何かいいことないか、子猫ちゃん。 2008春。
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●得がたい個性派俳優、老刑事から一癖ある大学教授までこなす原田芳雄さんが好きだ。私より2、3つ年上のこの俳優さんとは、彼の30代後半から50代前半にかけて何度か仕事をご一緒した。●一見コワモテに見えるこの兄貴、実は気さくで誠実で面倒見のよいステキな人物だ。そこそこ交流が深まった頃、年末彼の自宅で行われる餅つき大会にさそわれた。 会社の仲間4人くらいでシクラメンの花鉢をもって、下北沢の原田家にお邪魔した。●気取らない日本家屋、庭の広さも狭からず広からず、紅白の幕がひかれた庭だけでなく、座敷も全部開け放たれ、家中に人が溢れていた。近所の子供、奥さん、映画屋さん、TV屋さん、俳優仲間、さまざまな人種がてんでんにお酒を飲んだり、お菓子をつまんだりしながら談笑していた。●庭の真ん中に杵と臼があり、もち米が蒸しあがると威勢の良い掛け声とともに餅つきがはじまる。原田氏は庭の見わたせる座敷のコタツに入り、皆の相手をしている。奥さんも大活躍で近所の人達を接待している。どっとどこかで笑い声が上がる。突きたての餅は、女衆が丸めたり、餡子にくるんだりして次々に配ってまわる。●ひと臼突き終わると、原田氏が見計らって「ほら、次は東映さんの番」とか「フジテレビ頼んだぞ」と言う具合に進行させている。要するに、原田家をあげてのガーデンパーティというか宴会なのである。気取らない、和気藹々の愉しい会であった。●この会は、昼くらいから始まり、えんえん夜半までつづく。その間、客人は入れ替わる。このころ隣家には、なき松田優作邸があり、その日は優作邸でも餅つきがあり、塀越しにときどき歓声があがった。「負けるな」とばかり、こちらも張り切ってボルテージがあがる。●毎年12月後半に開催されたこの餅つき宴会は、僕らの楽しみのひとつとなった。●今、我が家では5年前から狭い庭を利用して15人ほどのささやかな規模で、持ちつき大会をやっている。もちろん原田さんちのモノマネである。
2006.08.14
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