく姿は、おそらく古代人にとって格別の風情だったに違いあるまい。
以上、様々な角度から論じてきたが、山口と福岡の両地域において類似した地勢を含む「小郡」と「南十字星」の関係性が、私のなかで色濃く浮上してきたというわけである。
(※ここで確認だが、地球の歳差運動(約26,000年周期)のために、現在の日本列島で「南十字星」という星座の全体が見える場所は、沖縄方面の西南諸島に限定される。ちなみに下の画像で中央部に映るクロスが、沖縄本島で海上に現れた現在の「南十字星」である。)
ところで、山口市の中心を流れる椹野川(ふしのがわ)の河口域(秋穂二島)にある小山の山上に、「迦具土神(かぐつちのかみ)」を祭神とする「焼火神社(たくひじんじゃ)」が鎮座している。
☆関連記事・・・
「隠岐の島」の周遊記(六)
これまでも当日記では、日本神話が語る「八百万の神々」を「天空に輝く星々」と捉える立場から、様々な関連書籍から引用しつつ「神々」と「星々」の密接な関係を取り上げてきた。そんな経緯もあり、かねてより「焼火神社」の祭神「カグツチ」に対応する星を、おうし座の一等星「アルデバラン(和名は「赤星」)」とする説は知り得ていた。
冒頭から述べてきたように、古代の日本では南天に輝く「南十字星」が南を指標する星であったが、歳差運動のため次第に見えなくなり、その代わりに「アルデバラン」が南を示す星として「南極星」と呼ばれたという伝承がある。
そして、この「カグツチ」が「火の神」であったために、出産時に「イザナミ」の陰部に火傷ができ、これが原因で「イザナミ」が死んでしまったとする解読が主流なのだが、私は前々からこの神話解釈には合点がいかなかった。
ここで押さえておきたいのは、「イザナギ」の「キ」とは「北」であり北天の極北近くに輝く「北極星」を示し、「イザナミ」の「ミ」とは「南」であり南天の指極星たる「南十字星」を示すという捉え方があるということ・・・。
そこで…「神」とは「星」なり…の観点から「カグツチの出生神話」を私なりに解釈すると・・・歳差運動のために「南十字星(イザナミ)」が「南極星」としての役割を果たせなくなった(イザナミは死んだ)ので、その代わりに「アルデバラン(カグツチ)」が「南極星」を担当することになった(カグツチが生まれた)・・・となり、(手前味噌ではあるが)かなり洗練された捉え方になると今のところは考える。
当日記で呪文のように繰り返してきた・・・「八九(破竹)」の勢いで「十(自由)」の時代へ・・・飛躍するという「八九十(白兎)の道」という世界観がある。
そこでこの「八九十」という3つの数に日本神話に登場する主要な三柱の神名を充てるとすれば、「八」とはこれまでの物質(もの)を主軸とした時代の「イザナギ(北極星)」、「九」とは「イザナギ」と「イザナミ」の和合を担った「ククリヒメ(菊理媛命)」、そして「十」とはこれからの自由な精神(こころ)を主軸とする時代の「イザナミ(南十字星)」を暗示している。
最後に2014年の2月、北九州市の八幡で開催した個展『星の立体造形展』にて、「南十字星」を模した作品について綴った記事を以下に掲載して締め括りとしたい。
☆関連記事・・・
個展の模様(6)
☆関連記事・・・
個展の模様(13)
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最終更新日 2019年02月12日 16時18分51秒
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