或る日の“ことのは”2

或る日の“ことのは”2

2012.11.11
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お店にはまだ沢山の鉢バラがあるというのに。

花が終わってしまっては売れないなぁ・・・

そして直に大苗のシーズンに突入だ・・・。


置く場所によって、日にしっかり当てられるわけでないので、

黒星病が発生してしまう。

出勤すると取り敢えず、黒い斑点の付いた黄変したバラの葉を毟り取る所から

私の仕事は始まる。

下に散った葉も拾い集める。



色々な手袋を散々試したけれど、当然素手より機動力のある状態はない訳で、

しかしそうすると手は掻き傷だらけだ。

バンパネラなら、バラで傷ついた指を舐めるとセクシーだなぁ、

などと思いながら、

私は、ホコリと薬剤で汚れた指を舐める訳にはいかない。



バラに棘がある理由はよく解っていないという。

品種によっては攻撃色の赤を備えた、えげつないほどの攻撃力に富んだ棘、

棘が下向きに生えているものなど、これはもう人に対する示威力としか思えない。

どんなにたおやかな手がその茎に触れても、

血の制裁をお見舞いする容赦の無さ、

全く美人ってやつは、



その癖、その身に纏う鎧は、自らを害する虫どもにはなんの効果も成さない。

人はバラを綺麗綺麗と誉めそやす存在で、決して汁を吸ったりはしないのだが。



バラを見る度に、手を傷つけられる度に、

バラが棘を生やすに至った理由を、ぼんやり考える。

それほどまでに人を寄せ付けたくない、その理由はなんだろう。



何かで読んだことがある。

つまり、私が色々考えることは無意味で、バラを愛するなら、棘もまるごと愛せ、

ということなのだろうが。



『いったァ!』

鉢を抱え上げて、思わず心中悲鳴を上げた。

抱え上げた鉢は「一才柚子」。

これも、強烈な棘を持つ植物なのを忘れていた。

私の顔には、猫のヒゲのような細い傷が、赤く一本描かれた。

全く、人に厳しいのはバラだけではなかった。






明日は晴れそうだから、バラに薬剤散布してやろう。








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最終更新日  2012.11.12 00:32:56
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