イヌときどきネコ

イヌときどきネコ

PR

Profile

Yasichi

Yasichi

Favorite Blog

アニマル通信 アニマル007さん
チワワンにゃん れおにゃんさん
もなかの庭 ゆきもなかさん
maria's room 爬虫… Muchittoさん
カニスキ的楽天 chao-chanさん

Category

カテゴリ未分類

(30)

病院でのできごと

(21)

うちの猫様

(0)

Comments

Yasichi @ Re:数年振りの更新とご連絡(12/04) フレンチブルのハナさん ----- ようこ…
フレンチブルのハナ@ 数年振りの更新とご連絡 いままでありがとうございました。先生の…
Yasichi @ Re:先程はありがとうございました。(12/04) コタロウの父さん ----- 早速の訪問、…

Freepage List

Oct 5, 2006
XML
カテゴリ: 病院でのできごと
いつもの診察。

そんな夕方に来院した小さな小さなワンちゃん。
体重2.2kg、11歳のチワワの女の子でした。
「昨日は熱が41度もあって、すぐに冷やしてあげて、今は多分平熱だと思いますが・・」
とお母さんが心配そうに連れてこられました。
ここ2、3日元気がなくて、一昨日は1回だけ吐いたそうです。
「他には吐いてませんか?」
「一回だけです」

「あっ・・・」
実際に吐かなくても、嘔吐感があるとしきりに鼻先を舐めるんです。
確かに病院で計った体温は平熱でしたが、
年齢も年齢だし、腎臓や肝臓に異常はないか念のために血液検査をする事に。
秋の長雨もあって、熱中症は考えられませんでしたし、
人間の感冒症のようなもの?というには熱が上がりすぎです。
一番気になるのは診察中もしきりに鼻先を舐める仕草。
最初は老齢のワンちゃんだし、心臓も悪いようだからもしかして腎不全?
とアタリを付けての検査のはずでした。
採血と、触診のためにお母さんからワンちゃんを預かってすぐ
おなかの異常に気が付きました。

避妊していない子でしたので、陰部も調べてみましたが腫れや充血もなければオリモノもありません。
所謂、子宮蓄膿症の子とはどこか違うし、腹水が溜まっている様子もないのだけれど
おなかの感触がおかしいんです。
電解質と血球性状の検査結果、
白血球数は正常よりほんの少し高いだけで、若干の貧血がある程度だけれど

検査結果を待つ間、念のためにエコー検査もしてみると
直径1cm~2cm程度だけれど確かに子宮が腫れています。
腹水らしきものもないし、続けて撮ったレントゲンでも所々にコブのような物が見えるけれど
子宮蓄膿症に特徴的な画像ではありません。
子宮の様子では腫れ方もそれほど酷くないし、まだ時間的に余裕がありそうにも見えました。
生化学検査でもALPという酵素が酷く高い以外には異常がありません。
飼い主さんは内科治療でどうにかならないかとおっしゃいましたが
私はボロボロにバランスの崩れた電解質と異常に高いALPの数値がどうしても気になって
飼い主さんを説得して緊急手術をする事にしました。
子宮蓄膿症の、電解質異常が進んだ子で助かった子はほとんどいないのです。

おなかを開けると、じんわりと白い液体が滲み出てきます。
破裂してる!
大至急、一旦帰られた飼い主さんを電話で呼び戻してもらって、手術に立ち会って頂く事にしました。
獣医師としての保身から、状況を見てもらいたいとの思いも当然ありますが
何より術後の麻酔から覚めない恐れがあったので、飼い主さんの声を聞かせれば覚醒してくれる可能性があるからでした。
エコーでもレントゲンでも、それほど子宮が大きくなかったのはこのせいでした。
破裂と言っても、子宮の一部が壊死してそこからじわじわと滲み出ているだけだったので
膿が漏れている事が判らなかったのです。

手術は手を止める事なく淡々と進んで
膿で汚れたおなかからとにかくまず子宮と卵巣を摘出して、
腹膜炎を起こして変色した脂肪をできるだけ除去して、
あとは抗生剤を混ぜて暖めた生理食塩水で徹底的に腹腔洗浄して無事終了しました。

すぐにお母さんとお嬢さんに呼びかけを始めてもらって10分くらい経った頃、
どうにか麻酔から覚めてくれました。
最初のヤマをこえてくれてほっとしながら、
第2のヤマは手術の翌日を無事に迎えれるかどうか、
第3に術後3日から5日目に術後腎不全を起こさないかどうか。
それを乗り切るまではまだ予断は許さない事を説明してICUに入院の用意をすると、
飼い主さんにはその夜はお帰り頂きました。

そして今朝、お水も飲んで、元気に立ち上がって尻尾を振っているワンちゃんを確認して
今帰宅したところだったりします。
この姿を見たら、きっとお母さんも喜ぶでしょう。
が。。

子宮蓄膿症は、原因になっている子宮を摘出すると途端に元気になります。
ところが、
手術の前から腎不全になっていたり、電解質バランスが崩れて悪液質になっている子の場合、
元気に回復していたはずの子が突然、術後3日目とか5日目頃に急性の腎不全に陥って
あとは治療の反応も悪いまま亡くなるケースが非常に多いんです。
ましてや子宮破裂。
点滴や抗生剤プログラムなど、私に考えられる全てを予測して、打つ手は全て打ちました。
あとはこの子の頑張りに期待してこのまま順調に回復してくれる事を祈るだけです。
こういう時、いつも院長が口にする
「獣医療は治すのではなく治るのを手伝うだけだ」という言葉が身に染みます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 5, 2006 09:18:55 AM
コメント(6) | コメントを書く
[病院でのできごと] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: