読書の部屋からこんにちは!

読書の部屋からこんにちは!

2006.12.21
XML
カテゴリ: 小説
精神科医である箒木蓬生の「閉鎖病棟」を読みました。

病棟で起こった殺人事件から、胸を打つ患者の証言、
温かい涙が誘われて、胸がいっぱいになりました。

私の娘はうつ病と適応障害で、
病状がひどかった時期には、何度か入退院を繰り返しました。
私は毎日面会に通いましたが、いつも看護婦さんが面会室に娘を連れてきてくれるので、
病棟の中を見たことはありません。
あとで娘から聞いたところによると、私の想像を超えたお部屋だったようです。

鍵かかけられていて、自由に廊下にも出られない、
うなったり叫んだりしている人がいて、眠れない、
トイレも壁がないので人から見られるし、用をたしたあとは誰かを呼んで流してもらう・・・
(もちろん患者さんの容態によって、いろいろな段階のお部屋があるんですよ)

しかし、娘はそれをみじめだったとか苦痛だったとか訴えることはありませんでした。
それよりも、娘が私に一生けんめい伝えたのは、こんなことです。
他の患者さんたちは、とても優しかった。
花の手入れが上手で、いろいろ教えてもらった。
ご飯もいっしょに食べた。
優しくしてくれたお礼に、おばあちゃんをトイレに連れて行ってあげた。
そしたら、おばあちゃんがありがとうって抱きしめてくれた。


いつも懐かしそうに挨拶をし、仲良く何か話し合っています。
その患者さんは表情も穏やかで、とても楽しそうに見えて、
私から見たら、いったいどこが病気なんだろうと思うほどです。
人間から、見栄や虚飾や地位や学歴や、後からくっつけた物すべてを取り払ったとき、
その人間の本当の姿が出てくるんじゃないだろうか。



この小説に出てくる入院患者のチュウさんや秀丸さんやクロちゃんや昭八さんも、そうです。
みんな、おとなしくて善良で、友だち思いの人たちばかりです。
チュウさんは主治医から「頑迷な性格。退院の見込みなし」と決め付けられていましたが、
主治医が変わったらあっというまに退院が決まり、
一般社会での不器用で貧しいけれど、まじめな生活を始めます。
チュウさんは友だちの島崎さんや秀丸さんを救うため、法廷で証言することになるのですが、
その証言は真実の友愛にあふれ、人々を感動で静かに揺さぶるのです。

優しさに飢えている人に、ぜひ読んでもらいたいと思います。
チュウさんの気持ちに浸ってほしいなと思いました。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.12.21 09:07:32
コメント(6) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: