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4/2から開業しました。まだまだ、アレがないコレがないと煩雑な状況ではありますが^^;そこで当ブログも、いい機会なので移転することに。移転先はコチラです。http://ameblo.jp/heartpetclinic/更新頻度の低いレアブログではありますが、今後ともよろしくお願いします。
Apr 4, 2012
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さてさて、OPENまであと10日あまり今日はかなり早くに目が覚めてしまって。ふと、さくらが「水がないー」と訴えてるのに気がつきまして。そういや最近、水の減りが早いな・・・もしかして腎不全かも??なんて、ちょっと心配になりつつ水を入れて普段はそのまま部屋に戻るんですが、今日はなんとなくそのままさくらの様子を見てました。チャプチャプ・・・チャプチャプ・・・手ですくって水を飲んでるww水の減りが早いのは、手を突っ込むので周りにこぼしてしまうのと手が濡れてそちらにとられてしまうからのようでした。可愛い
Mar 17, 2012
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に会いました。 ついさっき・・・というだけのお話なんですが。博多区内でこの1~2カ月、この手の事件が頻発してるそうです。おまわりさんから「恐らく同一犯の連続事件ではないか」と言われました。なんか、すごそうだけど運転席側後部座席のドア窓(動かない部分)をぎっちり割られてたわけですが盗られたのはシートカバーのみ。。。言ってくれたらあげたのに><全て保険でどうにかなりそうですが精神的疲労がハンパないです ハァ・・・
Mar 3, 2012
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ようやく、病院HPらしきものができてきました。博多北ハート動物病院こんな感じです。因みに、トップページのネコは、以前ここでも紹介しました骨折して保護されたさくらです。カメラ向けると目がきつくなるんで、閉じてる画像しか・・・
Mar 3, 2012
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まぁ、誰ももう見てないでしょうが^^;えーこの度、というか来春。ようやく開業する事になりました。場所は、長年住み慣れた川崎ではなく、九州へ戻ります。歳食ってからの開業はかなり勇気が要りましたが。。で、恐らくですが、開業に併せてこのブログもリニューアル もしくは新規立ち上げに伴い閉鎖のどちらかになるかと思います。今さらではありますが、これまでお付き合い頂いた方々、ありがとうございました。そして、もしかしたら改めてよろしくお願いします。
Dec 4, 2011
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お久しぶりですこんにちは。本当に、本当にレアなサイトと化してしまいました。実家のテルは先週、旅立ちました。色々な思いはあるけれど、落ち込む暇もなく次から次へと重症の子が舞い込んでくる、そんな日々です。つい先日、新患の方がスコッティ(スコティッシュ・ホールド)の男の子を連れてこられました。満1歳の元気な子でしたが、後ろ足にはどうやら軟骨の奇形が出ているようでした。飼い主さんとしばらくお話しするうち、ペットショップでまだ小さかったその子を見初めた時、店員さんからその子の両親の写真を見せてもらって、「ちゃんとしてるお店のようだ」と感じて家に迎える事にしたそうです。その時店員さんは「ほら、両親そろって可愛いたれ耳でしょう?」と言ったそうです。・・・・。mixiのほうではかつて、別のスコッティにまつわる体験を紹介した事がありますが、スコッティの繁殖は大変難しいんです。営利目的だけでは、ともすると採算が取れない事もあるくらい。スコッティのたれ耳は本来自然界ならば淘汰されて然るべき軟骨の障害を、意図的に耳にだけ残るようにしたものです。しかもこのたれ耳の遺伝子は優性遺伝なため、たれ耳同士を掛け合わせるとほぼ100%、生まれる子供はたれ耳になると言われています。ところが、この遺伝子をホモ接合(たれ耳xたれ耳)させた場合、ほとんどの子供に同型接合性障害として様々な先天的奇形を生じさせてしまいます。軽いもので手足の指の軟骨が変形してドラエモンのようになるものから、重い症状では心臓その他の臓器の先天的奇形を生じ、命の危険すらあります。このようなお話は「きちんと真面目に」スコッティについて勉強している方々には至極当たり前の事ですから、繁殖ではたれ耳x立ち耳(もしくは近似種のとされるアメリカンショートヘアやブリティッシュショートヘア)の交配が当たり前なワケです。なので、生まれてくる子供でたれ耳になるのはおよそ1/3程度にしかならず、2/3の子達はあまり人気のない立ち耳スコッティになるわけで、ここに営利目的での繁殖の難しさがあるんですね。思うに、本当のスコッティ繁殖家の方々はむしろ好きだからが最優先で、それだけに貰われていく先についてもこだわりをお持ちの方が多いんじゃないでしょうか。ところが巷では、最近スコッティの展示も多いようです。その中には件のペットショップのような、不勉強(故意ではないと思いたいですね)なお店が多いのも悲しいかな事実です。スコッティを純粋な営利目的のみで繁殖している方々のほうがさらに性質が悪いですね。たれ耳xたれ耳だとほぼ100%たれ耳になるという、スコッティの遺伝上の性質を熟知した上で、敢えて交配させているのですから。さらにさらに性質が悪いのが、血統交配・ブリーディングの意味について考える事も勉強することもなく、ただ「可愛いから」「この子の子供が欲しかったから」という理由だけで安直にペットショップからお婿さん・お嫁さんを購入して繁殖させてしまう方々です。これはスコッティに限らず、犬猫様々な純血種で日常的に行われています。例えばお近くのペットショップにスコッティの子猫がいたら、店員さんにその子の両親について聞いてみてください。「両親はどんな子達ですか?」と。それに答えられないお店や、件のお店のように堂々とたれ耳xたれ耳を誇示してくるようなお店ならば、私ならスコッティ以外の子達の取り扱いについてもあまり信用できないと感じるでしょう。すでに迎え入れて1年になるこの子と飼い主さんには、これから先起こりうる事、注意しなければいけない事を十分にお話しして、今後も健やかに過ごせるよう、祈るばかりです。
Jul 17, 2008
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たいへんお久しぶりです。ちゃんと元気にやっておりますが、ついつい、サボってしまってました。久しぶりなのに、とっても愚痴な内容です。つい先日来、田舎の両親から連絡が頻繁にきております。写真の我が愛犬テルは、私が神奈川に出てくる事になった際、一緒には連れて行けないので両親に世話を頼んでました。親父殿がことのほか可愛がってくれていたので、そのまま親父殿の相棒として、少しボケてきた親父殿のお世話係にという意味合いが本音のところでしたが。そのテルが最近、おしっこを自分でできなくなってしまい、一週間ほど前からかかりつけの病院に入院している状態で、いくつかの病気の疑いのためMRI検査を実施してもらったのですが。検査結果(恐らく)甲状腺癌(腫瘍径10×13cm)とびまん性に転移した肺癌(3mm以上サイズのカウント数100個以上)。および馬尾症候群過去、自分の愛犬の病気に気が付けなかった、治してやれなかった事に歯噛みして入ったこの世界です。なのに今、私は目の前の患者さんを相手にしながら、ついなんで今自分はここにいるんだろう・・・と。人も動物も皆、等しくいつかは死んでいくものです。ですがその命のほころびを、自分の力の及ぶ限り掬い取りたい。そう思って差し伸ばした手の間を、テルはもう随分前にすり抜け落ちてしまっていた事に今頃になってようやく気がついた、大馬鹿者です。
Apr 26, 2008
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再びこの間の子猫です。先日、ようやくピンも抜けて、心配していた排便の障害もなくとっても元気です。おしとやか?子猫(騙されちゃいけないw11月半ばには2回目のワクチンを打つので、それからお披露目の予定です。とっても甘えん坊で、撫でられるのが大好きな子なので、きっとすぐに里親さんが見つかる事でしょう。
Oct 31, 2007
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こんにちは。今回も先日の仔猫の続報をお届けします。女の子ですが、とっても美人さんです。あとひと月ほどでピンも抜けると思い・・・たいです(^^;その理由はこれ・・仔猫、元気です場所が場所なので、ギプス固定が難しいため、多少のズレはしょうがないのかなぁ と諦めてます。今のところ、排便・排尿もしっかりできてるし、なにより元気いっぱい。このまますくすくと育って欲しいものです。
Oct 7, 2007
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こんばんは。まりもさんが貰われて行って、ホッと息をつく暇もなく、またもや仔猫が舞い込んできました。先週の土曜日、診療の合間に休憩しているところへ、近所のおばさんがやってきて開口一番。「うちの敷地にネコが居座ってる。触りたくもないからなんとか(駆除)してよ」嫌な感じを受けましたが、とにかく見に行ってみると。小さな小さな仔猫が駐車場の片隅にうずくまってました。見てしまった以上、ほっとくわけにもいかず。おばさんはおばさんで、汚い物を見るような目つきで「早くもっていってよ」の一点張りです。しょうがないのでおばさんの存在は忘れる事にして(精神衛生上よろしくないため・・・)仔猫を保護しました。今回はまりもちゃんの時と違い、一時的にせよ飼い主として責任を負担して下さる方もいないため、全て私の自腹で介抱する事にしました。例に漏れず、目と鼻はガビガビですし、極度の脱水と、恐らくは栄養失調でしょうか、かなり衰弱してます。 とりあえずは皮下点滴と、点眼・点鼻処置をして、顔をきれいにしました。しかし、何かおかしい?よく触ってみると、どうやら左後ろ足を骨折しているようです。レントゲンを撮ってみると、左大腿骨と骨盤を骨折していました。車か何かにはねられたのでしょうか。。。骨折している場所が悪く、添木もできないため手術が必要です。 身体検査で、乳歯の生え具合から生後1ヶ月くらいと見当はつきましたが、それにしては体が小さく、保護した日の体重は僅か250グラムしかありませんでした。この状態で麻酔は無理なので、しばらくは体調の回復を待つ事に。翌日から食べる食べる。わりとなつっこい子で、しかも元気です。毎日何度も点眼・点鼻を続けて、目もだいぶ開いてきました。そして本日、体重も400グラムにまで増えたのと、これ以上手術を先延ばしにすると折れたところがそのまま固まってしまいそうだったので手術を行いました。といっても、骨盤の骨折には手を付ける余裕と設備がないため、排便・排尿がしっかりしているので大腿骨の手術だけでしたが。術後、麻酔の醒めも良く、早速立ち上がって歩き回り出したため、慌てて手術した足を固定して、本日は終了です。1週間か10日後には足の固定を外して、自由に歩けるようになるでしょう。これから抜ピンするまで、少なくとも2ヶ月間は入院です。その間にまた、飼い主さんを探してあげないと。
Sep 21, 2007
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ようやく20日目に突入ですこんにちは。今朝、長いことリンパ腫と戦ってきた子が亡くなりました。11歳の猫で、腫瘍が発覚したのがちょうど1年前。複数回の摘出手術と抗癌治療を繰り返しながら、リンパ腫に侵される前からの持病だった糖尿病とも戦いながら、一度は眼底に腫瘍ができて失明しかけながらそれを克服し、 でも最後の3ヶ月は腎臓に転移して腎臓癌にも侵されて、それでも一生懸命頑張りながら、 今朝ようやく全てから開放されました。飼い主の老夫婦も、これまで大変甲斐甲斐しくお世話をしてこられましたが、なんとも間の悪い事に、この子の容態が悪化するのと時期を同じくして、ご主人が肺炎で入院してしまい、最後の10日間は病院でお世話をしていました。「週末には退院できそうなので、それまでなんとか・・・」すでに自分ではご飯も食べられなくなっていたその子を預かって、早速集中治療を開始して、数日後にはものすごい勢いでご飯を食べてくれるまで回復しました。毎日面会に来られていた奥様はもちろん、時折病院を抜け出して面会されていたご主人も喜んでくださいました。 しかし、お約束だった土曜日、病院を抜け出したりして無理が祟ったのか、ご主人の容態もまだ完全ではなく、退院が今日まで延びてしまう事になって・・・土曜日を境にその子の容態が再び悪化していきました。昨日にはもう、ずっと寝たきりでしたが、それでも口元にご飯を持っていくと自分からほおばってくれて。ですがもう、体中のエネルギーというか命を使い果たしているようで、ほおばったものを長い時間かけて一生懸命飲み込んで、その後疲れてまた寝てしまうその姿に、ご飯を食べさせる事すら躊躇われるほどでした。これまでずっと問題だった腎不全・糖尿病・異常に高い白血球値、昨日の朝の最後の血液検査ではそれらの全てが正常値というか、うんと下がってしまって、私には例えるなら機械がシステムダウンしたような、身体のあらゆる機能が運転を停止していくような印象を受けました。「お父さんが迎えに来るまで、あと数時間だよ」と声をかけつつ、私はこれまで獣医師をやってきて初めて、消え入る蝋燭のように、本当に少しずつ命が減っていくという感覚を受けた気がします。なんの発作もなく、身動ぎして痛みを訴える事もなく、呼べば少し頭をもたげて返事をしてくれて、そのもたげる頭の高さが呼ぶ度に低くなっていき・・・彼の死は、ほんとうにいつのまにか向こう側へ行ってしまった。そういう印象を受けました。「ああしておけば良かった」「これを試してみれば」といった後悔は不思議とありません。ですが残念なのは、最後を彼の家で過ごさせてあげられなかった事と本当に可愛がっておられたご夫婦の腕に委ねてあげられなかった事。もうすぐ、お父さんとお母さんが迎えにきます。私は今日非番ですが、お二人に彼の最後の様子を伝えなければなりません。
Sep 11, 2007
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こんばんわ。病院日誌18日目で紹介しました、障害を負った猫の続報です。といっても、未だ里親さんは決まっておりませんが。。今回はこちらのblog用に動画を用意してみました。動画UPしました 今現在、病院にてお披露目のためにお預かりしつつ、治療を継続しております。多くは本人の治癒力に依るところ大ですが。未だ障害は障害として残ってはいますが、視覚障害に少しずつ光明が見えてきました。ご紹介当初、視界の下で動くものに対して一切反応しなかったのに、今日ふと気がつくとしっかりと指を目で追っているではありませんか。未だ頭をフラフラさせて、どうやら上手く焦点を合わせられない様子ではありますが、僅か数日前と比べると飛躍的な進歩です。2ヶ月前の初診時からは到底信じ難い回復です。しかし、影は追えるもののまだきちんと見えているわけではないからでしょうか。受付のお披露目の場に出されている間中、ずっと怯えて蹲っています。そのせいか、患者さん達の反応もいまひとつで、ただただ怖い思いをさせているだけではないのだろうか・・と自問しきりです。動画は、お披露目を終えて入院室へ戻った時のもので、戻した途端にリラックスして頭を摺り寄せてきたり。狭い空間や、静かな空間では周りの「よく判らない」音に怯えさせられる事もなく、くつろいでいますが、この調子ではますます、外へなど出せるものではありません。この子についてもう少しだけ追記を。以下は当時、この子の治療を担当した同僚からの報告で、カルテには記載されていなかった内容です。事故?当時、病院に運び込まれたこの子は、小さいながらもおっぱいが張っていて、どうやら若齢出産していたようです。全く不意に、突然引き離されてしまった親子。当然ながら、お母さんといきなり離れ離れにされてしまった仔猫達の運命は、みなさんのご想像通りでしょう。例え一頭でも、誰か善意の人に拾われていて欲しいと願いつつ、せめてこの子だけでも、命を全うさせてやりたいと、改めてそう思いました。まだまだ里親さん募集は続けてまいりますが、あまりに長時間のお披露目はこの子にとってストレス以外のなにものでもないため、今後は短めの時間に区切って、休ませながらのお披露目にするつもりです。
Aug 31, 2007
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こんにちは。いきなりネコ画像でスタートです。この子はちょうど2ヶ月前、交通事故なのか虐待を受けたのか、頭部に酷い打撲痕と全身麻痺など重度の神経症状と意識不明等、瀕死の状態で病院に連れてこられた野良です。当時はもう少し小さい仔猫だったので、恐らくまだ1歳にはなっていないでしょう。約10日間の治療の末、奇跡的に容態は回復しましたが、当時の大怪我の後遺症から、この子は視界の下半分を失ってしまいました。左の前足にも少しだけ神経症状が残っています。そのためか、ご飯の時など目測を誤って食器に勢いよく齧りついてしまったり、目で見て確認する事が不得意なために口元に触れるものを口にしてしまい、時には異物を食べてしまう事もあります。その他はいたって元気で、ご飯も良く食べて排泄もちゃんと自分でできます。とっても甘えん坊で触ってもらっていると大変ご満悦な様子です。これまでは善意の方が一時預かりして下さり、一生懸命里親さんを探してきましたが、残念ながら未だ決まらないまま、一時預かりの限度を迎えてしまいました。この方はたくさんの不幸な猫のお世話をして下さってて、さすがにこれ以上飼って頂くことはできないのです。かといって、元の野良に戻しても、こういう子ですから到底生きてはいけません。いずれは辛い決断をしなければならないかも知れません。川崎市中原区かもしくはその周辺で、この子の新しいママさんになっても良いという方がもしいらっしゃったらと思い、mixiサイトとここで紹介させて頂いてます。(mixiサイトでは短いですが動画を公開しています)興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、コメントもしくはメールを下さい。
Aug 23, 2007
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またまたお久しぶりですこんにちは。つい先日、7月の終わりに停留睾丸のシーズーの、腫瘍化してしまった睾丸の摘出手術をやりました。この子は毎月定期的に、フィラリアの薬をもらいに来る際に健康診断を受けていた子です。そこで私が診察する時はいつも、おなかを触診して睾丸が腫瘍化して大きくなっていないかチェックしていました。ただ、たまたま6月の検診では別の獣医がチェックしたため、厳密な腫瘍発生の時期は私には判りませんが、少なくとも2ヶ月前の検診ではおなかに異常はありませんでした。それが7月の検診ではすでに大人の握り拳ほどの大きさになっていました。その時点ですぐに手術の予定を組みましたが、手術日までの5日間足らずで、その子の容態はみるみる悪くなっていきました。手術当日になると、激しい下痢と嘔吐まで始まり、極度の貧血と溶血まで起きていましたが、それらも全て癌化した睾丸が原因だと考え、年齢に伴う心臓の弁膜症に加えてさらに容態も悪い中、とてもではないけれど「一旦体調を整えて・・」などと悠長な事は言ってられないと、半ば強引に手術に踏み切りました。手術は私が執刀し、私以上に優秀な同僚を助手に、恐らく今の院内での最強タッグで望みました。(院長との手術は懲りたので・・)開けてみてビックリ。おなかの中は一面血の海で、腫瘍化した睾丸はどす黒くうっ血した状態で膨れ上がっていました。どうやら、元々ねじれていた睾丸が腫瘍化して大きくなるうちに血管のねじれが限界に達してしまい、血液の流れをせき止めてしまったようです。しかもねじれているのは静脈のみで、動脈からは次々と睾丸へ向けて血液が送り込まれて、ところが出口が塞がっているために急激に膨れ上がり、腫瘍と血管のあちこちから滲み出ている状態でした。最長でもわずか2ヶ月(おなかのチェックは私以外も行っているので、恐らくは1ヶ月)という期間のわりに大きくなりすぎた腫瘍の原因は腫瘍そのものの捻転とうっ血だったのです。この子は自身の体中の血液の多くを腫瘍の中に閉じ込めたまま、おかげで全身の血液が足りなくなって、さらに閉じ込められた血液が壊れるために全身に溶血の反応が出てしまっていたのです。ですが幸い、腫瘍の発生そのものはごく最近ですから腫瘍とおなかの中の臓器との癒着はなく、摘出手術そのものはとても短い時間で終わりました。おなかの中の停留睾丸の腫瘍の多くは、飼い主さんがおなかの張りに気がついて来院した頃には非常に大きくなっていて、すでにおなかの中で癒着している事が多いのです。この子の場合、腫瘍の発見と処置の時期としては早かったと思ってますが、まさか大量の出血を起こしていたとは。もうあと一日でも様子を見ていたら・・・と思うとゾッとします。術後、腫瘍化した睾丸から大量に分泌されたエストロジェン(性ホルモン)の影響で骨髄抑制がかかっているのか、なかなか貧血状態が改善せず、時折嘔吐を伴い、食欲も戻ってくれませんでしたが、6日目になってようやく元気を取り戻して改善の兆しが見えたので退院となりました。その後の経過も良好で、恐らく明日あたり抜糸に来るでしょう。過日、メス犬の避妊手術の重要性と氾濫する情報の疑問点についてお話しましたが、基本的には私は、メス犬に対してはできるだけ早い段階での卵巣・子宮摘出をお勧めしてます。ですがオス犬に対しては、将来生殖器が原因となる病気にかかったら、その時手術すれば良いと思っています。睾丸腫瘍・前立腺疾患・肛門周囲腺腫など、ほとんどが「外から一見して判る」病気のため、メス犬に比べてとても早い段階で対処できるのと、開腹手術ではないので手術時間もとても短く、老齢犬だとしても体への負担が「比較的」少ないからです。もちろん、若い内の手術のほうがより安全ですが。ところが今回の子のように「停留睾丸」の場合だけは例外となります。鼠径部と言われる、股の付け根付近に睾丸が留まっている場合の腫瘍発生率は、正常な睾丸に比べて約4倍と言われていて、これがおなかの中では9~10倍以上になると言われています。が、私がこれまで経験した停留睾丸で飼い主さんの同意が得られず摘出しなかった子の、ほとんどの例で腫瘍化しています。これは誇張でもなんでもなく、あくまで私の経験した範囲ですが、腹腔内停留睾丸の腫瘍化率は6~7割にも及びます。それよりも重大な点は、鼠径部にある場合はまだしも、おなかの中では飼い主さんも気がつかない事が多く、手遅れになる可能性がある事と、他の腫瘍に比べて低年齢でも発生し得るという事です。ましてや今回のように、その事も十分承知の上で毎月欠かさず定期健診を受けていて、比較的初期の段階で発見・摘出できたにも関わらず、予期せぬトラブルのために瀕死の状態に陥ってしまったり。やはり「停留睾丸」の子は早期に摘出手術を行うべきでしょうね。しかも、片側陰睾の場合は無事なほうに生殖能力は残ってはいますが、この「停留睾丸」は遺伝病とも言われているので、繁殖を避ける意味でも両方摘出するのが望ましいです。
Aug 12, 2007
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いつもより早めの更新ですこんばんは。いつだったか、狂犬病の予防接種の時です。体重40kg超のG・レトリバーの女の子を診察しました。見ると、左目が目やにと涙でグショグショで、あまりの痒さに始終顔を何かでこすり付けているのでしょう。目の周囲の皮膚は厚く肥厚してしまって、毛は変色してしまっています。まるで怪談の「お岩さん」のようでした。どうやら、上の瞼の半分が内側に巻き込まれていて、「眼瞼内反症」と診断しました。絶えず睫毛が眼を刺激するため、酷い結膜炎と充血を起し、下の瞼もそのために腫れあがってしまって軽い内反を起していました。カルテを確認すると、どうやら2年ほど前から症状が始まっている様子で、「いったい、これまでの担当医は何をしてたんだ」と軽い憤りを覚えつつ、飼い主さんにその子の状態と今後の治療の方針についてお話をしました。当然、内反症の手術という事になるわけですが、大きな子ですし、術後の眼の管理のためもあって3日間の入院も計算に入れて、おおよその金額を提示した時点で、かなり気持ちを削がれた様子でした。どうやら、あまりお金をかけてあげられないとの事で、最初に症状が出始めた時点ではそのために手術は見送られて、以来そのままになっていたようです。でも、最近の症状があまりに酷く、さすがに見ていられなくなったのでしょう、不承不承ながらも手術に同意してもらえました。そして先週、ついに手術となったわけですが、この「眼瞼内反症」の手術は瞼の皮膚を一部切除して、たるんでいる分を取り除く方法を選択しましたが、どの程度切除するかその加減が非常に難しい手術でもあります。切り過ぎると目が吊り上ってしまって顔つきが変わってしまうし、酷い場合は寝ている間も目が半開きになってしまいます。かといって切除する範囲が少なすぎると内反症そのものがなくならないためすぐに元に戻ってしまい、手術の効果が得られません。加えて、この子の場合は瞼を含めて回りの皮膚が肥厚し、厚くなっていますから、いずれ肥厚が治って元の皮膚に戻った時の状況まで想像しながら切る必要がありました。かなり慎重に、切除範囲を決めて、さらには術中にも微調整をしながら、手術は無事に終りました。退院時まで、ずっと手術のあとの腫れが残っていて、見た目はあまり変わっていないように見えたせいでしょう。退院する時、飼い主さんは始終しかめっ面で、今後の治療計画などお話する際にもしきりに金額を気にしておられました。「金ばっかりかかって・・」と思われていたかも知れません。そして昨日、術後の経過を見せてもらうために来院してもらいましたが、診察室に入ってくる飼い主さんのニコニコ顔が、とても印象的でした。まだ、長年こすり続けて肥厚してしまった皮膚はそのままですが、手術の腫れが引いた目はぱっちりと、ゴールデン特有のあの優しい眼差しのまま、左右のバランスも上手くとれていて。それでいて瞼のすぐ上の皮膚にはかなり余裕があって、今後肥厚が治ってもあまり瞼が引っ張られる事はなさそうです。我ながら上出来の出来栄えでした。次は抜糸のお約束をして、終始ニコニコ顔の飼い主さんを見送りながら、カルテにこっそりと「術部・・最高!」とコメントを書いていたら、AHTの女の子に笑われてしまいました^^;うちの病院の治療費は、周りと比べてかなり安い部類に入ると思います。でも、それでも納得できない治療効果に対しては、どんな金額であれ「高い!」と感じるものです。それが自然であり、私達の業務が基本的に「成功報酬」的要素で成り立っている以上、常に成功し続けるためにもさらに精進しなくては・・と思った一日でした。
Jun 14, 2007
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素晴らしい忍耐力をお持ちの方々、お久しぶりです。2月の日誌以来、中堅で頑張ってくれてた若手が家業を継ぐために辞めて、その分とっても忙しい日々でした。(と、言い訳)実はmixiの方で少しだけ本格的に活動再開してたりします。以後、こちらでは獣医師として日誌をしたためつつ、アチラではYasichi個人としてウサ晴らし日々の感想なぞを。さてさて。先日の事ですが、最近では珍しくスタンダード・プードルが、嘔吐と食欲廃絶で来院しました。この子は同僚が担当したのですが、診断は胃捻転です。夜間だろうと一人だろうと、何が何でも手術が必要な、動物病院としては数少ない本当の緊急手術適応な病気です。幸い、この子が来院したのは午前中で、しかもまだ捻転してからさほど時間も経っておらず、ある程度余裕をもって手術できる状況でした。手術そのものについては、、実は紆余曲折あったのですが、ともかく無事に終りました。(紆余曲折の部分については、いずれアチラにでも・・)問題は、手術の際に小腸に閉塞部位がみつかり、その中身を取り出したところにありました。出てきたものは、一欠けらのグリニーズ。ほとんど未消化の状態でした。以前からこの商品については世界各国で消化器障害の報告があったのですが、大ブームになったお陰で元々販売個数自体が膨大なため、事故の発生率そのものは極端に高いものではありませんが、実際に事故に遭遇してしまっては、今後この商品に対しての私のネガティブな印象を拭い去る事はできないでしょう。発売元のアメリカ本国では、事故発覚当時から大問題になっていましたが、実際に国内でもすでに複数の事故の報告があるのに、業界側には未だ問題意識がないようで、そこかしこで「大人気!」「大好物!!」等の売り文句と共に売られています。まぁ確かに、「ほとんどの子」は大丈夫なんですが、例え僅かであろうともリスクを伴うもので、しかも不必要なものなら敢えて与えなくても良いように思います。同じく、敢えて与えなくても・・と私が現在、飼い主さんに警鐘を鳴らしている製品に、キシリトール入りフード(おやつ)があります。キシリトールはご存知の通り、人間では虫歯予防・歯周病予防に効果がある事が実証されていますが、同時にその使用方法についても「含まれる糖質の100%がキシリトールでなければ、治療効果が望めない」事や、「作用するためには十分な時間、口内にキシリトールが留まる必要がある」事も判っています。人にしろ犬にしろ、キシリトールを使用する目的はなんでしょう?1.虫歯予防 ミュータンス菌の活動を阻害する事で口の中の酸化を防ぎ、歯のう蝕を防止します。2.歯周病予防 歯垢のネバネバを解除する事で歯垢が歯に纏わりつきにくくし、その結果、 歯周病の予防に繋がります他にもなにやら書いてありましたが、大きな目的としてはこの2点だと思います。ところが犬では、そもそも虫歯自体が発症率がとても低くおおよそですが6~8%だと言われています。(虫歯にならない わけじゃないです)これは、元々の口内pHの犬と人との違いによるもので、犬の場合はアルカリ性に傾いているため、よしんばミュータンス菌が活動しても、せいぜい中和される程度でう蝕が起こらないとされているからです。その代わり、歯垢に石灰沈着してできる歯石は、アルカリ性の口内では大げさに言うと一晩で出来上がるほど、スピーディーです。じゃぁ、歯垢がつきにくくなるなら歯石予防の効果があるんじゃ?と思われる方も多いでしょうが、歯垢のネバネバを防止するためには、十分量の(糖質全体の100%の)キシリトールが、しばらく口内に留まる必要があります。つまり、(人の)キシリトールガムが最も適しているわけですね。しばらく、クチャクチャと噛み続けますから。ところが人と違って、犬の場合は物を食べる時、口唇を閉じて咀嚼する事ができないので、食べ方としてはバリバリと噛み砕いてとっとと飲み込む、となります。なかなか飲み込めない・齧れない大きさのガムだとしても、口を開けたままですからキシリトールの大部分はよだれと一緒に流れ出てしまうか飲み込んでしまいます。なので、作用するのに十分な時間、キシリトールが犬の口内に留まる事は期待できないでしょう。つまり、犬に対してはキシリトールの効能は期待できないというのが私の考えです。ところでキシリトールは、医療用としても使う場合があります。(正確には、ありました。肝不全の恐れがあると判った現在では使う獣医はいないでしょう)用途は、キシリトールのインスリン放出促進作用を利用した糖尿病に対する血糖値降下作用です。つまり、キシリトールを摂取するとすい臓から分泌されるインスリンの量が増えるわけです。この効果は、人ではほとんど機能していないのですが、犬ではてきめん効果があります。そんなものを、糖尿病でもなんでもない、健康な子が食べてしまったら・・一定量(いわゆる薬用量)を超えれば低血糖症を引き起こすのは当たり前の事ですね。ASPCA(Animal Poison Control Center)の報告によれば、体重あたり0.1gのキシリトールを摂取した場合、低血糖治療が必要になる との事です。犬のキシリトールの吸収はとても迅速で、30-40分で吸収されてしまうので、大量のキシリトール(例えば、人用のキシリトール入りガムなど)を食べてしまった場合、どんなに遅くとも1時間以内に処置する必要があります。また、まだ低血糖のように用量については明らかではありませんが、肝臓障害を引き起こす可能性についても報告がありますし、私自身が、実際にキシリトール入りのおやつを止めてもらって以来肝機能障害が治ったケースを経験しています。現在、日本で販売されているペットフードやおやつ、デンタル商品の多くに、キシリトールが混入されていて、こぞって「キシリトール配合!」とさも伝家の宝刀のごとく宣伝しています。それでいて、これらの諸問題について質問が来ると「当社の製品に含まれるキシリトールは微量ですので心配いりません・・・云々」という返答が決まって返って来るようです。ここで、人の歯科領域で判明しているキシリトールの作用条件を思い出して下さい。「含まれる糖質の100%がキシリトールの場合にのみ、効果が期待できる」でしたね。これは、どこの歯医者さんに質問されても、同じ答えが返ってくると思います。人の食べ物と違ってあまり糖質を必要としないので、全てとは言いませんが、危険な量ではないという事はつまり、キシリトール100%ではないと宣言しているようなものじゃないかと思うのです。100%だとしても微量のキシリトールに、いったいどれだけの予防効果があるのでしょう?自ら、キシリトールは入ってるけど効果はないよと言っているようなものですね。以上の事から、たいして効果があるとも言えないものを、確率はともかくリスクを伴うのにわざわざ与えなくても良いのでは?というのが私の見解です。重ねて言いますが、キシリトールは人に対してはほぼ無害です。人に良いから犬にも良いという事にはならない という事です。そして、恐らくはこの「錯覚」を利用した商法でしかない としか思えないという事です。なお、自然の果物や野菜などにもキシリトールは微量ながら含まれていますが、これらについては、どんなに頑張っても危険な量のキシリトールを摂取する事は不可能ですので、無視して構わないと思います。グリニーズにしろキシリトールにしろ、日本のペット業界では今もなお平気で売られています。日本の現在のシステムでは、これらに対して警告を公に発する機関や制度はありません。なので全ては飼い主一人一人の不断の勉強と選択に委ねられています。獣医の間で格言のごとく言われ続けている言葉があります。「猫は小さな犬じゃない」これはそのまま、人と犬の間にも、当てはまる事なのです。
May 21, 2007
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あけましておめでとうございます。本年も昨年同様、のんびりとお付き合い下さいます様、お願い申し上げます。さてさて、大晦日。今日も朝からけっこうな修羅場でした。病院自体は休診なんですが、当然入院患者もいるわけで、私は今年の当番を買って出た次第です。が、休診日ですから基本的には入院の子の治療が主な仕事で人数も必要ないため、出勤しているのは獣医師一人にAHTが一人。そこへ、来るわ来るわ緊急外来の患者さん達。8割ほどは緊急でもなんでもない方々でしたが・・ともかく、咬傷から内臓が飛び出してしまったハムスターの緊急手術に、老衰で採血もできないほど血圧の下がったワンちゃんの点滴治療に他所の病院で悪性リンパ腫と診断され、前病院でホスピス治療を選択したけれどどうにか助からないかと訪ねてこられたニャンコ。さらには酔っ払いのおばさんの電話の応対などなど。二人でこなすにはなかなかにハードな一日でした。ハムスターはどうにか手術は成功して抗生剤の内服を美味しそうに飲んでくれたため、お帰り頂きましたが、すでに腸管の一部が壊死していたのと、傷があまりに酷かったため、恐らくはそう長くはもたないでしょう。ワンちゃんも状態が安定したので今晩はおうちで年越しして、明日また点滴治療に来院されます。酔っ払いのおばさんもどうやら溜飲を下げて頂けたようです。ニャンコは残念ながら、来院した時すでに多臓器不全に陥っていて、治療の甲斐なく助ける事ができませんでした。さて、明日は皮膚型リンパ腫(悪性リンパ腫です)の坑がん治療をしているニャンコの、3回目の坑がん治療日です。老衰のワンコもやってくるでしょう。ハムスターの事も気になります。今日、健康診断と血液検査で来たプードルの、検査で判明した低血糖と肝不全に対しての治療方針も決めなければいけません。処方した強肝剤が奏功してくれると良いのですが。。一応、明日も休診日です。まぁ、明日はもっと酔っ払ってるであろうおばさんの電話だけは正直なところ願い下げしたいところです(笑皆様と、皆様の伴侶達にとって、今年一年が良い年でありますように。
Dec 31, 2006
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こんばんは。さて、今秋四半期を振り返って2件目です。今から一月ほど前、生後半年の子猫が、ご飯を食べてる最中に急にぐったりしてしまったとの事で来院されました。その子は、ママ猫と兄弟達と共に、ある経緯から今の飼い主さんに保護された元野良さんでした。初診を受けた同僚の記載ではどうやら全身性の不全麻痺のようでしたが、検査の結果、FIPウィルス性髄膜脳炎らしいという事が判りました。というのも、FIPの抗体価が25600倍と非常に高い以外に、その他の麻痺を伴う疾患がほぼ全て否定されたため、暫定的に診断をした次第です。そのまま入院して、内科的に麻痺の改善を図りつつ点滴中心に治療していったところ、どうやら麻痺症状も治まってくれました。約2週間ほどの治療で、軽い麻痺症状は残るもののごはんも良く食べて、ウンチもおしっこも問題なく、日常生活も十分と判断したところで退院となりました。今後は、すでに発症してしまったらしきFIPに対する抵抗力を養う事を主眼にした治療となります。その方法は、前にも書きました代替療法を利用していますが、何分にも未だその効果について十分な科学的解明がなされているわけではない事も含めて、よく飼い主さんと相談した上での選択です。まだ子猫である事や、髄膜脳炎という重篤な状態から回復できた事から、もしかしたら不顕性化するかも知れないという、幾許かの期待も持っていますが、軽口を叩いて飼い主さんをぬか喜びさせてはいけないと思い、年明け早々にFIPの再検査をするとだけお話してあります。問題はこの子のママ猫と兄弟達、そして、この子達を保護する前からいた先住猫さんに感染していないかどうか・・検査したところ、なかなかに捕まらないという2頭の兄弟を除いて、先住猫さんもママ猫さんもとても高い抗体価である事が判明しました。状況から判断するに、恐らくはこの、ママ猫さんが元々のキャリアーだろうと推察できますが、先住猫さんに関しては最も抗体価が高く、51200倍というとんでもない数字が弾き出されてしまいました。未だ症状がないため、恐らくは今、彼の体の中ではウィルスとの熾烈なせめぎあいが繰り広げられているのでしょう。どうにかウィルスを押さえ込んで不顕性化してくれるよう、この子達にも同様の代替療法を取り入れてもらってます。それにしても、善意から野良猫を保護したのに、元々飼っていた猫までが不治の病にかかってしまうなんて。なんという皮肉でしょう。せめてみんな、発病せずに済んで欲しいものです。
Dec 26, 2006
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久しぶりの更新です。今秋も色々と心に残る(ワンニャンとの)出会いと別れがありました。と四半期を振り返ってみます。初秋の頃のお話です。同居の別の子のちょっとした手術のあと、その子も付き添いで一緒に連れて抜糸に来られた時に「そう言えば、この夏からこの子がたまに吐く事がある」と。本当に、週に1回とか、月に何回か吐く事があるとかその程度で、元気一杯だし普段は食欲旺盛だったので、飼い主さんも私も何気なく「まぁ、ちょうど5歳だし。念のために血液検査などして健康診断しておきましょう」と、その子にとって初めての血液検査をしたところ、肝臓が悪い事が判明しました。次いで撮影したレントゲンで、肝臓が異常に小さい事。血液の追加検査で血中アンモニアが異常に高い事。ところがエコー検査では肝臓は小さいながらも画像上正常な状態である事から、単なる肝硬変とか、そういった病気ではない事が予想できました。頭に浮かんだ病名は「肝門脈シャント」そこでシャントかどうかを判断するための血液検査を検査機関に依頼したところ、限りなく疑わしいという結果に。私は飼い主さんと相談して、大学病院できちんとした診察をしてもらって、もしシャントだとしてそれが手術適応なのかどうかを判断してもらう事にしました。ところが、ご存知の方もいるでしょうが、大学病院での診察(特に初診)は完全予約制なため、さらに間の悪い事に専門に診てくださる教授が公務のため海外に行かれていて、最初の診察を受けるまで1ヶ月近く待つ事に。その間、教授とメールで連絡を取り合いながら療養食と内服で状態を維持していき、そして診察。案の定、間違いなく先天性の肝門脈シャントでしかも血液凝固障害も伴っていましたが、どうやら手術できるレベルだと言う事で、飼い主さんも私も一安心でした。しかし、その手術日がまた、予定が埋まっていて1ヶ月先になるとの事で、それまでは大学で処方された血液凝固障害の内服を飲みながら、何かあれば私が対症療法を行うという事になりました。肝門脈シャントとは、消化・吸収した栄養が肝臓を通らずに全身にそのまま流れるため、特にたんぱく質から生まれるアンモニアが大量に血液中に回ってしまいます。そのため、シャントの子はいわゆるベジタリアンとして育てなければなりません。中には自ら野菜を好む子もいますが。大学での診察は、特にこのシャントの症例を多く扱っている先生で、その時私も初耳でしたが「おイモ系の食物繊維は、なぜかいつまでも胃に残ってしまうんですよ。長いと3日くらい」と。なので、おイモを与えるときはできるだけ細かく、マッシュポテトのようにした状態で与えてくださいとの事でした。普段元気で、でもおイモなどを混ぜて与えてる子で、食欲にムラがあるようなら、もしかしたらおイモの繊維が胃からなくなるまであまり空腹を感じていないのかも知れませんね。まぁとにかく、手術を待つまでの間、最初こそ薬の副作用で嘔吐などがありましたが、それもコントロールする事ができて大過なく過ごしていました。しかし、手術まであと1週間か数日というところで、その子の容態が急変して、突然のひどい吐血と血尿、下血が始まりました。早速入院してもらって、症状とこれまでの経緯から恐らく、肝不全から続発するDIC(播種性血管内凝固症候群)だろうと想像できたのでその治療を開始しましたが、治療効果を待つよりも病状の進行が早く、いよいよ今日一日もたないだろうと判断した時点で、飼い主さんとの相談の末に自宅で看取る事に。そして病院から送り出して間もなく、家に着いて早々に亡くなったとの連絡を頂きました。申し訳なくて言葉もありませんでした。もっと早く発見できていれば。うちの病院と私にもっと設備と技術があれば。救えたかも知れない命でした。それ以来、前にも増して特に仔犬の診察では細かく様子を伺うようになりました。今回のシャントに限らず、先天性の病気はたくさんあります。元気と食欲にムラはないか?他の兄弟と比べて、ポツンと一人でいたり人にくっつきたがる事が多くないか?妙なものを食べる癖はないか?目と目が離れすぎてやしないか?聴診で何か違和感はないか?などなど・・それぞれ単純にそういう性格だったり、特に騒ぎ立てる理由などない事も多いです。ですが、例えそれが万が一だったとしても、これ以上見過ごしたくないという思いが強いですね。今回のこの子の場合、病気が発覚する少し前から同居の子の治療の時に何度も会っていたのですから。
Dec 23, 2006
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狂犬病患者が出てしまいましたね。もっとも、感染したのは国外で、との事ですが。このニュースは飼い主さん達に少なからず衝撃を与えたようでこれまで「完全屋内飼いだから」「歳だから」「体調に不安があって打たせたくないから」など等狂犬病予防接種を先延ばしに拒まれてきた方々の幾人かが、慌てて予防注射に来られました。皮肉なことに、狂犬病を発症した男性の尊い命を代償にしてこれまで私達獣医師や行政がいくら働きかけても動かすことのできなかった、狂犬病ワクチン拒否の飼い主さんの心を動かす結果となりました。まさしく、百聞は一見に然ず ですね。それでもまだまだ、依然として国内の予防効果を期待できるほどのワクチン接種率には到底到達していない現状ではありますが。行政が本気で国内発症を予防したいなら、特に狂犬病蔓延の重要地域への渡航者だけでも予防接種を義務付けるべきだとつくづく思います。海という天然の防御壁に守られた?日本での発症はやはり今回のような海外渡航者が感染して帰国したケースが多くなるでしょう。今回はまだ、感染したとされる時期から発症までの期間が比較的短かったためにこの男性の周りの疫学調査もいくらか範囲が絞れますがこれが、感染から発症まで数年間かかっていた場合、最早どこで誰と、どんな動物と接触したかなど調べる事は不可能だったでしょう。そうなると、ワクチンを接種していない動物はどれもこれも疑わしい存在となってそこにさらに感染者が出ようものなら、確実にパニックに見舞われるでしょうね。現在、犬に関してはほとんど野犬を見なくなって久しいので、いざとなれば国内の犬の全頭管理も可能だと思いますが、野良猫・地域猫など、あやふやな立場の子達が増え続けている猫への管理・監督は恐らく不可能でしょう。となれば、狂犬病パニックがもしも起こったとして、真っ先に被害を蒙るのは猫達だと思います。きちんと不妊処置も管理・監督もしないまま、安易にエサを与えている方々のその行為が将来その子達に大きな災いとなるかも知れません。海外渡航者へのワクチン接種が義務付けられるためには、今ある狂犬病ワクチンを、より安全性の高いワクチンに仕上げる必要があるでしょう。そうなれば逆に、ペット達への予防接種トラブルもずっと少なくなると思います。実際に、現在のワクチンと昔のものとでは安全性が飛躍的に向上しているとの話もあるのでもしかしたら、そういう新たなワクチンを今も開発しているかも知れませんが。こんな例え話をインターネット上で公開して、果たして良いものかどうか。例えば北のお国が日本に対して本気で威力制裁を敢行しようと思うならなにも核ミサイルの開発などしなくてもいいのです。自分のお国の山林から「それらしい」野犬を数頭ずつ、「工作船」に乗せて日本の主要な港に上陸させるだけで、確実に日本にはパニックが起こるでしょう。経済的損失も計り知れないものにならないとも限りません。少なくとも、不安と恐怖と猜疑心を振りまくには十分でしょうね。しかも、自分達が犯人だとは、容易に知られませんし。それほど、現在の日本を防疫という観点で見た場合の状況は楽観できるものではないという事です。海という天然の要害があるからこその狂犬病清浄国という立場に、胡坐をかいていられる状況ではないと思ってます。あのお国が最も気にしている国が日本ではないために、核開発という方向に向いてくれているようですが。。全く気付かれず、人一人を連れ出す事ができるお国が、犬数頭を潜り込ませるくらい簡単だと思いませんか?
Nov 20, 2006
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今日はよもやま話的に徒然と。先々週のお話ですが、ネコの噛み傷やひっかき傷からの化膿の手術で再発を繰り返している子がいました。通常、ネコの化膿の手術は細菌に汚染された部分をきれいに取り去ってから徹底的に洗浄して、新鮮な組織だけにしてから縫合してあとは抗生剤を数日間飲ませて終わり。という流れになります。が、最初の手術の時に行った細菌培養ですでに薬剤耐性菌が検出されていたので数少ない、抗菌効果のある抗生物質を使っていましたが、それでも再発を繰り返してました。で、私が担当する事になって再手術を行いました。再発を繰り返すネコの化膿でよくあるのが婁管(ろうかん)形成といって、化膿の大本の原因になるキズやゴミが身体の奥深くに「注入」された状態で、そこから体表に向かって管を形成して延々とばい菌を排出する状態です。なので当然、それを疑って念入りに調べましたが、それらしい管はありませんでした。で、残るのは先にお話した「薬剤耐性菌」の存在。通常、手術後は3日ほどで退院してあとは抜糸まで自宅で内服を飲んでもらいますが、この時は抜糸までお預かりして、病院で徹底的に洗浄を繰り返して、ようやく完治しました。抗菌は、どんなクスリよりも洗浄が一番なんですね。そこで問題なのが、この子の「薬剤耐性菌」が初診時すでに存在していたという事実。薬剤耐性菌の存在は主に病院内での怖い感染症の原因菌として知られていましたが、これは頻繁に抗生剤や消毒薬を使う病院で耐性菌が生まれるチャンスが多いからですが、最近では院内感染の代名詞的存在だった薬剤耐性菌が一般の家庭でも見つかるそうです。科学的に証明されたわけじゃないけれど、これはどうやら巷に溢れかえっている抗菌グッズや消毒グッズの影響が大きいようです。以前にもいきすぎたクリーン志向に対して少しお話しましたが、やはり「過ぎたるは・・」という事なのでしょうか。どんなに消毒したとしても、一般の家庭で雑菌をゼロにする事は不可能ですから、半端な抗菌行動で強い菌だけを選別して培養していく結果になっているようですね。この薬剤耐性菌、とても怖い細菌だというイメージがありますが、O-157のように特に毒性が強いわけではありません。性状としてはいたって普通の一般細菌と変わりはありません。単に「抗生剤にたいする耐性」が強くしぶとい細菌というだけなのですが、肺炎や気管支炎、化膿など細菌感染を起こした時にたまたま、原因菌に薬剤の耐性があると、現代医学ではなんでもない、簡単に治る病気が抗生剤が利かないというだけでペニシリンを発見する以前と同じレベルの治療しかできなくなるのです。しかもペニシリン発見以降、どんどん身体の免疫能力は薬剤依存性に退行してきていますから、免疫力を高めて自然治癒を促すという治療法もいまひとつ成果が出てこない事があります。これからの感染医療は、かかってから治療するよりも「いかに予防するか」がさらに重要になるでしょう。洗う事がなにより、どんな抗生剤よりも抗菌効果が高いと思っています。安易に抗菌グッズに頼るのではなく、きちんと「手を洗う」「うがいをする」などを励行して家庭に薬剤耐性菌が発生しないように気をつけなければいけませんね。ちなみにこのネコちゃん。今回の私の治療費はいただきませんでした。さすがに単なる化膿の治療で、再発を繰り返すのは治療の失敗に他ならないし、病院として恥ずかしい事ですから。
Oct 19, 2006
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いつもの診察。その日も大過なく終わろうとしていました。そんな夕方に来院した小さな小さなワンちゃん。体重2.2kg、11歳のチワワの女の子でした。「昨日は熱が41度もあって、すぐに冷やしてあげて、今は多分平熱だと思いますが・・」とお母さんが心配そうに連れてこられました。ここ2、3日元気がなくて、一昨日は1回だけ吐いたそうです。「他には吐いてませんか?」「一回だけです」「鼻先をペロペロ、しきりに舐めてませんでしたか?」「あっ・・・」実際に吐かなくても、嘔吐感があるとしきりに鼻先を舐めるんです。確かに病院で計った体温は平熱でしたが、年齢も年齢だし、腎臓や肝臓に異常はないか念のために血液検査をする事に。秋の長雨もあって、熱中症は考えられませんでしたし、人間の感冒症のようなもの?というには熱が上がりすぎです。一番気になるのは診察中もしきりに鼻先を舐める仕草。最初は老齢のワンちゃんだし、心臓も悪いようだからもしかして腎不全?とアタリを付けての検査のはずでした。採血と、触診のためにお母さんからワンちゃんを預かってすぐおなかの異常に気が付きました。そんなに大きく膨れているわけじゃないけれど、おなかの張り具合が正常な子とは何かが違う・・避妊していない子でしたので、陰部も調べてみましたが腫れや充血もなければオリモノもありません。所謂、子宮蓄膿症の子とはどこか違うし、腹水が溜まっている様子もないのだけれどおなかの感触がおかしいんです。電解質と血球性状の検査結果、白血球数は正常よりほんの少し高いだけで、若干の貧血がある程度だけれど電解質はボロボロでした。検査結果を待つ間、念のためにエコー検査もしてみると直径1cm~2cm程度だけれど確かに子宮が腫れています。腹水らしきものもないし、続けて撮ったレントゲンでも所々にコブのような物が見えるけれど子宮蓄膿症に特徴的な画像ではありません。子宮の様子では腫れ方もそれほど酷くないし、まだ時間的に余裕がありそうにも見えました。生化学検査でもALPという酵素が酷く高い以外には異常がありません。飼い主さんは内科治療でどうにかならないかとおっしゃいましたが私はボロボロにバランスの崩れた電解質と異常に高いALPの数値がどうしても気になって飼い主さんを説得して緊急手術をする事にしました。子宮蓄膿症の、電解質異常が進んだ子で助かった子はほとんどいないのです。おなかを開けると、じんわりと白い液体が滲み出てきます。破裂してる!大至急、一旦帰られた飼い主さんを電話で呼び戻してもらって、手術に立ち会って頂く事にしました。獣医師としての保身から、状況を見てもらいたいとの思いも当然ありますが何より術後の麻酔から覚めない恐れがあったので、飼い主さんの声を聞かせれば覚醒してくれる可能性があるからでした。エコーでもレントゲンでも、それほど子宮が大きくなかったのはこのせいでした。破裂と言っても、子宮の一部が壊死してそこからじわじわと滲み出ているだけだったので膿が漏れている事が判らなかったのです。手術は手を止める事なく淡々と進んで膿で汚れたおなかからとにかくまず子宮と卵巣を摘出して、腹膜炎を起こして変色した脂肪をできるだけ除去して、あとは抗生剤を混ぜて暖めた生理食塩水で徹底的に腹腔洗浄して無事終了しました。すぐにお母さんとお嬢さんに呼びかけを始めてもらって10分くらい経った頃、どうにか麻酔から覚めてくれました。最初のヤマをこえてくれてほっとしながら、第2のヤマは手術の翌日を無事に迎えれるかどうか、第3に術後3日から5日目に術後腎不全を起こさないかどうか。それを乗り切るまではまだ予断は許さない事を説明してICUに入院の用意をすると、飼い主さんにはその夜はお帰り頂きました。そして今朝、お水も飲んで、元気に立ち上がって尻尾を振っているワンちゃんを確認して今帰宅したところだったりします。この姿を見たら、きっとお母さんも喜ぶでしょう。が。。子宮蓄膿症は、原因になっている子宮を摘出すると途端に元気になります。ところが、手術の前から腎不全になっていたり、電解質バランスが崩れて悪液質になっている子の場合、元気に回復していたはずの子が突然、術後3日目とか5日目頃に急性の腎不全に陥ってあとは治療の反応も悪いまま亡くなるケースが非常に多いんです。ましてや子宮破裂。点滴や抗生剤プログラムなど、私に考えられる全てを予測して、打つ手は全て打ちました。あとはこの子の頑張りに期待してこのまま順調に回復してくれる事を祈るだけです。こういう時、いつも院長が口にする「獣医療は治すのではなく治るのを手伝うだけだ」という言葉が身に染みます。
Oct 5, 2006
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私はなめこが大好きです。味噌汁の具はもちろん、ラーメンにさえなめこが入ります。野菜スープを作っていても、最終的にはなめこ汁になってしまいます。そんな私の最近のお気に入りメニューは麻婆なめこ・・・麻婆豆腐を作る時に豆腐と一緒になめこを入れて、仕上げに刻みネギをちらして出来上がりです。お手軽だけど馬鹿にしたもんじゃないですよ。
Aug 22, 2006
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前回、今年はまだ熱中症の子を診ていないと書きましたが一昨日と今朝、2件続けて熱中症の急患がありました。急な酷暑だったので「来るかな?」という予感もありましたけど。1件はフレンチブルで、夜中の1時過ぎに電話で、散歩中に倒れて動かなくなったとの事でした。電話を頂く前に飼い主さんが機転を利かせて、冷たいシャワーでワンちゃんの身体を冷やしてあったので来院した時には体温は正常近くまで下がっていましたが、数回の嘔吐の影響もあって血液検査でカリウムの数値が低下していたので補液目的と念のための対ショック治療目的で、点滴などしてお帰り頂きました。もう1件はペキニーズでしたが、この子は以前から心臓病を患っていて、先月、心臓病の再評価をして薬の量や種類の見直しをしましょうとお伝えしていたところでしたが熱中症が引き金になったと思われる重篤な「うっ血性心不全」と「肺水腫」の状態で今朝5時過ぎ頃に来院されたので、現在は高濃度酸素療法と点滴治療のために入院しています。なんとか持ち直してくれるといいのですが。。どちらにせよ退院したら、心臓の薬の量と種類の追加が必要になるでしょう。この時期、まだまだ暑い日が続きます。もしもペットを一人でお留守番させるような事があるなら、くれぐれも室温・湿度管理には気をつけてください。理想は、室温は28度程度に抑えるようにしてあまり冷やしすぎず、その分扇風機などで室内の空気を対流させて体感温度を下げる事と、必ずいつでも新鮮なお水を飲めるようにしておく事。さらには直射日光に長時間あたらないように気をつけて下さい。特に上記のようないわゆる「短頭種」のワンちゃんは要注意です。外出先から帰宅した時、ペットが口を開けて荒い息遣いをしているならその子の身体を触ってみてください。「暖かい」を通り越して「熱い」と感じるなら、熱中症の疑いがあります。闇雲に冷水シャワーで身体を冷やしすぎると今度は低体温症になってしまう恐れがあるので、必ず、かかりつけの獣医さんに相談するようにしましょう。
Aug 21, 2006
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診察をしていると、奇妙な現象に遭遇する事があります。病気の同期性とでもいうか。季節性の高い、皮膚病や外耳炎などはこの時期当然増えますが。ネコの糖尿病の子が数件続いてみたり、尿閉の子が続いてみたり。極めつけは石を飲み込んじゃって手術になった子が立て続けに2件。(先日の バトル? の子も入ってます)石じゃなく、キーホルダーの針金を飲み込んだ子も含めれば3件。病院では基本的に犬猫の治療が中心ですが、ウサギやハムスター等も時々来院されます。でも、頻度としては月に数件、しかも爪切りや歯切り程度です。それが先々週は、食欲廃絶状態のウサちゃんが3頭、立て続けに来院されました。そのうち2件は入院になってしまったのです。3頭とも便の出が悪く、出てもカラカラに乾燥した小さな便がほんの少し。入院になった子達の、食べていた物を聞いてみると1頭は最近、小松菜を好んで食べるようになって他の食餌をあまり取らなくなったとの事。1頭は元々、ラビットフードや乾草などをあまり食べない子で、食パンばかり与えてたとの事。通院治療の子もやはり、偏食が目立つようでした。どの子も、圧倒的に繊維質の摂取量が足りてないわけです。ウサギの場合、繊維質の量が不足してくると腸の運動が低下したり、腸内細菌の活性が低下したりします。その結果、便秘や下痢をしたり、最悪の場合は食べ物を受け付けなくなります。食べなければますます腸の運動が低下して、最終的には死に至ります。入院中、色々と乾草を試してみましたが、チモシーなどのイネ科系干草はどの子も受け付けず、クローバーを混ぜたアルファルファの乾草をなんとか食べてくれました。なんとかみんな、繊維質を確保する見通しが立ってなによりです。が、クローバーやアルファルファはカロリーが高すぎるので、他の食べ物も食べ始めたらいずれはチモシー主体に変えるように指導しないといけませんが。そういえば、今年はまだ「熱中症」の子を診てませんが、長梅雨の影響でしょうか。でも、少なくともこれから約1ヶ月間は飼い主さんに注意を促していかなきゃと思ってます。
Aug 13, 2006
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とってもお久しぶりな更新です。つい最近、同僚の獣医の診察を受けた雌のワンちゃんが、エコー検査の結果子宮蓄膿症との診断で緊急入院しました。さらにさらに、レントゲンを撮ってみるとおなかの中に長さ4センチ、幅2センチ程の白い影が。写り方からして金属や石などのX線を通さない物質だと判ります。血液検査では電解質バランスが著しく崩れていたため、その日一日輸液をして少しでも体調を整えて翌日の手術となりました。執刀は私がやる事に。懸案は、できる限り素早く卵巣子宮全摘出を済ませ、正体不明の物質が埋もれている場所と、その正体を迅速に突き止めて、摘出可能ならこれまた素早く摘出して麻酔時間を短くする事。体重約7キロの小ぶりな子とはいえ年齢は12歳、聴診評価で2/6度の雑音があり、僧帽弁閉鎖不全症が疑われる子です。かなりのリスクを伴う手術だと予想されました。術前点滴も十分で電解質バランスもどうやら補正されて、術後腎不全を回避するための術中~術後点滴と、非常時のための各種循環器薬などの準備も済ませ、さらに院長が助手につく事になりました。経験豊富な二人でペアを組めば手術時間を短縮できるだろうと考えたからです。無事に麻酔導入を済ませ、さていよいよ開腹です。ここから数十分間、院長と私の静かな戦いが始まりました。卵巣子宮全摘出手術は子宮周辺の主要な血管を結札しては切り離していくわけですが、その間、何故か助手の院長が、次々と今は必要ない器具を差し出してきます。同じ手術・術式でも、実際の臨床の現場では執刀医というか病院毎に使う器具や手順に微妙な違いがあるのですが、いくつかの病院で修行して最もベストに近いと思って習熟した私の手法と院長の手法に、若干の食い違いがあるようです。例えば、その時その状況では曲がった鉗子を使うのかまっすぐな鉗子を使うのかといった具合に、どちらでもできるけれどその先を考えるとこっちを使っておきたい というような。でも、どちらでもできるからといって「まぁいいや」といつもと手順を違えてしまう事は、術式そのものは単純でも、どういう間違いを起こすかわかりません。かくして、淡々と結札-切除を繰り返していく私の右側にある器具置き場に、院長から手渡されて使わずに戻された器具が積み上げられていきました。どうにか膿が溜まった子宮を摘出して、すぐさま正体不明の物体を探すと、小腸を塞ぐ格好で小石が詰まっているのを発見しました。この子は、子宮蓄膿症と腸閉塞という、どちらか片方だけでも重大な病気を、二つも併発していた事になります。しかも僧帽弁閉鎖不全症という基礎疾患まで。状況は限りなくシリアスで、しかも助手と全く呼吸が合わないというストレスの中、無事に小石を摘出してどうやら無事に手術を終える事ができました。麻酔導入から手術を経て、麻酔から覚めるまでちょうど2時間。これは決して遅い時間ではないと思うけれど、助手との呼吸さえ合えばもっと短くできたでしょう。手術したワンちゃんは術後の回復も良く、いたって元気で、今日ようやく絶食を解いてミルクのような流動食を食べさせ始めました。無事に成功した安堵からでしょうか。手術の時にオペ看役をしてくれた若い獣医が「先生と院長のバトルは見物でしたね。楽しかったです」と冗談めかして言ってきましたが、私にしてみれば楽しい手術なんていらないから楽な手術にしたいものですね。今回の教訓:術者と助手は阿吽の呼吸が命。即席の、しかも目上の助手はやめた方がいい。 注文つけ辛いったら・・
Aug 12, 2006
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只今狂犬病予防週間の真っ最中です。普段顔を見せない子達も大勢やってきます。さらにはベビーラッシュも重なって。なので待合室は一年で一番騒々しいシーズンでもあります。そんな中、たまにしか会えない子に特に多いのがまさにさっき洗いました!と、しっとりと毛艶もぴかぴかなワンコ達。たいていは狂犬病か混合ワクチンで来られる方ですね。そしてほとんどの子が、とても体温が上昇してます。これは、単に騒々しくて、さらにはあまり馴染みのない、控えめに言っても好きじゃない所に連れて来られて緊張したり、興奮してるせいもありますが。極々稀にだけれど、直前のシャンプーでいわゆる湯冷めしてしまって、もうすぐ体調を崩すかもしれない状態の子がいます。普通、単にシャンプーの湯冷めだけなら放っておいても問題はないのですが、ここにワクチンという、かなりのストレスが加わると状況が一変してしまう事があります。多少体温が上がっているだけなので、湯冷めなのか、単に興奮しているだけなのかの判断は、正直言うと区別がつきません。ですが私はとても、ワクチン怖がりな獣医師なので(^^;ちょっとでも不安があって、その子が数日以内にシャンプーをしたという話を聞こうものなら訳を話してそのままお帰り頂いてます。同僚の獣医達は私の怖がりを不思議がり、いつも笑われます。私自身、これまで数え切れないくらいの頭数にワクチンを接種してきて、その後具合が悪くなった子でシャンプーとの因果関係が疑われた子は数頭しか記憶にありません。しかも、少し体調を崩す程度で、酷い状態になった経験はありません。ですが例え万にひとつだとしても、もしかしたら今、目の前にいるその子がそうかも知れないと思うともう、打てなくなってしまいます。ワクチンをはさんで一週間はシャンプーしない事。と指導するのは、今の病院では私だけです。以前書いた、ワクチンの記述でこの事を書いてなかったのと、最近ちょうど、そういう子達が多くて思い出したのでお話してみました。
Apr 29, 2006
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ポメラニアン。16歳。メス。過去に乳腺腫瘍の摘出手術(悪性・同時に避妊手術済)。その他、既往歴なし。最終来院:5年前。主訴:左頬が膿んでる?2週間くらい前からご飯をほとんど食べない。 フラフラして立てなくなってきた。飼い主さんが院長の診察を希望していて、最初は院長が診ていましたが早速左のほっぺに直径1cmほどの腫瘍が出来ていて、そこから血と漿液がにじみ出ているのを見つけて「取っちゃいましょう」と。あっという間に毛を刈ってデキモノを切り取って、綺麗な顔に戻りました。そこまでは良かったのですが。。。「まー歳も歳だからねぇ」とのんきに話をしている院長からの指令で血液検査を私が仰せつかりまして。検査前の聴診では、心臓には特に異常はないようでしたが、肺の雑音がかなり酷くて。何より身体を触った途端の違和感。全身がむくんでてふよふよしてるんですね。もともとポメですから、毛質の関係でむくむくに見えるんだけれどお腹も大きいし、全身にむくみもあるし・・・採血してみると血液はドロドロで。検査に先立って院長にその事を伝えた時点で、主治医のバトンを渡されました。そして、改めてしっかりとその子を診察してみると、「ふらふらして立てなくなった」というのは虚脱状態になっているからで、呼吸も荒く、多飲多尿がある事も判って、血液の検査も急遽、いくつか思い当たる病気に合わせた項目を追加してさらには了解を得てレントゲンを撮りました。検査結果と現像を待つ間に入院の用意を済ませて前足には点滴の用意をして、即点滴開始です。出てきた結果からは、高ナトリウム血症や糖尿病に腎不全、さらには副腎の病気を疑わせるデータも出てきました。そしてレントゲンでは、胸の1/3を占めるほどの影の集まりと、お腹にも気になる影が。私はカルテにはさんであった、数年前の乳腺腫瘍の病理検査結果の事を思い出して、今は病理検査に耐えるだけの体力がないので確定診断はできないけれど。。と前置きした上で、飼い主さんに、今、この子の身に何が起きているのかを説明してそのまま入院・治療を開始しました。説明の中、予後の予想までお話したところで飼い主さんは泣き崩れてしまって・・いくつかの治療プランの中から、「できるだけ辛い思いはさせたくない」との意思を尊重してQOLの改善・維持に努める事にしましたが容態は急速に悪化していって・・・結局は次の日に、私が昼食をとっていた30分程の間に亡くなってしまいました。開始した治療の効果を何も得られる事なく、ただ、飼い主さんとの最後の時を奪ってしまった結果に終わってしまったのが遺体を前に悲しむ飼い主さんと、まだ温かいその子の体温を前に私はただただ、自分の無力さ、無能さを恥じるばかりでした。「せめてもう一度、ごはんを食べる姿をお見せしたかったけれど・・申し訳ありませんでした」それだけを口にするのが精一杯で、あとは頭を下げる事しかできませんでした。その子が亡くなってから、今日で4日経ちます。だけど今も、ふとした時に考えてしまいます。院長は良くも悪くも昔の獣医師で、院長自身がその事をよく判っていらっしゃるので以前勤めていた時も今も、院長の診察希望の患者さんを診た後、必ず最後に私に全身のチェックをさせます。他にも獣医師はいるけれど、院長患者のチェックは私にしかやらせません。なので、たまたま私が急がしい時や休みの日などは、そのままノーチェックで帰してしまいます。ですが今回、もしも私の目に触れなければ、この子はもしかしたらもう少し生きられたんじゃないだろうか少なくとも、最後の時まで飼い主さんの傍にいたかったという思いはかなえられたのに と。。。
Apr 29, 2006
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今日から新しい職場でのReスタートです。心機一転です。といっても、以前お世話になっていた病院に戻ってきたんですが。私がここを辞めてた間に随分とスタッフも変わってて、当時の知り合いはAHTの子達の他には獣医師が1名のみ。他にも数人の獣医師がいますが、みんな若々しくてうらやましい限りです。今日は大人しく、みんなのサポートに徹していましたがもう何年も前の事なのに、私の名前まで覚えていて声をかけてくださる飼い主さんが思いの他多くてとても嬉しい一日でした。そう言えば、私の新しい住居の近くにある小さな酒屋さんのカウンターにイヌが一匹お店番をしてるんですが、最初見た時にどこかで見た子だなぁと思ってたら、その子も「おや?」という風に私をじろじろ眺めてて、何かに思い当たったのかいきなり「ワン!ワン!ワン!」と。私もほとんど同時にその子の名前を思い出しました。飼い主の店主さんが「すみません すみません。いつもはここでは吼えない子なのに、どうしたんだろう」と。「いえいえ^^」と私はその店を出る時にもう一度その子を見て、「病院でまた会おうね、マックス」と。買い物帰りなど、散歩中のワンちゃんによく出会うんですが、その中にもたくさんの「見た顔」があって、随分と歳をとっていたけれど、ほとんどの子の名前を思い出す事ができたのが、獣医師として一番嬉しい出来事でした。
Apr 1, 2006
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去年から年明けにかけて、激動?の日々の中すっかりご無沙汰しておりました。今春からは新天地にて気分も一新、ここも(そこそこ^^;)頑張っていきたいと思っています。不定期更新のレアサイトではありますが、ここを訪れてくださる皆様、今後とも時々よろしくお願いします。余談本日、新しい職場の目と鼻の先になかなかに掘り出し物な物件を見つけて、その場で契約しました。これから荷造りに諸々の手続きに、ちょっと賑やか且つ忙しくなりそうです。
Jan 26, 2006
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ワクチンに関する問題点というのは、人も動物も等しく、その病気が身近なものでない時はワクチンの副作用こそが最も重要な問題であり、その病気が流行している時はワクチン接種の有無こそが最も重要な問題である。と言うことではないでしょうか。ちょっと判りにくい表現かも知れませんが、感染の危険が明確でない限りは無闇なワクチネーションは勧めるべきではないけれど、感染と副作用の双方のリスクを比べた時、どちらがより重要な状況かをきちんと判断していく必要があると思います。狂犬病については、もしも発症した場合の社会に及ぼす影響の重大さゆえに、現在の日本の状況下では決して飼い主さんの良心に一任させて良いものではないし、獣医師の裁量でその是非を決めて良いものでもなく、病院の診察室での問題に留めずペットに関心のない人も含めて社会全体が取り組むべき問題だと思います。その中で私達獣医師は、現状の臨床レベルではいかに副作用のリスクを減らせるかを十分に検討しなければいけないし、同時により安全なワクチンや接種方法の開発やワクチン以外の防疫手段の充実を、一人一人が関係機関に働きかけながら大きな運動にしていけるように、取り組んでいけたらと思います。ところで、私には十分な資料がなく判断ができませんでしたが、在日米軍基地の中での検疫ってどうなってるんでしょうね?狂犬病根絶国ではあるけれど、その体内に狂犬病発症国を抱え込んでいる日本の特殊事情について、その防疫体制がどの程度のレベルにあるのかご存知の方がいらっしゃったら、その情報元などを是非とも教えて頂きたいです。また実際の接種方法についても、例えばアメリカの動物病院協会(AAHA)の研究報告に、初年度と次年度のワクチンを済ませた後は3年ごとの予防接種でも毎年予防接種した場合と、その予防効果は変わらないという報告があって、アメリカでの予防接種率が70%を超える環境にあるのに対して、日本では接種率が最も高い狂犬病でさえ50%程度、その他の予防接種率は20~30%と極めて低いという状況の相違や、そもそもこの報告に経時的な抗体価の推移に関するデータなど、予防効果が変わらないとする根拠になる情報に不備な点はありますが、少なくとも毎年○月△日に打たなければいけないという事はなさそうです。AAHAによれば、何故最初だけ1年後に打つ必要があるのかと言うと、免疫を獲得するシステムが生後数ヶ月の仔犬・仔猫ではまだ未成熟なために、その後数年に渡って免疫力を持続させれるだけの能力がないため、1年経って大人になってから免疫力が落ちる前にもう一度接種する事でブースター効果(以前よりも強い免疫を、以前よりも長い期間持続させる事ができる効果)も期待できるので、その後は3年ごとの接種でも大丈夫。という事になるそうです。ただし、これが老齢になってくると、加齢と共に免疫を司る臓器である胸腺の働きが弱くなるというデータもありますから、人間でいう所の子供とお年寄りは気をつけましょう。という事になるようです。ただしこれらの伝染病は、自分は気をつけていてもペットホテルなどに預ける時、そこに預けられている他の子達がどういった経緯を辿ってきたか判りませんし、ましてや預け先が動物病院と言う事になると、(獣医の私が言うのもアレですが・・)元々そういう病気の子達が集まる場所でもありますから、やはり事前に十分な免疫力を獲得させておく必要があります。しかし一方でワクチンの副作用は、場合によっては死亡する事もある深刻な問題です。アナフィラキシー・ショックでペットを死亡させた経験は、幸運な事に私にはありませんが、ワクチンを打った後に顔が腫れたり(ムーンフェイス:特にミニチュアダックスに多いように思います)体調を崩す事は年に何度か経験しています。ワクチンに際しては可能な限り細かい健康診断を行って、気になるところがあれば予防接種を見合わせるようにしていますが、それでも様々な副作用が起きてしまいます。現在のアメリカでは、すでに初年度(仔犬・仔猫の場合はここで2~3回)と次年度のワクチンのあとは3年ごとに打つというプログラムがスタンダードになっていますが、これはワクチンによる副作用のリスクと感染のリスクを天秤にかけた結果だと思われます。未だ病原体に広く汚染されている日本では、例えば体調不良や様々な環境ストレスなどのせいで免疫力を維持できていない子がいたとして、3年ごとの予防接種でその間は放っておいても、はたして本当に安全なのか、不安があります。例えば家のすぐ外に顔をグチャグチャにした猫達が普通にいるわけで、そもそもワクチンを毎年打って高い免疫力を維持していても、体調や年齢次第では軽い症状ながら発病してしまう現状では、私にはとてもじゃありませんが「3年ごとで100%平気です」と太鼓判は押せません。毎年のワクチンの代わりに抗体価検査を実施して免疫力をモニターしながら、効果が薄れてきたら接種するようなプログラムを浸透させれれば良いかも知れませんね。抗体価検査ではワクチン接種よりも高額な費用がかかる上に、ウィルスの種類によっては、それがワクチンによるものなのか自然感染によるものなのか(発病の疑い)の判断が難しいものもありますが。副作用によるリスクをできるだけ軽減・回避するためには、・どんなに忙しい方でなかなか病院に行く時間が取れないとしても、少しでもペットの体調に気になるところがあれば打たない。・できるだけ午前中など来院数があまり多くない時間帯を選び(ペットが待合室などで無用に興奮するのを避けるため)、接種後万が一何か異常を発見してもすぐに病院に連絡を取って対処してもらえるようにしておく。・接種後はまっすぐ帰宅して、ワクチンを打った上に慣れない病院で疲れているペットを十分に休ませ、2~3日は安静にして何か異常がないかをよく観察する。 午前中にワクチンを打って、その日の夜になって体調が悪いと連絡をもらう事がありますが、ワクチンの後ペットを連れたまま買い物に行ったり、どこかに一緒に出かけているケースがよくあります。・ワクチンの副作用の主な原因は抗原そのものよりも溶液中に含まれるその他の成分に由来するものが多いという事もわかってきているので、もしも過去に、ワクチンで何かしら副作用が起こった経験がある子の場合は、ワクチンの証明書を参考にして同じメーカーのワクチンを打たない。 (メーカーごとにワクチンの溶液が違うので、溶液由来の副作用を回避できる可能性があるため)という事も大切だと思います。ワクチンを打っていても、ウィルスには「感染」します。ただ、免疫力が強化されているためにウィルスが増殖できず、「発病」しないまま身体が駆除しているだけです。なので、ワクチンを打っていても体調不良だったり、思ったほど免疫力を確保できていなかったりすると、感染したウィルスの増殖を許してしまい、発病する可能性があります。ワクチンは決してウィルスを寄せ付けないバリアーではないという事です。
Sep 19, 2005
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外はとんでもない暴風雨です。さすがにこんな日に「子供は風の子」なんて とは思いましたが。。「子供は風の子」私が小学生の頃、九州という地理的な条件もあるでしょうが、冬でも半袖半ズボンで外で遊びまわる友達ばかりでした。ところが今は、冬場に外出するとしても当時では考えられないようなお洒落な防寒着を着て、しかも遊ぶのは家の中でコンピューターゲームがほとんどですね。私は学生時代、寄生虫学の研究室で人獣共通寄生虫症の研究をしていました。その頃、藤田浩一郎先生と懇意にさせていただいていた事もあって、先生の著書「笑う回虫」や「空飛ぶ寄生虫」などなど、出版された時には全て読ませて頂きました。かなりユニークな説を展開されていますが、一つ一つ納得できる点もあります。著書の中で、回虫が感染していると、免疫抗体であるIgEがたくさん産出されますが、それらは全て、ターゲットになる回虫に対して攻撃をしようとするわけですが、ところが攻撃対象の回虫がいないと、産出されたIgEは別の物-スギ花粉などに対して働くようになって、花粉症という症状になってしまう。とお話されてます。榎本雅夫先生はまた、「IgE抗体は、回虫に悩まされ続けた数万年にも及ぶ人類の長い歴史のなかで、そもそもが回虫を攻撃するために、身体のなかに作り上げてきた物質のひとつかも知れません。このように回虫をやっつけるために使われてきたIgE抗体でしたが、衛生環境が整った現代に、回虫は私たちの身体からいなくなってしまった。そしてIgE抗体は、スギ花粉などの、人間の身体に悪い影響を与えない物質を、敵だと誤認してくっつくようになってしまい、免疫システムが暴走して花粉症を起こしているのかも知れないのです」 とおっしゃっています。しかし一方で花粉症にかかっている人の中で、回虫にも感染している人もいますから「花粉症の治療には回虫に感染すればいい」と簡単な話ではなさそうです。ひところ大きな社会問題になったO-157についても、「O-157は日本、米国、イギリスなど先進国しか発生していない。除菌指向がこうじて、なんでもない細菌にもひ弱になった」 「日本人は清潔志向が行き過ぎた。身の回りの大切な菌まで殺してきた。抗菌グッズ、抗生物質の乱用、殺菌剤の多用、そして寄生虫を排除したことでアレルギーが多くなり、O-157も出てきた。越生で起きたクリプトスポリジウムが水道水に入って集団下痢が発生したが、こうした菌はこれまでなんともない菌だった」と。また、O-157感染に対しても、「ばい菌というとみな悪いもので、全て抗菌処理しなければ物が売れないようになってしまった。O-157は清潔志向が行き過ぎた国、日本、米国、イギリス、ドイツ、ノルウェーといった先進国しか発生していない。O-157は非常に弱い菌、無菌状態のところで運ばれる。汚いところでは発生しない」と、清潔志向が逆に裏目に出ていることを指摘されてます。「過ぎたるは及ばざるが如し」という事でしょうか。それよりも、極端な衛生管理が身体の免疫能力を必要としなくなって、身体が元々持っている免疫機能が逆に低下してしまう事態になるかも知れません。じゃあ回虫を日本中にばら撒こう! とか、そういう乱暴な話ではなく、回虫症はとても困った病気ですから、駆逐できて良かったと思ってます。しかし、衛生環境や医療の進歩の恩恵としてクリーンな環境を手にいれた代わりに、自然本来備わっていた自然治癒力が必要とされなくなって衰えてきてるのではないかと。そしてそれは親から子供へ、子供から孫へと世代を経るごとにそういう体質として最初から免疫力の低い世代を生み出す事になるのかも知れません。ましてや、人間に比べて世代交代のスパンが短いペット達の間では、すでにそうした兆候が見られているように思います。ペットも子供も、あらゆる環境ストレスから単に隔離するのではなく、できるだけ「強く逞しく」育てるにはどうすればいいか。私にとって最近最も関心の高い事柄でもあります。もっとも、今目の前でアトピーに悩まされている子をどうにかできるという事ではなくて、この子の子孫を逞しい子達にしたい、と言っているようなものですから、とても難しい話ですね。「子供は風の子」今日は寒いから家の中で遊びなさい と言うお母さんが増えてきた中で、せめてそれくらいは意識して外に放り出すくらいで良いのにな と思ったりします。さすがに今、外で荒れ狂う台風の中に放り出すわけにはいきませんが^^;最近の色んな未成年の事件や体罰問題を見るにつけ、風はなにも外で吹いているものばかりではなく、世間の風、厳しさ・居心地の悪さというものからも保護するばかりじゃなく、むしろ積極的に体験させておく必要があるように思います。程度の問題はありますが。今回は獣医の話じゃないですね^^;
Sep 6, 2005
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あの暑苦しい夏も峠を越して、随分と涼しくなってきました。冬支度にはまだ気が早いですが、今日はハムスターの冬眠のお話です。私が初めてハムスターの冬眠に遭遇したのは、ずっとずっと昔、まだ大学生だった頃でした。(当時は遭遇しただけで、それが冬眠だったと知ったのはずっと後ですが)クラブの後輩が夜中に泣きそうな声で電話を掛けてきて、「ハムスターが死にそう」と。ともかく後輩の家に駆けつけてみると、どうやら現場は隣に住む後輩の友達の家だそうで。見るとケージのオガクズの中でハムスターがぐったりとしたまま時々ぴくぴくと微かに動くだけでした。そっと手の平に乗せてみると、僅かに身動ぎはするものの全く元気がなく、手にとってはみたものの何をどうすればいいのか皆目見当もつかないまま、ただ優しく身体をさすってあげながら様子をみていました。するといきなり、その子がもそもそと動き出して、みるからに元気になったんですね。当人は訳もわからないままでしたがとにかく先輩としての面目躍如なわけです。その子の家を後にした鼻高々な私はそのまま酒場に繰り出して、勝手に祝杯をあげてその日は気持ちよく寝たのを覚えています。ところが私が帰った後、再びハムスターの様子がおかしくなって今度は病院の研究室の別の先輩を頼って診てもらったそうですが、聴診したところ心音が弱っているという事でアトロピンを打った途端に死んでしまったそうです。あとでその病理研の人に聞いたところでは、ハムスターは体も小さいし0.05mlしか打ってないと。今でこそそれでもさらに打つ量のケタが一桁違うだろ!とツッコミも入れれますが当時はそういう事すらわからなかったんです。今思えば、私の掌の上で一時的にしろ回復したようにみえたのは私の体温で身体が温められて冬眠状態から覚めかけたからなんですね。それがまたケージに戻って、冬場の部屋の寒さで体温を奪われて冬眠状態に戻ってしまったんでしょう。現在でもたまに、冬場になると小学生くらいの子がハムスターを抱えて駆け込んでくる事があります。もちろん冬眠ではなく、他の病気の事もありますが大抵の場合、冬眠状態にあった子は家ではぐったりとしていたのが病院にくるとちょこまかと動き回ったりするので、診察中に異常が見られない場合はケージの温度できれば18℃以上を保てるように暖房対策をするように説明して様子を見て貰います。(またしても説明だけで、治療費がいただけませんね)もちろん、ハムスターのように誰かに食べられる立場の動物は本能的に、緊張や危険を感じると必要以上に元気な素振りを見せる事があるので、病院で元気だったからといって安心はできません。ただし冬眠だった場合は、十分な温度を保っていれば2~3時間もすれば元気に動き始めるので、様子をみる目安としては異常に気がついて温め始めてから3時間程度と思っていただければ良いと思います。もしも室温が10℃を切って完全な冬眠状態に入ってしまったら、その子の寿命を著しく縮める事にもなりますし第一、場合によっては冬眠から覚めないまま死ぬ事もあるため、飼い方には注意が必要です。
Sep 3, 2005
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昔から良く言われる言葉ですね。ここでは人間ではなく、ペットのお話。以前「痛そう」がイタイでも似たような話をしましたが、今回はもう少し突っ込んだお話です。ただし、きちんとした科学的検証がなされているわけではない部分もありますので、念のため。人医学でも獣医学でも、最近の流れとしてはこれまでの西洋医学に代表される対症療法から、徐々に自然治癒力を高める東洋医学的な考え方が主流になりつつあります。西洋医学には即効性という心強い効果がある代わりに、副作用という怖い代償も付きまといます。東洋医学では緊急性の高い病気では手遅れになる恐れがありますが、時間をかけて体質を改善することで自然本来の治ろうとする力を惹き出して治すので、副作用はありません。最近ではこの一長一短の治療方法を上手く組み合わせる事で、よりリスクの少ない治療方法が盛んに研究されています。いわゆる、身体が自動的に正常な状態で平衡を保とうとする、ヤジロベイのようなしくみを恒常性(ホメオスタシス)と言いますが、自然治癒力が高まるとこのホメオスタシスの機能がより活発に働く事で、身体の不調な部分を正常に戻そうとする働きが生まれます。自然治癒力やホメオスタシスの働き方には、その人の心の動きやストレスの程度、食生活に生活習慣などなど、様々な要因が影響しています。特に心が落ち込んでいたり、ネガティブな状態では自然治癒力は上手く働きません。この辺が「病は気から」と言われる所以でもあります。「常にプラス思考」でいる事がとても大切なんですね。さらには、思いついたことを後回しにせずその場で行動に移すという「ひらめきの行動」を心がける事も、この自然治癒力を高める働きがあります。動物が怪我しても勝手に治るというイメージがある理由の一つは、この「ひらめきの行動」が彼らの基本的な行動パターンなので、人間よりも自然治癒力が働きやすい状態にあるからだと思います。さてペットの場合、嬉しい時、得意になってる時、怖い時、心配してる時、拗ねてる時など、確かに心の動きがあります。がしかし、私はそれ以上に、ペットが外から受ける日々のストレスに気をつけて欲しいと思ってます。それは、例えば何か調子が悪い時は、病気そのものだったり、入院させられてたり、病院通いだったり(またしても獣医としてこれで良いのか・・・)とにかく様々なストレスが、病気が治るのを妨げる要因になってしまうんですね。病気じゃない時、普段の生活の中でもこの子達の周りにはたくさんのストレスが存在していて、この子達の体調をおかしくさせてしまう可能性があります。それは生活環境によるものもあるでしょう。そしてその中には、密室空間で常に受け続ける飼い主さんの心の動き、心の波動もストレスになってしまうんです。前にも少しお話しましたが、この子達は常に、ご主人の様子に見えないアンテナを張り巡らせています。飼い主さんの心の動きにとても敏感に反応します。例えば、飼い主さんに赤ちゃんができて、そっちにかかりっきりになって、これまでの飼い主さんの意識がペットに向かなくなった途端に色んな体調不良を起こし始めたりとか。似たような話はいくつも聞くと思います。そればかりじゃなく、毎晩毎晩、仕事から帰ってきては飼い主さんの愚痴を聞かされてたりとか。飼い主さんの精神状態が落ち着いていないと、その波動=雰囲気がそのままストレスとなってこの子達にふりかかってくるわけです。飼い主さんのネガティブな波動がそのまま、この子達になんとなく居心地が悪いと思わせてしまうのか、自然治癒力の発揮にブレーキをかけてしまうんですね。ではどうすれば良いのか?飼い主さん自身が、自分自身のために常に「プラス思考」でいる事、自然治癒力を高める効果があると言われている「ひらめきの行動」を心がける事が、一番だと思います。ペットにとって世界で一番影響力を持つ飼い主さんが普段から「病は気から」を遠ざけて常に前向きな姿勢でいられるなら、少なくともその子が余計な病気にかかってしまう確率は、飼い主さんが落ち込んでいるよりはうんと低くなると思っています。人もペットも「病は気から」。そうそう。夫婦喧嘩の耐えない家庭というのも、かなりのストレスを与えますのでご注意を。
Aug 24, 2005
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なぜ3歳か?というと犬の場合は3歳ともなれば立派な成犬だろうという、それだけのタイトルです。別に5歳からでも10歳から始めてもらっても構いません。ただし、成犬の社会化訓練には、仔犬の時期に比べるとそれはそれは長い期間がかかりますし、完璧に社交的な子に変える事はほとんどの場合無理なので、訓練を始めた時点から生涯続くと思って下さい。落第点の子には、目指せ60点!の精神でのんびりやりましょう。社交的能力が上手く育っていない子では、特に散歩中にすれ違う人や犬に対して過剰に反応する傾向が見られます。言い方を変えれば、自分のテリトリー(家や飼い主さん)への依存心が極端に強く、外部環境に対しての適応力がないという事です。こういう子達の再訓練には、脱感作療法という手法を取り入れるのが、ワンちゃんに対して最もストレスがなく、何かしらの成果が期待できると思います。これは外部からの刺激をストレスを感じない程度、刺激があるのかどうかすらわからない程度から与え続けて、反応を見ながら長期間をかけて徐々に強くしていくことで、刺激に慣れさせてしまうというアレルギー治療などで用いられる手法です。ただし、効果が現れるまでには飼い主さんの大変な忍耐と時間を必要としますが。また、犬種によっては、元来他人との付き合いが下手な子もいます。例えば柴犬などは、元々が家族の中でも特にご主人様にしか気を許さない性質に育てられた犬種ですから元々社交的な能力は苦手とする子が多いです。さてこれから紹介する手順は、この脱感作療法という手法を取り入れた、一つのパターンです。もちろん、ご家庭の環境事情(一戸建てかマンションか、など)やワンちゃんの性格などで取り組み方に違いがありますが、どのような環境にしろ、要点は・無理強い(と感じさせてしまう行為)はしない・数ヶ月、場合によっては数年かけて、徐々に外部環境に慣らす・訓練以外の時間、訓練と同じ手法に拠らない方法でワンちゃんを外部環境に曝さない (抱き癖のあるワンちゃんの場合、抱っこしなければできないようなら散歩はしない) 抱き癖については、子犬の頃の社会化訓練の必要性から抱っこしてでも外に出すべき という意見もありますが、成犬には当てはまらないと思っています。・絶対に新しい刺激に「思い切って」チャレンジしない・1回の訓練時間は30分~1時間以内・リードをつけて行う・ワンちゃんよりもまず、飼い主さん自身がリラックスできる状況で行う・訓練中、ワンちゃんに不必要に声を掛けない・1回の訓練の終了は、必ず思いっきり誉めてあげる事(ご褒美も可)で終わるという事でしょうか。第一段階 家の外に出れない子(一戸建て住宅の場合)・玄関を出て、通りに面した位置に飼い主さん用のイスなどを用意する。 家庭菜園・ガーデニングなどの趣味がある方は、普段お世話をしている植物などをイスの代わりに。・玄関のドアは開けたままで、ワンちゃんが気分次第で玄関に入ったり、 飼い主さんの傍でくつろいだりできるように、飼い主さんが見える位置に繋いでおく・30分~1時間程度、お茶を飲んだり読書をしたり、植物のお世話をしたりご近所さんとお喋りしたり 飼い主さんが「外で」ゆったりとリラックスできる時間を作り、その空間にワンちゃんを同居させる・できるだけ飼い主さん自身も、道行く人々に対して特に反応はせず、 例えばワンちゃんが吼えてもたしなめたり声をかけたり一切しない(何をしているのか聞かれたり必要があれば、ご近所さんには説明して理解を得る必要があるかも知れません)・時間終了間際に初めてワンちゃんに声をかけて、そのままそこでブラッシングしてあげたり 遊んだりご褒美を与えたり、とにかく誉めてあげて気持ちが良いまま家に戻る・これを散歩の代わりに毎日の日課にする・いずれワンちゃんが、道行く人に対して特に過剰な反応を示さなくなって 玄関から出て常に飼い主さんの近くで終始くつろげるようになったら、ようやく次の段階へ第二段階 人や犬を怖がる子・マンションなど、玄関先という空間のない住宅環境の場合はここから(人を怖がる)・自分で歩ける子なら、あまり騒々しくないルート(できればどこかから犬の気配がする道)を選んで、 すぐに抱っこを要求してくるような子はキャリーケースに入れるなどして最寄の公園へ行く (なるべく抱っこしない・嫌がる子を無理に引っ張らない)・時間帯はできれば平日の午前中など、最初の頃はあまり人が多くない時間を選ぶ・公園についたら、隅のほうでベンチに座って、ワンちゃんを足元でくつろげるように 10分~30分程度(散歩の時間も合わせて30分~1時間)・もしも見知らぬ人が目の前を通るような時、ワンちゃんに向かって「誰か来たねぇ、誰だろ?」 などと優しく声をかけ続ける・ワンちゃんが唸ったり過剰な反応を示す時には「ダメ」と一言短く声をかけたあと、 自分に注意を向けさせつつオスワリをさせる・きちんと飼い主さんに集中してオスワリができたらすかさずご褒美をあげる・目の前を通る人に対して、唸ったり、過剰な反応を示さずおとなしくしていられたら すかさずご褒美を与えて大げさに誉める・見知らぬ人の役目を、それこそワンちゃんにとって見知らぬ人に頼んでやってもらうのも良い その場合は、目の前をわざと通り過ぎてもらい、通り過ぎる瞬間にご褒美を足元に落としてもらう・公園や道行く人よりも、飼い主さん(のポケットの中身?)に注意を向けていられるようになるか そこまでいかなくても、あまり過剰な反応を示さなくなれば及第点・人の多い時間帯でもあまり気にせずにくつろいでいられるようになれば大成功(犬を怖がる)・公園やドッグランなど、犬が集まる場所へ連れて行く・予め、そこで犬を遊ばせている飼い主さん達に、これから当分の間社会化訓練をさせたい 旨を伝えて協力と理解を求めておくとなお良い そうしたコミュニケーションをとる事で、さらに様々な情報を得る機会にもなる・最初は遠くの方で犬達が遊んでいるのを眺める程度の距離から始める・恐らく、始終他所の犬達を気にするが、その度に名前を呼んでこちらを向かせ 向いたらすかさず大げさに誉めてご褒美をあげる・ワンちゃんが他所の犬に対して神経質さが薄れて来たと感じるまで、できれば毎日続ける・おおよその目安で、1~2週間したら次は毎日少しずつ距離を近めていく・すぐ傍まで近寄るまでに、そこの常連さん達をよく観察して、犬の大小に関係なく 大人しくて落ち着いたワンちゃんの傍を居場所に選ぶ はしゃぐ子や仔犬の傍は選ばない・他のワンちゃんが近寄って来たら、飼い主さんがまずその子と親しくなるように (飼い主さんに警戒心があると、ワンちゃんは敏感に感じ取ります)・最初は当然吼えたり唸ったりするが、最初だから仕方がないとあまり気にしないように 他のワンちゃんや飼い主さんとの交流を素で楽しめれば問題ない・犬同士の挨拶で、ワンちゃんがお尻の臭いを嗅ぐのを許したり、他の子のお尻の臭いを嗅いだりする 動作が見られたら「○○良い子だね~」とその都度誉めてあげる (唸っている時は誉めない・声もかけない)・もしもより噛もうとしたり攻撃的な姿勢を見せたら、すかさずリードを軽く引いて首に緊張を与え、 「ダメ」と一言かけてからこちらを向かせてオスワリをさせる・その後他の子を気にする度に名前を呼んで、飼い主さんに注意を向けたらご褒美を与える を繰り返す・完全に気を許して一緒にはしゃぎ回る事はなくても、他の子との挨拶ができるようになれば及第点・飼い主さんの後ろに隠れる事も抱っこを要求する事もなく、平気でくつろいでいられるようになれば大成功他の、とてもフレンドリーな子と比べると恐らく落胆と不満が出てくると思いますが決して焦らず、訓練を始める前と比べた、その子の僅かな変化を喜んであげてください。最初にも書きましたが、社会化の訓練は生涯教育です。例えば仔犬の頃の社会化が上手くできていたとしても、その後の継続的な外部刺激がなければ、その能力は失われてしまうという研究結果もあります。言い換えれば、社会化のスタートで遅れている子でも、その後の上手な刺激の与え方次第である程度対応できる子になれる という事です。決して焦らない事。そして決して落胆しない事。焦って次々と刺激を強くしていくと、かえって状況は酷くなります。その子の性格や変化に合わせて、一日で一歩先に踏み出せなくても1ヶ月で一歩を踏み出せるように長い長い目で、のんびりと構えてあげて下さい。目指せ60点! です。
Aug 21, 2005
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仔犬や仔猫には、犬同士または猫同士、さらには人間とも上手に付き合っていくための適応能力を獲得をする時期「社会化期」があります。これはおおよそですが、生後1ヶ月前後くらいから始まり、生後4ヶ月くらいまで続くようです。最初は同じ仲間同士の付き合い方を学ぶ事から始まり、親兄弟の間でじゃれあいながら、少しずつ甘噛みの仕方だったり挨拶の仕方だったり、そういった事を覚えていくんですね。ところが、だいたいの家庭で仔犬や仔猫が貰われてくるのはほとんどが生後50日前後の頃で、この社会化訓練が不十分なままの子がとても多いのが現状です。さらには最近のマンションタイプの家庭で室内飼いされている子に特に多いんですが、家族以外の人間やその他の生き物を目にする機会が少ないために、この社会化の仕上げができないまま成長してしまう子がいます。そういう子は、例えばお散歩に出かけた時や誰かが家を訪ねてきた時など、極端に怖がりになったり、そのせいで無駄吠えが多くなったりします。お散歩なのに、いつも抱っこしてもらって実際に自分で歩く事が少なく、飼い主さんの腕の中という安全地帯にいる時しか他の人間や動物を見た事がないような子にも同じような事が起こることがあります。よく「この子は怖がりで・・」という事をおっしゃる飼い主さんがいますが、それはその子の性格から来るものではなく、飼い方・接し方からそういう風に育ててしまったんですね。これは最近の通説?になっている「2回目のワクチンが済むまでは外に出さないように」などの、私達獣医師による場合によっては時節に合わない指導も、その原因の一つになっているようです。確かにワクチンで予防できる病気は、仔犬・仔猫がかかるとほとんどが死に繋がる恐ろしい病気も入っていますし、特にネコの場合は未だ身近にたくさんの野良猫が存在していて、その間でこれらの怖い伝染病が毎年定期的に流行していますから、予防の意義は未だ高いと思ってます。犬に関しても、かなりの地域で毎年のように数件程度は伝染病の発生が確認されますが、昔と違って現在では、特に野良犬もほとんど見なくなった都市圏ではそういった伝染病の温床になる要素も少なく、流行の兆しがある、もしくは近くに時々マスメディアなどで取り沙汰されるような一部の不心得な繁殖業者がいて病原体の温床になっている可能性がある、等の特別な事情がない限りは、それほど厳密にする必要はないように思います。まあ、不特定の動物の往来が多い公園でのデビューは、やはり予防接種を済ませてからの方が良いと思いますが。犬の社会化訓練は同居ペットの有無や人の出入りなど、その家庭の環境でも少なからず変わりますが、その一例として紹介しますと。仔犬の頃、最初は家の前などで遊ばせて、道行く人に可愛がってもらうようにします。知らない人でも可愛がってもらえる事を覚えさせると、人見知りしない子に育ってくれます。ただし、仔犬はとても疲れやすいので、時間は10~30分程度にします。もしも近所で、管理の行き届いたトレーニングスクールなどがあれば相談の上、他の犬や飼い主さんとの触れ合いを目的に、見学として連れて行くのもいいでしょう。なぜ見学なのかと言うと、ここでもやはり、入学してコース通りの時間を受講すると、時間が長すぎて仔犬が疲れてしまうからです。最後に、外で遊ばせた後は家の中で、静かなところで十分に休ませてあげましょう。特に同種間での適応力は生後1ヶ月頃~3ヶ月くらいまでが最も高い時期でもあるので、その間にきちんと他の犬や猫と接している事は大変重要になってきます。
Aug 16, 2005
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昔飼ってたあやめさんという猫の話ですが。猫ってよく、部屋を飛び回る小さな虫とか見つけますよね。「お?」って感じでそれで、「ニャ、ニャ、ニャ」と短く小さく鳴きながらまずは目であとを追いかけて。虫がどこかに止まろうものなら、そこだけ凝視しつつそろーっと近寄ってハシッ。こういう光景はよく見かけるんですが、あやめさんと過ごした学生時代にはもう1パターン、深夜に限って見られる、彼女が「何かを見つけた」時の行動がありまして。最初は同じで「お?」(というより「ぎょっ」?)っと部屋の天井の隅あたりに視線を向けるんです。しかしそこからが違って。天井の隅の一点を凝視しつつそろーっと・・・座ってる私の膝の上まで移動してきて、毛を半ば逆立てながら丸くなって、あとはひたすら凝視・・・・私は背中に薄ら寒い感覚があったので、決してあやめさんの視線の先を見ないようにしてましたが、いったい彼女には何が見えてたんでしょうね。まぁ季節柄、こういうお話もたまには。
Aug 6, 2005
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ずいぶん前になりますが、健康な心臓のエコーのデータを集めるために、トリミングに来る健康な子達を対象にエコー検査させてもらった事があります。その時、検査前の聴診では心臓の雑音を認められない子でも、実際にエコー検査をしてみると心臓の弁膜の変性が起こっているケースが、時々見られました。中には、シャンプーに来た猫で肥大型心筋症という心臓の病気が見つかって、急遽シャンプーを取りやめて治療プログラムを開始した事もあります。心臓の雑音は、弁膜がきちんと閉じられていなかったりして、どこかで血液が正常ではない方向へ漏れている事を示しますが、歳をとってからの心雑音は弁膜が変性してきちんと閉じなくなる事で起こります。ところが、変性は起こっているものの弁と弁の隙間がなく、心臓の機能としては正常なケースが、特に6-8才頃の子に時々見られます。(中には奇跡的に、としか言いようのないほど弁の変形が進んでいながら血液の逆流がない子もいます)雑音がない=逆流がないわけですから、まだ心臓に対する負担はないか、あっても治療の必要なしと判断されるほど軽微なものが多く、言ってみれば潜在的な心臓病という状況です。ところが、こういう子がひどく興奮したり、麻酔などなんらかの重大なストレスにさらされた時、この奇跡的なタイミングで隙間なく閉じられていた弁の動きが乱れて血液の逆流が生じて、潜在的な心臓病が表に現れてしまう事があります。程度が酷い場合は急性心不全に陥る事もあります。普通、特に異常がないのに心臓のエコー検査をする事は稀なので、麻酔事故やその他の突然死にはこういうケースも含まれているのではないかと思います。老齢のペットに対する麻酔で、心不全と併せて注意しなければいけないのが腎臓の機能低下です。ここでのお話は、生憎と犬や猫でのデータを持ち合わせておらず、人間でのお話になりますが、腎臓の構造上同じ理屈だと思います。まず、腎臓は加齢と共に腎臓そのものの重量が軽くなっていきます。これは、腎臓の内容で加齢と共に失われていく部分がある事を示しています。血液をろ過する装置である糸球体という器官も、糸球体に流れこむ細動脈という血管が狭くなったりふさがったりするために働かなくなって徐々に失われていき、糸球体の数の減少に伴って尿を濃縮したり薄めたり、老廃物を排出する能力が低下します。しかし、年齢に伴う変化が生じても、体の要求に答えられるだけの腎機能は保たれるので、年齢とともに生じる変化は、それ自体が直接病気を引き起こすものではありません。しかしこうした変化によって、腎臓の予備力は確実に低下します。イメージとしては、若い時に10個の糸球体があったとして、それぞれが10%ずつ働けば全体として100%機能していたところを、加齢と共に糸球体の数が10個から5個、2個と減っていくに従って、それぞれが20%、50%分働かなくてはいけなくなるため、機能的に余裕がなくなると思っていただければ良いと思います。また、麻酔時には心臓の拍動は緩やかになって、血圧も下がる事が多いです。血圧低下作用の少ない麻酔薬もありますが、一般に麻酔時には程度の差はあっても血圧の低下が起こると思って良いでしょう。さらにそれが外科手術の場合は、出血のために当然低血圧になります。血圧が下がると、特に腎臓へ血液を運ぶ血管の血圧が下がりすぎると、下がった血圧を戻そうとして腎臓の血管が収縮するか、場合によっては閉じてしまうために、糸球体に流れ込む血液の量が減ってしまって、先にお話した、加齢と共に減っていく糸球体と同じ現象が極めて短時間で起こってしまいます。まだ腎臓に予備力があれば、現役の糸球体ががんばる事で腎機能を維持できるのですが、この予備力が不足している場合は、失われた機能を補うことができずに腎機能低下症ー腎不全という、病的な状態になってしまいます。通常、麻酔の前後の的確な検査・処置と術中のモニターと輸液での血圧維持でこの事態は避けられますが、老齢の場合は残念ながら必ずしも100%とは言えません。これは、他にも原因は考えられますがその子の臓器の予備力の低下も一因になっています。経験上、雌犬で特に一度も子供を産んだ事がない老犬に多い病気に子宮蓄膿症があります。(産んだことがあるから大丈夫、と言う事ではありません)もしも閉鎖性の子宮蓄膿症の場合は放っておくと死に至る病気ですが、問題の子宮を外科手術で取り除く事で完全に治癒します。しかし、多くの発症時期が老齢になってからである事から、これまでにお話したような麻酔の様々なストレスとさらには病気のストレスまでが加わって、実際には非常にリスクの高い手術になります。ですが、病気の経過が早く、発見からせいぜい3日程度の時間的余裕しかないために手術を強行するしかないので、説明を受けた飼い主さんの多くが大変な苦悩を強いられます。人や他の動物に比べて犬での子宮蓄膿症の発症率が高いことから、老後に麻酔をかけなければいけなくなるような事態を避けるリスク回避の意味で、特に子供を産ませる予定がない子には若いうちに避妊手術を勧めますが、きちんとした知識とイザという時の覚悟をもって、その子の生涯を通して飼い主さんに悔いのない飼い方をしてもらえるなら、無理に勧める事はありません。言うまでもなく、麻酔に対する十分な体制の整っていない病院での手術は、年齢を問わず論外だと思います。今回お話した「まだ病気ではない状態」は、麻酔に限らずどんな事がきっかけでそのバランスが破綻して病的状態になるかわからない部分があります。獣医療では一般に、何か異常がない限りエコーやレントゲンなど専門的な検査は行われていませんが、人間ドックのように、ある程度の年齢になったらより精密な検査を受ける機会があっても良いのではないかと思い、ペット用のドックのシステムというか、カリキュラムが組めないものかと考えています。
Aug 2, 2005
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ペットの歯石について、方々のサイトでも色々な意見が出されてますね。歯石除去は必要?麻酔のリスクと歯石が原因の病気のリスクはどっちが高い?大まかにこういう点で様々な意見が出されているように思います。時々、歯石除去と虫歯治療を混同してらっしゃる方がいますが、これは全く別の処置だと思っていただいたほうが良いですね。虫歯は虫歯菌と言われる口内細菌が繁殖する事で、歯のエナメル質を溶かしてしまう病気ですが歯石そのものは病気ではなく生理現象みたいなものです。犬も猫も人も、およそ物を食べる以上は必ず歯垢がつくわけですが、その歯垢が固まって歯石になると思っていただければ良いと思います。もっとも、犬や猫では口の中のpHが人間とは違うので虫歯菌が繁殖しにくく、いわゆる虫歯にはなりにくいとされています。しかし逆に、歯石は非常につきやすくもあります。では、歯石がつくとどうなるのか?歯垢が歯石となって歯にこびりつくと、その歯石と歯垢を温床にして口内細菌が繁殖します。元々口内細菌はいわゆる雑菌・ばい菌ですから、歯石が触れている歯ぐきの部分に炎症を引き起こします。歯肉炎の始まりですね。歯肉炎の程度によっては痛みがあるようですが、ごはんを食べれないほどではありませんし、まだ触らせてもくれます。さらに歯石がついて、歯全体を覆い隠すようになると、歯石でカバーされてしまった歯ぐきの部分には酸素が行き届かなくなり、嫌気性細菌が繁殖し始めます。嫌気性細菌はその名前の通り、通気を嫌いますからどんどん歯と歯ぐきの間奥深くに潜っていきます。こうなると歯と歯ぐきの間にポケット(歯周ポケット)ができて、そこにもさらに歯石がついていきます。そしてさらに細菌の繁殖と炎症が活発になります。まだごはんを食べれなくなるほどの痛みはありませんが、触られるのを嫌がります。しかし表面上は分厚く白味がかった歯石にすっぽりと覆われているため、中にはそれ自体が普通の歯だと勘違いされる飼い主さんもいて、なかなかに気がつきにくい段階です。歯周ポケットの奥深くで細菌の繁殖が活発になると、歯ぐきの奥、歯の根元の炎症が酷くなって化膿し始め、エナメル質に覆われていない歯根部分が徐々に溶けていきます。歯槽膿漏の始まりです。歯がぐらぐらしだして物が当たる度に鋭い痛みが走るのでごはんを上手く食べれなくなり、よだれが増えてきます。口臭が酷くなり、身体を舐めまわす事で身体全体から嫌な臭いがします。さらに酷くなると顎の骨まで溶け始め、神経などを伝って脳にまで障害を与える事もあります。また、大量のばい菌や膿が含まれたよだれを四六時中飲み込む事で腎臓や心臓など、様々な臓器に障害を与えるとも言われています。これが歯石が引き起こす病気(歯周病)のおおまかな流れですが、最後の段階に至るまでには相当に長い年月がかかります。場合によっては10数年かかる事もあるでしょう。なので、あまり病院に縁のない子だと、かなりの老齢になって初めてひどい歯槽膿漏になっている事に気がつく事もあります。ですが、こういった病状はとてもゆっくり進行するので病気に対する危機感は比較的薄いようです。むしろ歯の痛みでごはんを食べられなくなる事のほうが、ペットにとっても飼い主さんにとっても非常に大きなストレスになります。歯が完全に浮いてしまっていては薬ではどうにもなりませんから、人間と同じく、根治するには抜歯しかないので当然麻酔をかける事になりますが、当然ながら、痛くてごはんを食べられなくなる頃には相当に歳をとっているので、麻酔のリスクも格段に高くなってしまいます。私達人間も、歯のケアの重要性はよく判っていますから、歯のトラブルがある場合は迷わず歯科医にかかりますね。ペットも歯のケアの重要性は同じです。「昔は歯石なんかとらなかった」とおっしゃる方もいますが、その頃は人間も歯の治療を今のように積極的にやってはいませんでした。歯のトラブルとケアの重要性の増加は食生活の変化に大いに関係があるのですが、人間と同じ生活習慣を送り、同じように食生活が変化してきたペットにとっても、全く同じ事なんです。しかし、実際に歯の治療をする場合、人間なら「はい、口を大きく開けて」と言えばおとなしく開けていてくれますが、ペットの場合はそうはいきませんから、処置をする獣医師もペットも、無麻酔の治療には大きな危険とストレスがかかる事になります。なので局所麻酔では不十分な事が多く、全身麻酔を施すしかないわけですね。一方では、もともと病気の進行が10年とか、そういう長いスパンの話なので極論すれば「歯石があったくらいで明日死ぬ事はない」と言う事になりますから、ペットの歯の治療にはほとんどのケースでリスクの高い全身麻酔を使うしかない以上、どちらを優先すべきか?という疑問が生まれるんだと思います。ですが歯の治療をどうこう論じる前に、もっと大切な事があります。人間でも当たり前の事ですが、歯のトラブルは予防が一番大切なんですね。人間はこの予防に対する意識が定着してきていますから、ペットとは全く違う意味で一生歯医者にかからない方も大勢いらっしゃいます。ペットも同じで、意図しているかどうかに関わらず、歯石が付かないように気をつけていれば、虫歯がない分人間よりも予防しやすいんじゃないかと思います。ただし、この子達は自分で歯を磨く事はありませんから、飼い主さんが歯石予防を意識してあげる必要がありますね。今は歯石が付きにくいペットフードや専用の歯ブラシなど、様々なアイテムが売り出されています。ですが私は、うちの犬にもそういったものは使っていませんし、病院でも勧めたことはありません。もう一度言いますが、歯石は歯垢が固まったもので、一度固まった歯石を取るのは大変ですが、歯垢の段階ならタオルやティッシュペーパーなどでだいたいは簡単に拭い取る事ができます。テル(うちの犬)はラブラドール(大型犬)なので、小型犬とはちょっと勝手が違いますが、どの家庭にもある普通のタオルを真ん中くらいで1~2回硬結びしたものを使って「綱引き」遊びをしています。口を使った遊びを叱られる事なく思いっきりできるのは、犬にとってもストレスの発散にとても良いと(私は)思ってますし、タオルを噛む事で歯についた歯垢を自然に拭い取る事ができます。汚れてきたら結び目を解いて洗濯機で洗うだけですしね。ただし、綱引き遊びをしていると段々と興奮してくるので、やりすぎるとかなり「やんちゃ」な子になってしまうかも知れません。そこで、ちょっと興奮してきたなと思ったら一旦タオルを手放して、give(日本語だと「ちょうだい」?)と手を差し出し、テル自らタオルを渡すように促します。きちんと渡してくれたら頭を撫でながら「よし!」としばらく思いっきり誉めてあげます。そうやって少し興奮を冷ましてからもう一度綱引きを再開しますが、その日の気分でこれを何度か繰り返す事もあります。また、綱引きに限らず歯の手入れは毎日しなければいけない、と言うものではなく、せいぜい週に1回か2回で十分です。理想は、まだ仔犬・仔猫の時から、普段から口の中を触るように、触らせるように馴らしておく事も必要です。小さい頃なら、特に仔犬だと必ずといって良いほど甘噛みしてくると思いますが、その時に歯の1本1本を触るくらい徹底的に口の中をいじってあげると甘噛みの矯正も期待できますし、お利口に触らせてくれた時は必ず誉めるようにすると良いでしょう。そうしていつも口の中をチェックできるようになれば、それ自体が歯周病の予防にも繋がります。小型犬や猫の歯磨きでも、私はタオルを使います。少し湿らせたタオルの端で人差し指を包むようにして、頬と歯ぐきの間にその指を差し込んで歯ぐきをマッサージする感じでやると、大きく口を開けさせるよりも抵抗なく歯磨きできます。また、歯ブラシなどと違って飼い主さんの指だとガリガリ噛む事もないですし(飼い主さんとその子の関係にもよりますが・・)、力加減も自在なので歯ぐきを痛める事もありません。慣れないうちは、子供用歯磨き粉(バナナ味を好む子が多いようです)をほんの少しタオルにつけて磨いてあげると、美味しい味もするので喜ぶ子も多いです。ただし、猫の場合は歯磨き粉は逆に嫌う子が多いので、何もつけない方がいいですね。また、猫の場合は正面から向き合うのではなく後ろから頭を包み込むようにして、頭や顔を他の指や手の平で撫でながら人差し指だけでそっと歯ぐきをマッサージしてあげると、わりと嫌がらずにさせてくれます。(ちょっとでもしつこいと思ったらガブッときますけど・・)なかなか歯磨きができないなら、普段の食事やおやつで硬いものを与えて食べる事で歯磨きをさせるしかないでしょう。例えば骨付きの肉とか骨そのものとか、大き目のドライフード(トリーツ)とか。犬のおやつとして売られているレトルトの豚の骨などは、ものすごく柔らかくてボロボロと崩れてしまうものがありますが、そういう骨では歯磨きになりません。また、魚の骨も当然与えないようにしましょう。以前、魚の骨が食道にささって化膿した猫が来て、大手術になった事があります。私は、歯周病が酷い子には、その子の全身状態や年齢次第ですが全身麻酔下での処置をお勧めする事も当然あります。ですがそれ以上に、二度と歯石が付かないように、一度たりとも歯石除去などの歯科処置をしなくて済むように普段からの予防をお勧めしています。
Jul 11, 2005
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可愛がっていたペットが亡くなった時、私はよく、正直に全てを話すべきかどうかで悩みます。結果的に嘘もつきます。もちろん、医療過誤などは論外ですけど。4年前のある日の夜中、急患の電話で飛び起きました。2歳のビーグル犬が泡を吹いて痙攣しているので診てもらえないかという内容でした。私は10分で病院につきますとお話して、急いで連れてきてもらう事にしました。本当は車を飛ばせば5分で病院に着くのだけれど、それから病院の明かりをつけて、検査機器の電源を入れたりする時間を見てます。ところが私が病院に到着すると、その飼い主さんがすでに待っていて、どうやら病院の前から電話をされたようでした。問題のワンちゃんは、私が到着した時すでに亡くなっていました。たぶん、家からここまで、ずっとワンちゃんを抱えていたのでしょう。腕の中で愛犬の命が消えていくのをずっと感じていたのでしょう。到着した私を見るお母さんの表情が今でも忘れられません。蘇生処置を施してみましたが助けることはできず、「残念ですが・・」と。処置の間、初診の方だったので、比較的冷静だったお父さんからこれまでのいきさつ等を聞きながら、症状から予想できる病気や原因、重度のてんかんじゃないか?急に起こったと言うことは何か劇薬の中毒?まだ若いし先天的な心臓の病気はなかったのか?などなど。頭の中では様々な疑問が湧き出してきましたが、そういう事を今更くどくどと話すべきだろうかという思いも、同時にありました。科学的にきちんと原因を追求する事も、病理解剖などの方法もありますが、もしそれではっきりとした死因が判明したとして、例えばそれが薬物中毒であったら?ワクチン以外は病院に通った事もないとのことだったので、もしも健康診断を定期的に受けていたら発見できたかもしれない病気だったら?最後にお父さんから「原因は何かわかりますか?」と尋ねられた時、「はっきりした事は検査をしてないので判りませんが、恐らくは突然死だと思います。原因としては先天性の心臓病とか、発病するまでなかなか判らない病気が多くてほとんどは避けられません」と説明しました。突然死というのはあくまで結果であって、病因ではないという事は承知しながら、その飼い主さんには何でもいいから専門的な言葉が必要ではないかと。検査も何もやってないわけですから私の中では嘘の診断なわけで、それで納得して頂けたかはわかりません。何もしてあげれなかった私には、せめて誰のせいでもない、この子の持って生まれた運命だったと。悲しみは拭えないけれど、せめて自分を責めたり、他の誰かを責めたりしていつまでも負の感情に囚われることがない事を祈りつつお伝えしました。それが正しい事だったのか、今後もそれで良いのか。次にまた新しい家族を迎えた時のためにも、もしもこうしていれば避けられたかも知れないだとか、そういう事を含めて自分が感じた疑問を全てあの場で言うべきだったのか。。。あるハムスターのお話。他所の病院で皮膚病の治療を受けていた子が、かえって症状が酷くなったとの事で通院・治療を受けていました。前にお話した方法でみるみるうちに良くなっていって、飼い主さんも私もとても喜んでいた矢先の事でした。その飼い主さんが泣きはらした顔で朝一番に来られて、キャリー用のケースにはすでに冷たくなったその子が入っていました。ようやく皮膚病も治りかけていたのに。ご飯も良く食べて、とっても元気だったのに。昨日は手に噛み付いてくるくらい、昔のやんちゃが戻って嬉しいやら困ったやらって話をしていたのに。もしかして貰ったお薬(抗生剤)が良くなかったのでは・・私は許可を得て冷たくなったその子を撫でながら、飼い主さんが泣きながら話されるのを聞いていました。多分、噛み付かれた時に強く振るか、床に落とすかしたんでしょうね。私にはどうしても「首の骨が折れてますよ」とは言えませんでした。かといって、涙交じりに独白する飼い主さんに対して適当な言い訳をするわけにもいかず、病院をあとにする彼女に対して、ただ黙って頭を下げるだけでした。私は職業柄、どうしても死に直面する機会が多くなります。毎回そういう場面に遭遇した時、飼い主さんのように大きなダメージを受けていては次の診察にも響きます。だからというのではありませんが、どんどん死そのものに対して麻痺していく気がします。全てを背負い込んでしまって参ってしまうわけにはいきませんから、きちんと整理する必要はあります。けれど、死に対して麻痺してしまってはいけないと思い、自戒の意味で今回の記事です。ほとんどの獣医さんが、病気が治った子よりも助からなかった子の事を良く覚えてると答えるでしょう。ペットロスではないけれど、関わったペットの死というものは、獣医師にも少なからず衝撃を与え、いつまでも消えないのだと思います。
Jul 3, 2005
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毎年この時期になると、熱中症になったり、心臓病を患ってる子の症状が酷くなったり、暑さが原因の病気が増えてきます。中には散歩中に熱くなったアスファルトやコンクリートの上を歩いていて、足の裏を火傷したり。夕方になって陽も沈み、少し風が出てきて涼しくなったと思っても油断は禁物です。私達人間の頭の位置では随分と涼しく感じられても、日中温め続けられた地面付近の温度は、真夏ともなれば夜8時を過ぎてもまだ蒸し暑い事もあります。暑い時、ワンちゃん達が口を大きく開けて舌をだら~んと伸ばして「はっはっは」と短い呼吸をしている光景を、よく見かけると思います。私達人間と違って、イヌの汗腺はあまり発達していないために、身体の表面から熱を放出する事は得意ではないので、代わりに口から熱を放散しながら、同時に冷たい空気を吸い込んで気管や肺を流れる血液を冷やして、冷えた血液を身体にいきわたらせる事で熱を冷ましているんですね。ところが散歩の時、日中のまだ陽が高い時間は論外ですが、陽が沈んでからもまだ地面に近いところの空気はとても熱いので、私達には涼しい時間帯でも、ワンちゃんの背丈ではまだまだ熱い空気を吸う羽目になります。そうなると、呼吸で熱を冷ますはずが体温よりも熱い空気を吸うためにかえって体温が上がってしまったり。飼い主さんは涼しい顔をしてるのに、ワンちゃんはいつまでたっても「はっはっは」と。稀なケースですが、夜の散歩で熱中症になってしまったりする事もあります。夏場の、とくに夕方のお散歩に出かける時は、家から出たらまず、地面に触ってみて地面が熱すぎないかと、ワンちゃん達の背丈付近の暑さをチェックして、まだまだ暑い時はもう少し時間帯をずらすなどしてみてください。また、それだけでは暑さをしのげない事も多いですから、人間用の頭に巻くタイプのアイスノンなどがあれば、それをワンちゃんの胸あたりにくるように首からぶら下げてあげると、胸の空気やその周辺の血液を冷やしてあげれるので、随分と楽になると思います。大きな子であれば、アイスノンではなく500mlのペットボトルに水を入れて凍らせた物を、タオルに包んでからぶら下げてあげても良いです。胴付のリードを使っているなら、ぶら下げるのではなく、胸の位置のベルトの間に挟むことで直接胸を冷やしてあげる事もできます。あとは必ず飲み水を携帯して、時々冷たいお水を飲ませてあげるようにすると良いでしょう。散歩から帰ったら、ワンちゃんが足の裏を気にして舐めていないか、もし舐めていたら指の間が低温火傷を起こしていたり小さな傷や小石や草の実などが挟まっている事があるので、冷たい水でよく絞ったタオルなど使って拭いてあげると良いです。ずっと舐め続けていると、舐性炎という舐すぎが原因の皮膚炎を起こす事があるので、指の間などが真っ赤になっているのに気がついたら、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。一番良いのは、夜の散歩をなるべく避けて、朝まだ陽が昇りきらない涼しい時間に散歩するのが良いですけどね。
Jun 25, 2005
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メシマコブという名前を耳にした事はあるでしょうか?元は長崎県男女群島の女島(めしま)の桑の木に生育するタバコウロコタケ科のキノコだそうです。(6/19追記)このキノコから抽出した成分に自己免疫能力を高める効果があると言うことで、数年前から抗癌治療の代替療法などで注目をあつめている健康食品ですが、3~4年前から獣医療の間でも使われ始めています。癌だけでなく、私自身の経験ではネコの糖尿病で、特にインシュリン治療でのコントロールの難しいケースで、中にはメシマコブだけで状態を維持できるようになった子もいますし、エイズやFIPの子で症状の改善がはっきりと見られた子もいました。現在はたくさんの症例検討もなされていて、いわゆる「民間療法」とは一線を画す治療法になってきています。民間療法に科学的な検証が加えられてさらに信憑性が増してきた、と言い換えたほうが良いかも知れません。さらには最近では、このメシマコブに加えて核酸というDNAやRNAの素を使った治療法の報告も見られるようになってきました。元々はどちらも人間用の栄養補助食品であり(核酸については海外ではすでに医薬品として認可されている国もあります)、この10数年来治療を受けてきた人たちの間から、自分に良かったのでペットに与えてみたところ、色んな症状の改善に効果があったという、飼い主サイドからの多数の情報が元になって研究されはじめたものです。どうやら核酸には、小腸の新陳代謝を促進して消化吸収を促進するという作用があるらしく、メシマコブと併用すればその有効成分をもっと有効に吸収させる事ができそうです。元々核酸というのは、どんな食べ物にも細胞が存在する以上はその中に細胞核があるわけで、バランスの良い食事をしていれば自然に摂取しているはずの成分です。普段の食事からきちんと核酸を摂取できている人やペットには逆に、この核酸療法はあまり効果を示さないかも知れません。元々足りているわけですから、そりゃそうですね。それでもこの核酸療法を使って、例えばFIPやエイズのネコの80%以上に改善が認められたという報告もあります。しかし一方で、核酸によって活性化された臓器が活発に活動し始めるために一時的にウンチが柔らかくなったり、アレルギー症状が酷くなったりといった好転反応と呼ばれる症状もあって、不用意に使用するとそうした症状に戸惑ってしまう事もあるようです。それ以外では、いわゆる化学薬品ではありませんから、特に副作用の心配はないようです。特にネコのFIP(ネコ伝染性腹膜炎)・FeLV(ネコ白血病)・FIV(ネコエイズ)では一度かかってしまうと根治は難しく、これらの代替療法でも「治す」事はできませんが、その子本来の免疫力や自然治癒力を引き出す事で病気を押さえ込んだり、Q.O.L(Quality of Life:生活の質)の向上を図ることで普段の生活で出来る限りストレスがないようにする事は可能です。「動物臨床栄養研究所」ではヌクレオエンジェルという動物向けの核酸栄養食品やメシマコブを使った症例の情報が詳しく載っています。その他にもメシマコブはともかく、核酸を特に多く含む食品として、ブタの肝臓・魚類の白子・ビール酵母・のり・はまぐり・牡蠣・大豆・いりこ・さば・いわし・ちりめんじゃこ などがあるようですから、例えば普段与えているペットフードの1/3をおからに代えて、いりこなどをひとつまみトッピングとか、そういうひと手間をかけて毎日与えれるなら、アレルギーの問題がなければそれでも良いのかも知れませんね。ただし、健康な子の健康維持ならともかく、病気の改善目的ならかなり思い切った量が必要なようで、核酸を抽出したサプリメントが必要になると思います。サプリメントですから基本的にどんな子に与えても差し支えはないと思いますが、もしも今何かの病気で投薬を続けている子に与えるとしたら、好転反応の事もありますし念のためにかかりつけの獣医さんに相談して、双方の理解の上で試したほうが良いでしょう。(6/19追記)※好転反応とは?好転反応は、もともと東洋医学の言葉ですが、症状が改善していく上での一段階であり、一時的なものです。体内の細胞が活性化されたことによって起こります。からだの自然治癒力が高まり、症状が快方へ向かう際にからだの中に蓄積されていた老廃物や毒素が一気に体外に排出されるために起こる現象で、アレルギーの場合は細胞活性の高まりと共に一時的にヒスタミンの分泌量が増えてかゆみが増すなど、症状が一見悪化したように見えます。また、腎臓病の場合に血尿が出たり、腸の悪い子では下痢や血便が出たりすることもありますが、いずれも一過性のもので、好転反応が治まるとその後一気に回復に向かうことが多いです。(好転反応が見られる時は、反応の程度を抑えるためにしばらくは少ない量を与えます)アレルギー等、体質改善を必要とする病気の場合は、特に強い意志を持って継続することが重要です。
Jun 18, 2005
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ちょっと今回は趣向を変えてハムスターのお話。ハムスターの治療をする時、特に湿性の皮膚病の時などは診察の大半が飼い方の説明で終わります。良い飼い方というよりも、皮膚病の時に注意する事。といった感じでしょうか。そして、特殊な細菌感染やアレルギーによる皮膚病でない限りは、薬とか使わずに飼い方を変えて頂くだけでみるみると良くなる事が多いですね。ハムスターの湿性皮膚炎の場合はほとんどが細菌感染が症状を重くしていますが、細菌自体はいわゆる一般細菌であることが多く、衛生管理だけでも効果を出せる事があるからです。逆にどんな投薬治療を行っても、衛生管理がしっかりしていなければ、一度治まったとしてもすぐに再発してしまう事があります。これを繰り返すと、いずれ耐性菌の出現を促してしまい、難治性皮膚炎になってしまう可能性もあります。要はいかに細菌の繁殖を抑えるかがカギになるわけですが、これには薬剤のみに頼った方法では限界があるということです。だいたい、現在日本で好んで飼育されているのは第一位がジャンガリアン・ハムスター、次にゴールデン・ハムスターでしょうか?少なくとも私が診察する上ではこの2種類が最も多いようです。実はジャンガリアンではなく、キャンベルハムスターだったりする子もいるかもですが、判別はほとんど不可能で、一般にキャンベルのほうが体毛の色が薄めで性格は多少荒いそうですがそれにも個体差がありますし、特に飼い方などに大きな差もないので気にしない事にしています。(また、獣医師としてそれで良いのかと自問自答・・)ゴールデンハムスターは、元々は今政情不安定な中近東あたりの出身で、ジャンガリアンハムスターやキャンベルハムスターはアジア内陸部の、わりと標高が高い地域に分布していたそうです。どちらも乾燥した風土・気候に合わせて進化してきた種族なんですね。なので、基本的には「ハムスターは湿気を嫌い(弱い)乾燥に強い動物」なんです。(だからと言って、2~3日飲み水を切らしてても大丈夫!という事ではないですよ)また彼らは元々、穴を掘って温度や湿度の変化が少ない涼しい所で暮らしていましたから、決して暑さに強いわけでもないです。むしろ、温度変化にも極端に弱い動物ですね。暑い真夏日には簡単に熱中症になりますし、寒い冬場には低体温症になったり冬眠してしまったりもします。冬眠してしまう限界温度は4~5℃だそうで、室温が10℃を下回ると極端に動きが鈍くなります。最適な室温は18℃~26℃と言われていて、真夏日などに室温が34℃を超えるような場合は、例えそれが短時間であっても熱中症にかかってしまう恐れがあるそうです。また、野生のハムスターの巣穴はトイレの部屋、餌の貯蔵庫、寝室等、用途ごとにたくさんの部屋に分かれていてとても清潔にできています。なので、元々清潔好きな動物なんですね。これでだいたい、ハムスターにとっての理想の環境というものが見えてくると思います。湿気がなくて、暑くもなく寒くもない清潔な環境 という事ですね。加えて言えば環境の明暗サイクルにも敏感で、夜中遅くまでいつも明るかったり、昼間寝てるとは言っても四六時中薄暗いところだとストレスが溜まってしまうそうです。皮膚病で診察を受けに来られる方には、いつも普段飼育しているケージを持参してもらってますが、ほとんどの場合はこの湿気と清潔という項目でひっかかります。人間の目から見ると湿気もなくきれいにしているようで(だいたい、病院に持ってくる前にお掃除していらっしゃるようですが)、ハムスターの目(になったつもり)でみると「じめじめして汚い」環境になっている事が多いんですね。そして、肝心のハムスターの皮膚病の様子がじっとりとしていて赤くただれている場合など、ますます湿気はご法度という事になります。まずケージですが、全面プラスチック製のものならあまり背が高くなく、脱出防止用に上面に網をかけてあれば、あとは風通しの良いところに置くなどして湿度と温度に気をつけてもらえば大丈夫だと思います。湿度管理と言う点では、理想は横面が金網状のケージが良いのですが、これにはまた別の問題があって、金網を齧ることで歯を痛めてしまったり、間に足を挟んでケガをする事もあります。最近のハムスター用のケージでは、安全対策にも気を配っている物も多くみられるので、もしも新しく購入されるならハムスター専用の、平屋構造?で、取り出し口が上面についていてしっかりとロックができるもの、金網の接合がしっかりしている物、床面はプラスチック製で巣材の飛散をある程度抑えれる構造になっていて且つ金網が敷かれていないものを選びます。次に巣材ですが、なるべく吸湿性の高いものを選びます。ウッドチップなどは材質によってはアレルギーを引き起こしたり、すでに皮膚病が酷い場合には炎症を起こしている部分をチクチクと刺激して、余計に症状が悪化する事もあります。一般的に松材や杉材は、アレルギーを起こす可能性があるので避けた方が良いそうです。また、牧草系の巣材はアレルギー性が低く、良質な巣材になるようです。他にも、最近ではトウモロコシの芯を使った巣材なども登場しているようですが、後述の理由で少なくとも湿性の皮膚病の場合にはあまり値段の張るものは避けた方が良いでしょう。古着など布製のものは、たぶん稀なケースだと思いますが、一度だけ歯に糸くずが引っかかっていて、本体の布切れがそれに繋がったまま頬袋の中に詰め込まれていた事があります。また、素材にもよるのでしょうが布切れは思ったほど吸湿性は高くないようです。では、何がいいのか?私が知る中で、安価で、刺激やアレルギーなどの問題が少なくて、優れた吸湿性を持つ巣材として湿性の皮膚病の子に勧めているのはキッチンペーパー(縦に裂けるもの)やトイレットペーパーです。もちろんこれも、長期的に使っていると材質に含まれている化学物質の影響も、ないとは言い切れませんが。今までにそういった中毒などのトラブルは経験していません。キッチンペーパーの場合は厚みもあり、程よいボリュームがあるために冬場などはトイレットペーパーよりも巣材として適しています。しかし、飲み込んだら・・という心配をされる方には、トイレットペーパーの場合は多くが水溶性のために、万一飲み込んでもさほど問題はないでしょう。次に巣箱ですが、できればこれもアレルギー性が低く通気性や吸湿性の高いものが良いです。なのでプラスチック製のものはNGですね。木材の巣箱で、特に屋根が外れるものだと巣箱のお掃除が楽に、しかもきれいにできます。皮膚病を患っている時の管理は、できるだけ毎朝掃除してもらうようにして、ケージ内の巣材全てと、せっせと巣箱に溜め込んだエサを全て捨ててもらうよう勧めてますから、できれば二つほど用意してあると、中身を捨てた後は手ぼうきなどで細かいゴミを落とした後、風通しの良いところに干しておけば十分です。せっかく整えた寝床をまた作り直さなきゃなので、この子達にはちょっとかわいそうですけどね。湿性の皮膚病の場合は少なからず雑菌が繁殖していて、それがさらに症状を酷くしている原因になってますから、治療中はこの子達がいつも触れる部分は常に汚染されていると考えた方が良いので、この子達が受けるストレスを差し引いても清潔にする事を優先すべきと考えるからです。もちろん食べ物も毎日全て取り替えます。※なんでもない時のお掃除は、トイレなどで汚れた部分はできれば毎日、巣箱の中は1週間に1~2回程度、ケージ本体などは月に1回程度で良いと思います。あと、飲み水は常に飲めるように、新鮮な水を用意します。ケージが金網製のものでひっくり返す心配がなければトレイ式のものでも構いませんが、できれば飲水ボトルのほうが良いでしょう。ただし、水漏れのあるものは言うまでも無くNGです。また、これは皮膚病には直接関係ありませんが、ボトルを長く使っていると金具の内部に水カビが生える事があって、稀におなかを壊す子がいるので、年に数回は煮沸消毒した方が良いです。あとはおもちゃ類ですが、回し車などで良く遊ぶ子にはやはり与えてあげたいですね。ただし、溝があって足を挟む恐れのあるものはNGですし、太りすぎている子には(皮膚病の子の大半が歩いててもおなかをずってますが)床面に突起がなく、炎症を起こしているおなかを擦りにくいものの方が良いようです。また、元々がトンネルに住んでいただけあって、よくプラスチック製や金網製のトンネルを付けている方がいらっしゃいますが、通気が悪く掃除しにくいプラスチック製のものは当然NGですし、金網製のものも足を挟みそうなものは避けた方がいいでしょう。どうしてもと言う方には、私はトイレットペーパーの芯を床に置いておくようお勧めしています。暗くて狭いというところを気に入ってくれる子も多いですね。汚れたら捨てれば良いですし。環境改善をお願いしてから最初の1~2週間で、ほとんどのケースで症状が回復していきますが、完全に治るまでには、程度にもよりますが、おおよそ1ヶ月半程度はかかります。また初診の際に、あまりに痒みがひどくて自咬症が見られたり膿皮症を起こしている場合は抗生物質や、症状によってはさらに炎症止め用に非ステロイド系抗炎症剤などを飲み薬として出す事もあります。私は抗生剤兼ベースとしてクロラムフェニコールという抗生剤を使った「クロマイ・パルミテート液」と言う経口用抗生剤を使いますが、これは甘くてバニラ風味なせいか催促する子もいるらしく、治った後でも貰えないかと尋ねられる事があります。もちろん、いつまでも抗生剤など飲み続けて良いわけはありませんから、他の物を代わりにしてもらうようお話しますけどね。厳禁なのが塗り薬です。ハムスターは皮膚や毛がベタベタしている事を非常に嫌いますから、塗り薬を付けると舐めたり噛んだりしてさらに症状をひどくする事もあります。以上が湿性の皮膚病の子の治療法になりますが、いくら病気を治すためだと言っても急に環境が変わるとそのせいで具合を悪くする事もありますから、無理に全て新品に買い変えるよりも、今使っているもので工夫次第で使える物はそのまま使ってもらっても良いでしょう。例えばケージについても、プラスチック製で湿度管理ができるか心配な場合でも、風通しの良いところに置くか、扇風機の風がケージの上を通るようにする事で湿気をある程度抑える事もできます。最後に、皮膚病が細菌性のものなのかアレルギーなのか、はたまたもっと別の原因があるのかはなかなか判断が難しいと思いますから、できればハムスターに詳しい獣医さんを念のため一人キープしておくと良いと思います。例えば実際に皮膚病を患っている子に衛生管理を徹底してみたとして、1週間経っても効果を感じられない場合は抗生剤などの併用が必要な事もありますからその場合はかかりつけの獣医さんに診て頂いたほうが良いです。また、実際に薬剤治療を受けているけどなかなか治りが悪いという方がいらっしゃれば、一度その子を取巻く環境の衛生状況をチェックしてみるといいでしょう。
Jun 15, 2005
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久しぶりの更新です。日記と違って、色々と忙しかったりするとなかなか更新できませんね。(元々、日記すら3日以上続いたためしがないんですけどね^^;)夏場になると思い出すのが、長いこと心臓病を患っていたミニチュア・シュナイザーの事です。飼い主さんがある日、いつもの心臓病の薬を貰いに来た時に「いつも暑い日に限って変な咳をしたり目やにが酷くなる」というお話をされました。心臓病を患っている犬にとって、夏場の暑さは最も気をつけなければいけないストレスの一つなんですが、当時の私もてっきりそのせいだと思ったんですね。でも、よくよく話を聞いてみると、暑いのでエアコンをつけて部屋を涼しくしていると症状が出るとの事。飼い主さんに「風邪でしょうか?」と聞かれて、私もそうかも知れないと思ったんです。で、いつもの心臓病の薬に加えて、風邪薬を5日分ほど調合してお渡ししたんですが。。次に薬を取りに来られた時にお話を伺ってみると、風邪薬を飲ませても全く効果が無かったとの事・・ちょうどそれと前後して、たまたま人医学のセミナーでハウスダストについての講義を聴いてきていたばかりで、エアコンのカビもアレルギーの原因になるという話を聞きかじってきていたので、試しにエアコンの掃除をしてみて下さいとアドバイスをしてみたんです。当時はまだ、ペットに対するパッチテスト等のアレルゲンの診断方法は浸透していませんでしたから、全くのあてずっぽうだったわけですが。。ところがその飼い主さんは、私の何気ない一言を頼りに思い切ってエアコンを新しいものに変えてしまったんです^^;それから次に見えられた時に「嘘みたいに症状が治まりました!」と。それはもう、大変喜んでおられましたが、当時の私は獣医師である自分の一言の重みと言うものを痛感させられたものです。季節は違いますしアレルギーではありませんが、もう一つ印象深いケースがありました。年始早々でしたけれど、これも室内飼いのミニチュア・ダックスフントの飼い主さんですがなんでも前年の暮れ頃から、飼い主さんが帰宅すると決まって、その子が吐いてしまうという事で「何か、私がこの子に嫌われるような事をしたんでしょうか」と一人暮らしのOLさんでしたけども、とても悲しそうに相談をされた事があります。確かに、精神的なストレスからくる嘔吐と言うものもあるでしょうが、それで片付けてしまうには飼い主さんが可哀相で。症状が出始めた時期の事とか、いつも飼い主さんが帰宅して30分くらいの間に嘔吐が起きること等、細かく確かめていって、「もしかしたら、ファンヒーターをつけた時に灯油臭くないですか?」と試しに、帰宅してからファンヒーターをつける時に、十分に換気をしてもらうようにお話して、さし当たって制吐剤を出したんですがこれも見事に的中していたらしく(獣医としてそれで良いのか?という疑問は残りますが・・・)後日飼い主さんから喜びの電話を頂きました。彼女にとっては、ワンちゃんの嘔吐が止まった事よりも、嫌われてたわけじゃなかったと言う事のほうが嬉しかったようですけれど。現在では、ペットにも花粉症などの様々なアレルギーや、アトピーの存在が報告されています。そしてどうやら、そのほとんどが室内飼いのペットに多く見られるようです。「へぇ、最近じゃ犬や猫も人間と同じ病気になるんだ」そりゃそうです。今では犬も猫も、家の中で人間と全く同じ生活習慣を送っているのですから。そしてほとんどのペットは、その体格の大小に拠らず、まるで人間の赤ん坊のように繊細な生き物なんですよね。(6/17追記)ただ、紹介させて頂いたケースは稀なケースであって、全てのペットにとって有害だという事ではないという点についてだけ、申し添えさせて頂きます。同居の他の子はなんともないのに、この子だけが・・という例がほとんどで、それだけに「まさかこんなものがという日常良く目にする物が原因になっている事もありえる」という目で、もしも原因不明の中毒やアレルギーを疑える症状が出た時は家の中・外の些細な変化についてもチェックする必要がある。と言うことです。
Jun 7, 2005
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さて、イヌやネコも老齢になるとめっきり足腰が弱くなり、歯周病などが悪化して抜け落ちてしまったりします。では、老年とはどれくらいからでしょう?個体差もありますしはっきりと○歳からとは決め付けられませんが、私は経験的に心臓病などの老齢疾患が発見されはじめる7~8歳頃から、徐々に老犬・老猫用の食事に変えていってもらうようにお話しています。前々回、イヌやネコはあまり噛んで食べないというお話をしましたが、これは年を取ってからも変わりません。例えばきれいさっぱり全ての歯が抜けてしまったネコでも、ドライフードでもさほど不自由なく食べます。逆に、年を取ってくると粗食で馴らしていても偏食というか、食べ物に対する好みが現れてくる事が多いようです。たとえば、ネコなら○○のドライフード(カツオ味)しか食べないだとか、カツブシがかかってないと何を与えても食べないだとか。そういう事が見受けられたなら、特に栄養上の問題がなければ好きなものを与えるようにして構わないと思います。ただし、イヌもネコも老齢になってからの塩分の取りすぎはそれぞれ心臓病・高血圧・腎臓病などの要因にもなりますし、むやみに負担を増やしてそういった病気の発症をうながしてしまう事にも繋がりますから、食べるからといって何を与えても良いという事ではありません。よく食べますが、決して人の食べ物は与えず、あくまでイヌ・ネコの食事の範疇で考えてあげてください。最近は老犬用・老猫用のフードも開発されてますから、もしそういったフードを食べてくれるなら言うことはないですね。もしくは、それまで粗食で飼ってこられたなら、老齢用フードに低塩分の缶詰を少量、まぶすようによくかき混ぜたものを与えると、当然今までよりも格段に美味しくなるのでよく食べてくれるようになったりします。 ※この場合の粗食とは、あまり味付けの濃くないもの、またはドライフードと思ってください。また、まぶすための少量の缶詰(小さじ1杯~中さじ1杯程度)を電子レンジで10秒ほど温めてあげると食欲をそそられるのか、よく食べてくれるようにもなります。他にもイヌ・ネコ用の脱脂粉乳を少量のお湯で溶いたものをまぶしてあげたり、ある程度温かい食事は香りも立ち、普段よりも食べてくれたりします。また与える量も、活動もずいぶんとおとなしくなっている頃でしょうから、当然、一日に必要とするカロリーがさらに減ってきますので、場合によっては例えば小型犬なら一回にドライフードで大さじ1杯程度しか食べなくなるかも知れません。歳をとってきて歯周病などがひどくなってきたりすると、食べ物が歯に当たるたびに鋭い痛みがあるので、食べたいけど食べれないという事が起こります。イヌなら、普段元気で食事を催促するくせに、いざ食べだすとすぐに食べるのをやめてしまったりとか、ネコならごはんの入ったトレイの前でじ~っと、ご飯を食べたそうに眺めていたりとか、食べている時にしきりと涎を出しつつ顔を振ったり、そういった光景が見られるなら、まずその子の口の臭いを嗅いでみてください。歯周病が進行していくとかなり口が臭くなりますから、実際に悪くなった歯を見つけれなくても、そういう場合はかかりつけの獣医さんに一度診てもらうと良いでしょう。食事とは直接関係なさそうですが、特にイヌの世界で「痴呆症」という病気が見られつつあるようです。ほとんどは老齢性の病気で、代表的な症状として・昼間はほとんど寝ている・夜中に起きだして周囲を徘徊したり、しきりに吼えたり鳴いたりするようになる・やたらと食欲が出てきて、あればあるだけ食べてしまう・暴食のわりにきれいなウンチをする・散歩の時にトボトボと元気がなく、まっすぐ歩けなくなる(本人は歩いているつもりのようだが、だんだん決まって同じ方向へ斜めに進んでいく)・今までした事がなかった糞食を急にするようになる・方向転換ができなくなり、どこか角までいくとそこでじっと立っているなどなど。このような症状に心当たりがある、または気がつかれている場合は、気になる症状を詳しくメモしておいて、メモを持参で獣医さんに相談されると良いでしょう。ただ、まだまだ獣医師の間でも治療法が確立された病気ではないので、その治療には根気と忍耐が必要になります。以前、巷で良く耳にするようになった健康食品のDHAやEPA入りのサプリメントを与える事で、脳の活性化を促進させてイヌの痴呆症の改善に役立つという報告がありました。今では人用でも「老化防止サプリメント」などとして発売もされていますし、それ以外でもさらに突っ込んだ治療薬の開発もされています。ただし、そういったサプリメントを与えていれば必ず治るわけではありませんから、与える前に獣医師の診断は必要でしょう。例えば似たような症状をとる病気に脳内の腫瘍や肝臓の病気など、類似症の可能性もありますから、そういった事も含めてしっかりと診察を受けるようにしましょう。ま、サプリメントでしたら与えて悪い事はあまりありませんけどね。それでも、獣医さんに相談される場合は必ず「今何を与えているか」を全てお話するようにして下さい。
Mar 16, 2005
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さて、先日フードのお話を少ししましたが、今日はその続きを書きましょう。今日は、イヌやネコの年齢のステージをいくつかの段階に分けて、ステージ毎のおおまかな食事の与え方について書いてみます。まずは、離乳期~生後半年頃までの間。なぜ生後半年なのかというと、イヌもネコもちょうどその頃に体格がほぼ決まり、一日の必要カロリーが大人並みに変化してくる頃だからです。でも、きっかり半年で、という事ではなく、ちょうど同じ頃にほとんどの乳歯が永久歯に生え変わりますが、犬歯以外全て生え変わった頃から犬歯も生え変わってしまうまでの、生後5ヶ月頃~7・8ヶ月頃の間です。余談ですが、シー・ズーやチワワ等の小型犬・超小型犬などで、もしも生後10ヶ月を過ぎても乳歯が残っている場合は、それは「乳歯遺残」の可能性がありますから、かかりつけの獣医さんに相談したほうが良いでしょう。生後半年頃までは仔犬・仔猫の成長は著しく、毎日目に見えて大きくなっていく時期でもありますし、その分とてもたくさんの栄養を必要とする時期でもあります。まず、大人用のフードでは、ほとんどの場合カルシウムなどが不足してしまいますので、必ず仔犬・仔猫用のフードを与えるようにしましょう。そして与え方ですが、生後3週間~1ヶ月の頃のいわゆる離乳時期には、たいていはお母さんと一緒でしょうから、子供達がお母さんの食事に興味を持ち始めたらひとつまみのドライフードをお湯でふやかして、ドロドロにしてから与えてみてください。それから段々と、ふやかし方を硬めにしていき、最終的には硬いままのドライフードに切り替えていきます。完全に離乳してしまい、フードだけを食べるようになったら、そのフードの一日に与える量を目安に(だいたいは袋の裏に書いてありますね)一日量を3~5回に分けて与えるようにするといいでしょう。何故ならこの時期、とても良く食べるのでドライフードだとあっという間に食べ終わってしまいますが、このドライフード、一旦おなかに入ってから水分を吸収して急にかさが増えるために、食べた後で食べたものを吐き出してしまったりするからです。吐かないまでも、まだこの時期の胃腸の機能は十分ではありませんから、一度にたくさん食べてしまうと消化不良から下痢を起こす事もあります。もしも一人暮らしの方など、お昼に与えるのが不可能な場合は、ちょっと頭を捻ってもらって、朝起きてから1回、2時間後くらいに仕事に出かける直前に1回、帰ってきてから1回、10時頃にさらに1回と、これでも4回は与える事ができます。まぁ、理想で言えば、できれば食事の間隔は最低3~4時間は空けたいところですけどね。生後半年を越える頃には体つきや顔の表情なども、よりネコらしく、よりイヌらしくなってくるでしょう。だいたいはこの時期になると、あの爆発的な成長もとまり、身体のサイズもほぼ決まってきます。そうなると、これまでのように大量の栄養を必要としなくなるため、急に食欲が落ちたようにみえるかもしれません。その時に、食欲が今までの半分程度になったように感じられても、それ以外は普段どおり元気なら、そのまま1回に食べ切る量を、イヌの場合は1日2回、ネコの場合は1日2~3回与えるようにするといいでしょう。この頃にフードの種類も大人のフードに切り替えていきます。一番やってはいけない事は、食べないからといって無闇やたらに様々な食べ物を与えてしまう事です。多くのペットが、このために偏食になっていきます。そしてその偏った食事、偏った栄養バランスが、後々に重大な老齢病の引き金になってしまう事もあるんです。食事の量は、確かに最もわかりやすいバロメーターのひとつですが、決して「食べてるから平気」でも「食べないと不安」でもないんです。動物は、ほとんどの病気で一番最後に、症状が悪化しきった頃に食欲がなくなる事が多いです。当然その頃になると、元気がなくなったり吐いたりと他の症状も出ていますから、急に食欲がなくなった場合、まず他に異常はないかよく観察して、何か気になることがあれば、かかりつけの獣医さんに相談されるのが賢明でしょう。食事の量だけを頼りにご自分で判断するのはとても危険ですし、なにより「本当に病気だった場合」やはり異常を感じたらすぐに診察を受けたほうが、病気の治り方も違ってきますからね。成長期の終わりから中年期・老年期になるまで、基本的に食事の回数は変わりません。しかし、その子の生活習慣や活発な性格かどうかなどで、一日に要求されるカロリーや食事の量は日々変化すると思っていて下さい。よく遊び、動き回る子や、何か特別な運動をさせている子などは普通よりもたくさん食べますし、おしとやかな子やぐうたらな子は逆に、一日に必要なカロリーは減っていきます。また、その日その日で、人間と同じく特にどこか悪いわけじゃないけど今ひとつ食欲がない、なんて日も出てくるのが成年期です。きちんと定期的に健康診断を受けているなら、そのような時も慌てず「今欲しがる量」だけを与えて1日様子を見てみるのも良いでしょう。良く、病院に来られる、特に室内犬を飼っている飼い主さんから「ごはんをほとんど食べない。どうすれば良いか」と尋ねられます。でも、よくよくお話を伺ってみると「おやつは喜んで食べてくれるんですけどねぇ」と。ペット達にとっては「おやつ」と「ごはん」の分別はありませんから、美味しい「おやつ」という名のエサを毎日もらえる環境なら、不味い「ごはん」には手をつけなくなってしまいがちです。でも、何かご褒美をあげたいという気持ちは良くわかりますし、私達が食事をしている時に愛くるしい表情でじっと見つめられると堪らなくなるのも判りますから、そういう時用に、小瓶に普段のフードを小分けしたものを食卓等、特別な場所においてみてはどうでしょう?多少、犬猫用の脱脂粉乳などをまぶしたりして「特別」を演出するのも良いでしょう。で、普段の食事以外に何かを与えたくなった時にその「特別な小瓶」から2~3粒取り出して与えてみるのも、良いかもしれません。今まで普通におやつを与えていた人は、おやつを与えた日はその分、普段の食事の量を減らしてカロリーの調節をするように心がけましょう。また、食事は食べ終わるまで出しっぱなしにしておかない事です。イヌにしろネコにしろ、1回の食事にかかる時間は遅くても10分から20分程度ですから、毎回食事を出して遅くても30分後には飲み水を残して食べ物は片付けるようにすると良いでしょう。特に雄のネコに顕著ですが、いつでも食べれる環境にあると、一回の食事の量が極端に減り、食べる以外はずっと寝ていたりしますから、どうしても太りやすくなります。いわゆる「食っちゃ寝」ですね。よくテレビで見かけませんか?同じネコの仲間のライオンが、狩りの時間以外はだらだらと寝そべっているのを。あれは、常に食事にありつけるわけではない自然環境の中で、エネルギーを効率よく使うために本能的に取られる行動なのですが、ネコにもそれが当てはまります。ネコもライオンも、基本的に狩りをする時は単独で行動しますし、普段から集団行動をしませんから、イヌ科の動物に比べるとどうしても食事にありつけない日も多くなりますし、集団の中でのスキンシップもさほど必要としないため、食べ終わったら次の狩りに備えて寝てしまうんでしょうね。自分中心とでも言うのでしょうか。なので、いつも食事にありつける家猫の場合は、常に食べれる状況に育つと、小腹が空いたらちょっと食べては寝る、の繰り返しになりがちです。毎度の事ながら文章が下手で、読みにくくてすみません。随分とはしょって書いたつもりですが、それでも長くなりすぎたようですので、老年期と病気の時の食事についてはまた次回に。
Mar 13, 2005
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とりあえず先週、慣らし運転は済ませた。という事で少しは有益な?お話もしてみましょう。まずは、ここを立ち上げて最初に書き込みして下さったtakako.comさんの質問に対するお答えが文字数制限のため不十分だったので、今回は「食事」について。まず始めに知っておきたい事。イヌとネコでは食性が違います。イヌは雑食(中にはベジタリアンな子も)ですが、ネコは本来は肉食です。歯をみてみれば判りますが、ネコの歯はものを細かく噛み砕くのには適しておらず、むしろ肉の塊とかを食べやすい大きさに「引き裂く」のに適しています。イヌもネコほどではないですが、むしろ軽く噛み砕く程度にしか役に立ちません。なので、ドライフードなど、元から小さいものは噛まずに丸呑みしちゃうわけなんですね。人間の場合はよく「良く噛んで食べなさい」なんて言われますが、これは、人間の場合は唾液も重要な消化液として作用するからなわけですが、イヌやネコの場合はさほど重要ではなさそうです。だいいち、人間なら口を閉じたまま噛む事ができますが、イヌやネコは噛む=口を開くなので、良く噛もうとしたらボロボロ食べ物をこぼしてしまいます。そしてさらに、元々が食べ物の消化はほとんど胃や腸でのみ行っているので、我々人間のように「良く噛んで食べないと消化に悪い」なんて事もないわけです。そして、最近のフードはどれも優秀ですしね。ところが、ほとんどの人が知らず知らずのうちに自分の「人間としての」習慣になぞらえて、イヌやネコも噛んで食べなきゃと思っちゃうみたいですね。例えば老齢のネコの場合、歯が全部抜け落ちてしまったとしても、人間なら固いドライフードは噛めないから食べ辛いところでしょうが、彼らは丸呑みするわけですから関係ないわけです。それよりも、柔らかい缶詰などを良くほぐさずに与えられたほうが、飲み込める大きさに噛み裂く事もできずに食べるのに難儀してしまうでしょう。さて、ではどういう食事の与え方が理想なのか?簡単に言うと、最も理想的な食事は「新鮮な食材を使って栄養バランスを考えて自宅で調理したもの」ですが、なかなかそこまでできる方は少ないでしょう。イヌは雑食ですが、ネコの場合は肉食に近いので新鮮な生肉などが手に入ればそれでもいいんですが。生肉を与えるにしても、スーパーでパックに入って並んでるものはすでに「新鮮」じゃなく、生肉の利点である各種のビタミンなどの栄養素もかなり壊れているのでそのまま与えても期待した栄養価は得られません。かといって、毎日殺したての生肉を与えるなんてスプラッタな光景は、とてもじゃありませんが一般家庭では望めないですよね。因みに、よくネコが魚を咥えて・・という光景を目に浮かべますが、ネコには魚食の習慣はありません。港の多い国で、人間と共に生活しているからこそ見られる光景であって、元々ネコが魚を採って食べるなんて事はありえませんしね。したがって、生肉なら、釣りたての新鮮なお刺身を与えてれば良いというのも間違いです。魚食メインだと、逆にナトリウムやマグネシウムなどの取り過ぎの危険があります。そこで考えられる最善の食事は、きちんとしたフードメーカーが出しているペットフードと言う事になります。今はこういったインターネットも普及してますから、各社のサイトを見て回ってみて、研究所でちゃんとフードの試験・研究をしている会社が特に優秀でしょう。そして、なるべくなら普段はあまり嗜好性の高い食べ物は与えないようにして、粗食に耐えれるようにしておくと、いざ病気で食欲がない時や、お薬などを食事に混ぜて食べさせなければならなくなった時に「ゴチソウ」で誤魔化すこともできちゃいます。いちばんイケナイのが、お父さんのお酒の肴をちょっとあげちゃったり。。面白いことに、病院を尋ねてくる飼い主さんで(ほとんどはお母さんが来られます)肥満体質のイヌやネコを連れてこられると、必ずと言って良いほど肥満の原因を「お父さんが酒の肴を云々・・」と。世の中のペットをもつお父さん達、みなさん病院では諸悪の根源にされてますよ(笑さて、ちょっと脱線したところで今回はこれまで。次回、さらに年代ごとの食事の与え方など書いてみたいと思います。そうそう、私達獣医師の間での通説を最後にひとつ。 例えば5つのフードを並べたとして、最も身体に良いフードは最後まで食べたがらないフードだ。 困ったものです^^;
Mar 7, 2005
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自分のペットが注射される時って、なんだか痛そうですよね。注射する時に飼い主さんが傍にいらっしゃると、ほとんどの方が僅かに眉間に皺を寄せて「あぁ痛そう」って。予防接種の時って最初から病院に来る目的は「注射」なわけです。家を出るときから飼い主さんの頭には「注射」の二文字が浮かんでるわけですね。病院へいく途中の車の中とか、病院が近付くにつれて段々と緊張してきたりして。受付で手続きを済ませて待合室で待ってる間にも、さらに緊張が高まってきて、名前を呼ばれた時はそれがもうMAXになっちゃうんでしょうね。ただでさえ動物病院って特別なところで、何かなければ行かない人がほとんどですし、何かある時って、それはとても不安な時ですし。以前勤めていた病院の院長先生は、ペットは飼い主さんの心の動きにとても敏感だとおっしゃってました。ご主人が悲しい時、なんだかわからないけどそういう波動が伝わってきてとっても心配してしまうんだとか。逆に怒ってる時、触らぬ神に祟りなしとばかりにちょっと余所余所しくしてみたり。特にマンション型の密室空間で暮らすペットにとっては、飼い主さんの感情その他の影響ってとても大きいんだと、私も思います。常にこの子達のアンテナは飼い主さんに向けられてるんですね。だからもう、病院の待合室で半ばパニックになってる飼い主さんの波動をモロに受け止めてるワンちゃんとか、診察室に入った時からすでにパニックなわけです。いくら看護婦さんや獣医さんが「大丈夫だよ、怖くないよ」なんて言ったって、そりゃ、怖いと思ってる人からそう言われても、ねぇ^^;唯一の頼みの綱の飼い主さんまで緊張しまくってるわけですから、診察台の上のワンちゃんはもう大変なわけです。そこで、飼い主さんにはその子の頭なんかを撫でてもらいながら、思いっきり顔を近づけてもらって、その子の目を見ながら話しかけてもらうんです。もちろん、その前の問診というか、診察室に入った時から色々なお話をしながら、診察の前に必ず一度は笑ってもらうように心がけてますけど。(漫才とかはやりませんよ、念のため)笑うって良いですね。とてもリラックスできるんです。そしてその心の動きは、必ずペットにも伝わるんですよ。そして注射器とかそういう物を見せないようにしながらワクチンの用意をします。飼い主さんがリラックスしててペットに一生懸命話しかけて、頭を撫でながら我が子の自慢話のひとつも話していると、いつの間にか注射も終わってるんです。所謂、保定だとかそういうのは全くいらないんです。飼い主さんもペットも、ほとんどは注射した事すらわからないままワクチンは終わってしまいます。飼い主さんの「痛そう」がなければ、実際には痛くないんですよね。注射って。もちろん、すでにパニックも極まっていて、病院では修正不可能な状態になっちゃってる子もいますけどね。だからというわけではありませんが、なるべく、大した用事はないけどちょっと寄ってみた。という具合に、どんどん病院に遊びに来て欲しいですね。また、そういう事ができる病院が増えてくれるといいなぁと思います。普段から通いなれた所なら、飼い主さんもペットもそれほど緊張しないで済みますし、なにより「ここにくると毎回何か嫌な事される」という風には覚えられたくないじゃないですか。
Mar 4, 2005
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これまた随分と昔の話になるんですが、私がまだ大学生だった頃。アパートであやめというネコを1匹飼っていました。あれは、あやめさんにとって初めての冬のある日。外は深々と降り積もる雪で真っ白で、さすがに外には出さないようにしてましたが、彼女はドアの前から頑として動かず私とドアと交互に見比べては「ニャー」と。とうとう根負けして外に出してあげると、一目散に階段を駆け下りる彼女を見送って、やれやれとドアを閉めたその直後です。外で「ニャー(ただいま)」と、あやめさんが鳴いているじゃありませんか。ドアを開けると一目散に部屋の中へ駆け込む彼女を尻目に「えらい短い散歩だなぁ」いったいどこまで行ったんだろうと階段を下りてみると、階段が終わって雪が積もっている所に彼女の足跡がたった一つだけポツンと。以降あやめさんは、雪が降る日は一日中、つまらなさそうに窓の外を眺めていました。ネコの足の裏はとっても敏感で、冷たいものに触れるのは特に嫌がるようですね。だからなのか、雨の日にはあまり野良猫の姿を見ませんね。まぁ、ネコじゃなくとも雨の日に好き好んで出歩く人は少ないですけど。あやめさんの最初の子供達が、まだ里親にもらわれていく前。岬・渚・小太郎・茶太郎のやんちゃ4匹は、それはもう元気一杯でした。ある日の夜、もう遅いし明かりを消して床について少しした頃でした。なにやらコーナーボードの上のテレビのあたりからパチパチ、パチパチと微かな物音がするんです。なんだろう?と月明かりに目を凝らしてみると、やんちゃ4匹が並んでテレビに手をかけてるんです。で、静電気がパチパチ、と。そのうち静電気がなくなると、今度はボードに上がってテレビの横からパチパチ。そこも済ませると最後はテレビの上からパチパチ。みんな静電気の感触が気に入ったらしく、それからも寝る時になるとしょっちゅうやってました。それ以外にも、玉取りをして遊んだり何かを手繰り寄せてみたり、なるほどネコの前足は手なんだなぁと感心したものです。いや、それだけなんですけどね。
Mar 3, 2005
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まだ新米獣医師だった頃(未だ新米の域を出ないのかも知れないけど。。)最初にお世話になってた病院でのお話。おばぁちゃんが真っ黒なネコを連れて病院にやってきました。みるとその子の顔は血が混じった鼻水と目やにでグチョグチョでした。まだ新米だった私にもひと目で「伝染性鼻気管炎」だとわかりました。もしかしたらパルボも併発してたかも知れないけど、その時「ひと目」で判ったのは鼻気管炎です^^;初めての患者さんだったので院長先生がカルテを作ります。院長「だいぶ酷いですねぇ」おばぁちゃん「えぇ。うちにはこの子ともう一匹いるんですけどね、真っ白な子なんですけど」院長「じゃぁ、この子のお名前を教えてください」おばぁちゃん「その子は、そりゃもう元気で、シロちゃんもそうだけどこれまで病気らしい病気ってした事がないんですよ」院長「えっと、シロちゃんのお話はまた後で。。まずこの子のお名前を教えてください」おばぁちゃん「だから、シロちゃんです」院長「え?真っ白なネコの名前じゃないんですか?」おばぁちゃん「真っ白なほうはクロちゃんですよ?」なんだか笑い話みたいですけど、本当にあったやりとりなんですよ。コレ頭を抱えそうになってる院長先生を見て笑いを堪えながら、血液検査の準備してました。院長「それじゃぁ。。。シロちゃんはいつ頃から症状が出てきたかわかりますか?」おばぁちゃん「クロちゃんはとっても元気でねぇ」今度は本当に頭を抱え込んでしまった院長先生を見て、思わず噴出してしまったのを覚えてます。どうやらこのおばぁちゃん、かなり耳が遠かったようです。私が飼っていたシェルティ(名前はビビと言います)も晩年はほとんど耳が聞こえなくなっていました。グゥグゥ寝ているその身体に触れるまで気がつかないくらい、耳は役目を果たさなくなってました。結局最後はフィラリア症で死んじゃいましたけどね。それでもまだ、確か12歳くらいだったと思います。ちょうど、私が獣医の大学に通っていたある年の夏でした。今でこそイヌの寿命は、おおよそですが15~16歳程度ですし、今時フィラリア症で死ぬ子はとても少なくなっています。でも当時は12歳でも大往生の部類に入ってました。例え死因がフィラリア症だとしても、です。今みたいに癌や心臓病にかかってる子はほとんど見かけませんでした。逆に言うと、癌や心臓病が診断できなかったのと、高齢病であるそれらの病気にかかるほど「長生き」できなかったからだと思います。気の遠くなるくらい昔、人間とイヌが初めて出会ってからつい最近(30~40年くらい前)まで、イヌの寿命はせいぜい6~8歳だったんです。ほとんどの子がフィラリアにかかってました。それが医療の爆発的な発達に伴ってフィラリア症が激減して寿命が大幅に伸びてきたんですね。(もちろん、それだけが原因じゃありません)するとどういう事がこの子達の身体に起こったか・・これまで何万年、何千万年という長い間、イヌの臓器は6年かその程度働ければ良かったわけですが、それが急にその2倍3倍もの期間働かされるようになったわけです。当然、寿命は延びたものの身体の構造そのものが進化したわけじゃありませんから、あちこちに老朽化が進むわけです。それが心臓病であり、癌なんだろうと思ってます。癌はともかく、心臓病は一部の例外を除いて治る事はありません。一歩一歩、着実に死に向かっていく病気です。新たに手に入れた「時間」の代償として、彼らの終末は突然の死から緩慢な死へと変化したわけです。私はよく、初めて自分の子が心臓病にかかってしまったと知って嘆かれる飼い主さんにこのお話をします。何ら、科学的根拠を持ってお話しているわけじゃありませんが、これが私が捉えている老化という現象なので、その事をゆっくりとお話します。ひとたび心臓病が発見されたら、そこからの私の役目は「いかにこの子を苦しませないか」に集中されていきます。自分の愛犬が苦しんでる姿ほど、飼い主さんを苦しめるものはないですから。そうして少しずつ、私も飼い主さんも心の準備をしていきます。私が常に心がけるのは、最後の時に望んで飼い主さんに「精一杯やってあげれた」と思ってもらえるにはどうすれば良いかという事です。今は昔と違って「ある日突然」の別れはうんと少なくなりましたから、それが可能だと思っています。昔、先にお話したビビにもマリーという名前の小さなお嫁さんがいました。まだ生後1年ちょっとで、やっとお嬢さんっぽくなってきた頃でした。私が最初の大学に合格して下宿先へ旅立つ前の晩に、マリーがいつになく甘えてきたのを今でも鮮明に思い出します。とっても不器用な子で、普段は「撫でろ」と掌に頭を押し付けてくるんですが、押し付けすぎていつも手を払いのけてしまうんです。それがその時だけは何故か、そっと私の手の上に頭をのせたままじっとしていました。とても不思議でしたが、かなり長いことそうしていたのを覚えています。ビビも、普段はやきもちを焼いて割り込んでくるんですが、その時は少し離れたところに座ったままじっと私達を見てました。それから3日後、下宿先で荷物を解く暇もなくマリーの急死を知りました。急性フィラリア症でした。私は結局、その大学にはいかずに1年浪人して、獣医の道に入りました。今でも私には、診察台の上の子達にビビやマリーの面影を見ます。私の掌には、そっと乗せられたマリーの頭の感触が今でも残っています。生まれて間もない、やんちゃな子犬を診察する時でさえ、その先にビビやマリーの面影を通してその子の「死」を頭のどこかで考えてしまう、私はやっぱり変な獣医ですね^^;うーん。一回目にえらく重い話を持ってきてしまいました。。この先どうしよう・・・ま、思いついた事をまた、思いついた時に書いていきます。
Mar 2, 2005
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