読書の部屋からこんにちは!

読書の部屋からこんにちは!

2007.10.10
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カテゴリ: 小説
ジェットコースターみたいな本を2冊( コレ コレ )読んだ後は、しっとり大人の女の本です。



 「鯉浄土」は、初老の主婦が、その日常を静かな目で見て描いた短編集で、心が落ち着いていくのを感じながら読むことができました。
長年主婦をやってきた女性というのは、社会経験に乏しく、夫と子どもたちの身の回りのことに追われているうちに初老に達し、おばさんという名前をつけられて、社会の中で一段低い立場と見られる・・・しかも同姓の目からも小ばかにされることがあると思うんですが、どうしょうか?もちろん私自身も、その道をまっしぐらに進んでいるわけですが。
 しかし社会経験に乏しいとはいっても、長年一生懸命に生きているうちには、いろいろなことを考え、身につけてきたものが多いのです。特にものの見方、受け取り方にはなかなか深いものがあるのだと、この本を読んでつくづく思いました。


医学標本となった体、胎盤が胞衣と呼ばれていた頃のこと、夫の危険な病気のことなど人間の体がテーマになっているのですが、中でも圧巻だと思ったのは最後の「惨惨たる身体」というものでした。

そこには、「髪が逆立つ 猫毛 怒髪天を衝く」「顔が広い 顔から火が出る 鉄面皮 顔を利かせる」など、体の部分のことわざがびっしり書き込まれていたのです。髪、顔、目、鼻、耳、口、舌、首、喉、手、足、胸、腹、腸、腰、尻、肌・・・・・普通によく聞いたり口にしたりする言葉ばかりなのに、その羅列を見るとホラーみたいにぞっとします。人間の体をバラバラに取り外して言葉にすると、不思議だけど突然怖くなる。
どんどん出てくる身体比喩の言葉は、血が凍る、肝が潰れる、腸が煮えくり返る、血で血を洗う、手を焼いた、腕をもがれるなどなど、今までなぜその不気味さに気がつかなかったんだろうと思うものばかり。
幼くして孤児になり、徒弟に入り、出征、戦友を亡くしシベリアの収容所に送られ、幽霊のようにやせ衰えて日本の土を踏んだ、そんな舅の人生に不気味な体の言葉一つ一つが合致しているように思えます。
人間は誰も、最後はただの灰になる。あれが本当の「粉骨砕身」だ。
最後の一行が効いています。
「お義父さん、もう一つ書き忘れていましたよ。喉仏。」



追記
秋になったのでデザインを変えようと思ったら、記事の字が小さくなっちゃった。
ぱぐらは老眼なので、これじゃよく見えません。
ところが、文字の大きくするやり方がわからなくなっちゃった。
どなたか教えてくださいませんか?ついでに、文字色を黒にする方法も。




文字の色とサイズを変えることができました!
ブログ友だちのきたあかりさんが教えてくださいました。ありがとう!!





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Last updated  2007.10.12 06:12:02
コメント(14) | コメントを書く


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こんにちは  
読子  さん
しぶい作家ですよね(好き)
私の好きなのは「蕨野行」「龍秘御天歌」です。
図書館でパラパラして良さそうならぜひ~。
(2007.10.10 10:14:13)

ちょっと怖くなりました  
かのこ.  さん
ホント、体の一分を取り出した、言葉達の羅列は、
ここで紹介してくれているだけでも、怖くなりました。
でも、最後の「喉仏」に、救われた気がしました。
(2007.10.10 14:33:44)

Re:こんにちは(10/10)  
ぱぐら2  さん
読子さん
>しぶい作家ですよね(好き)
>私の好きなのは「蕨野行」「龍秘御天歌」です。
>図書館でパラパラして良さそうならぜひ~。

うんうん、是非読んでみますね。
村田喜代子さんは「鍋の底」で芥川賞をもらったとき、主婦の作文みたいという悪口(?)を言われたそうですが、主婦の作文で何が悪いの?って思います。 (2007.10.10 16:16:59)

Re:ちょっと怖くなりました(10/10)  
ぱぐら2  さん
かのこ.さん
>ホント、体の一分を取り出した、言葉達の羅列は、
>ここで紹介してくれているだけでも、怖くなりました。
>でも、最後の「喉仏」に、救われた気がしました。

そうですね。言葉ってほんとうに不思議です。
小説家って、これくらい言葉に敏感じゃなきゃ書けないんでしょうね。 (2007.10.10 16:18:07)

恥ずかしい・・・  
読子  さん
なんで同じことを3回も・・・(くー)
ごめんね。2個削除してください~。 (2007.10.10 18:36:56)

Re:恥ずかしい・・・(10/10)  
ぱぐら2  さん
読子さん
>なんで同じことを3回も・・・(くー)
>ごめんね。2個削除してください~。

はいっ削除しましたよー
PCの反応が遅くて、何度か押しちゃうことってあるのよねー (2007.10.10 21:41:39)

Re:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
きたあかり  さん
こんばんはぁ~♪
村田喜代子さんって初めて知りました。
読子さんのおっしゃる通り、しぶそうな作品ですね!
吉村昭の作品で、献体にまつわる作品がありましたが、かなり怖かったです・・

さて
文字色の変更ですが・・・

まず、ブログ管理を開いて、MYメニューを見てください。「デザイン設定」から次のように進んでみてください。「詳細設定(上級者向き)」→「メインの設定」→「編集する」→「テキスト関連の設定」→「テキストの文字色」で変更できます。

文字の大きさは、その下にある「文字の大きさ設定」を「中」か「大」に変更してください。 

このふたつの操作が完了したら、一番下にある「登録する」をクリックするのをお忘れなく!!

ご健闘をお祈りしております♪
(2007.10.10 23:35:23)

Re:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
ばあチャル  さん
わたしも気になってる作家さんだったということを思い出しました。サンキュー。ほんっと、わたし情報に追いつけなくて、忙しくて(汗)
(2007.10.11 11:57:16)

Re[1]:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
ぱぐら2  さん
きたあかりさん
丁寧に教えてくださって、ありがとうございました。ちゃんとできました!!
文字の色やサイズは、何ヶ月か前にも他のブログ友だちに教えてもらったんです。ほんとに私の頭ってザルだわ。
次にデザインを変えるときに、覚えているかどうか・・・ (2007.10.11 20:41:05)

Re:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
cyn1953  さん
こんばんは!
大きな文字になりましたね。
活字が大きくなったので、ローガンの私にはとても読みやすくなりました。うれしいです。ありがとう。
この本は、話題になっていますね。見つけたら速攻買います。 (2007.10.11 22:48:54)

Re[1]:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
ぱぐら2  さん
ばあチャルさん
>わたしも気になってる作家さんだったということを思い出しました。サンキュー。ほんっと、わたし情報に追いつけなくて、忙しくて(汗)

私も世の中に追いつけないで焦ってるおばさんですよん。だって、情報が多すぎて、変わりやすいんだもんね。
村田喜代子さんって、地味だけどいい味のおふくろみたいな作家です。とっても魅力的ですよ。 (2007.10.12 06:06:40)

Re[1]:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
ぱぐら2  さん
cyn1953さん
>活字が大きくなったので、ローガンの私にはとても読みやすくなりました。うれしいです。ありがとう。

ふふっ…私とおんなじですね。
村田喜代子さんって、不思議な魅力のある作家さんです。地味に好きです。
表紙がまた、女っぽくて好き。 (2007.10.12 06:09:09)

Re:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
季節の花束  さん
恥ずかしながらこの作家の名前すら知らない私です。ぱぐらさんはホントにいろんな作家の方の本を読んでますね。
この本も興味をそそる本ですね。
この頃の私は動物ものの本ばかり探して読んでいる状態です。
心が癒されたいとアピールしているようです。

文字が大きくなって読みやすくなりました。
私も参考にさせてもらいます。
老眼なので文字が大きい方が楽なんですよ。
(2007.10.12 10:30:32)

Re[1]:「鯉浄土」 村田喜代子(10/10)  
ぱぐら2  さん
季節の花束さん
>この頃の私は動物ものの本ばかり探して読んでいる状態です。
>心が癒されたいとアピールしているようです。

私も動物ものの映画は大好きですよ。このあいだ、書店で映画化された犬の本をちらっと立ち読みしました。田中麗奈が主演だそうです。肝心の題名を忘れましたけど・・・

>文字が大きくなって読みやすくなりました。
>私も参考にさせてもらいます。
>老眼なので文字が大きい方が楽なんですよ。

大きくて黒い字がいいですよねえ。遠・近・乱の私は、テレビを見るとき読書するとき、メガネをはずしたり変えたり忙しいです。 (2007.10.12 15:18:10)

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