読書の部屋からこんにちは!

読書の部屋からこんにちは!

2008.04.18
XML
カテゴリ: その他の本
正直言って、私は美術館で絵を見るのがあまり得意ではありません。

美術全般が苦手というわけではなく、彫刻や塑像、陶器などは、見ていて心がわしづかみにされたり、ぐうっと意識が引き込まれたりするのを実感しているので、額縁に入った絵画というものが苦手なだけだと思います。

前にエッセイを読んでいたら(阿川佐和子だったと思いますが)「絵を見てもよく分からないので、この中からどれか一つをタダでもらうとしたらどれにしようかと考えながら見る」ってありました。
もちろん、それに習ってやってみましたよ。でも、やっぱりおもしろくなかった。
だって、全体に暗~い色調の静物画や意味も知らない宗教画や、鋭い瞳でこっちを見ている昔の人物なんて家に飾りたくもないし、だいいち、1メートル以上もあるような大きな絵は家に入りません。あげるって言われたって、丁重にお断りするだけです。

だけど一度だけ、絵っておもしろいなあと思ったことがありました。
それは何年か前、NHKのイタリア語講座を見ていたときです。
4月の第一日目の番組の中で、あの有名なボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」の解説をしてくれたのです。ヴィーナスが海から生まれてきたわけや、そこに風が吹いているわけ、風を当てている天使の話・・・・分かりやすい解説を聞くうちに、「ヴィーナスの誕生」は、ますます気品を増していきいきと感じられるようになりました。

しかし、美術館で絵を見るときに絵の横に掲示されている解説は、年代とか○○派とかかいてあるばかりで、モデルの人物や宗教的背景、時代的背景などはほとんど書いてありません。
そこを書いてくれないと、絵に詳しくない、宗教や神話に詳しくない私なんかは、たいして役に立たないんですよね。

前置きばかりが長くなりましたが、この本「怖い 絵」は、ドガ、ムンク、ボッティチェリなどなど、私たちに比較的なじみのある名画を、ちょっとユニークな視点から説明してくれる、とてもおもしろくためになる本でした。
たとえば、ドガの「舞台の踊り子」は、誰でも知っている可憐なバレリーナの絵ですね。

degas_danseuse01.jpg

「首に巻いたリボンが軽やかに翻り、躍動感を醸し出す。下からのライトに照らされたトウシューズ、脚、胸が輝き、赤い花を散らした衣装の透けた感じが得も言われず美しい。
斬新な構図、見事な光の表現、大胆と繊細が絶妙に入り混じったタッチ、華やかで幻想的な舞台の魅力を伝えて、これはドガ随一の人気作だ。」

しかしこの本は、バレエの成り立ちや社交場としてのオペラ座の堕落、その時代に女性が働くという意味などを教えてくれます。そんな説明を読むうちにだんだん、ただ美しいだけの絵ではないということが分かってくるのです。
著者は「そのような現実に深く関心を持たない画家が、批判精神のない、だが一幅の美しい絵に仕上げたということ。それがとても怖いのである。」と結んでいます。

ついでに言うと、この本は、美術の先生が堅苦しい言葉を使って書いた解説書ではありません。人物の描写など、まるで文学のように美しく巧みな文章です。
美術オンチの私にも、本物の絵が見たい!そう強く思わせる、とてもいい本でした。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.04.18 14:21:09
コメント(6) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: