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May 21, 2007
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カテゴリ: 病院でのできごと
素晴らしい忍耐力をお持ちの方々、お久しぶりです。

(と、言い訳)
実はmixiの方で少しだけ本格的に活動再開してたりします。
以後、こちらでは獣医師として日誌をしたためつつ、アチラではYasichi個人として ウサ晴らし 日々の感想なぞを。

さてさて。
先日の事ですが、最近では珍しくスタンダード・プードルが、嘔吐と食欲廃絶で来院しました。
この子は同僚が担当したのですが、診断は胃捻転です。

幸い、この子が来院したのは午前中で、しかもまだ捻転してからさほど時間も経っておらず、ある程度余裕をもって手術できる状況でした。
手術そのものについては、、実は紆余曲折あったのですが、ともかく無事に終りました。
(紆余曲折の部分については、いずれアチラにでも・・)
問題は、手術の際に小腸に閉塞部位がみつかり、その中身を取り出したところにありました。
出てきたものは、一欠けらのグリニーズ。
ほとんど未消化の状態でした。
以前からこの商品については世界各国で消化器障害の報告があったのですが、大ブームになったお陰で元々販売個数自体が膨大なため、事故の発生率そのものは極端に高いものではありませんが、実際に事故に遭遇してしまっては、今後この商品に対しての私のネガティブな印象を拭い去る事はできないでしょう。
発売元のアメリカ本国では、事故発覚当時から大問題になっていましたが、実際に国内でもすでに複数の事故の報告があるのに、業界側には未だ問題意識がないようで、そこかしこで「大人気!」「大好物!!」等の売り文句と共に売られています。
まぁ確かに、「ほとんどの子」は大丈夫なんですが、例え僅かであろうともリスクを伴うもので、しかも不必要なものなら敢えて与えなくても良いように思います。

同じく、敢えて与えなくても・・と私が現在、飼い主さんに警鐘を鳴らしている製品に、キシリトール入りフード(おやつ)があります。
キシリトールはご存知の通り、人間では虫歯予防・歯周病予防に効果がある事が実証されていますが、同時にその使用方法についても「含まれる糖質の100%がキシリトールでなければ、治療効果が望めない」事や、「作用するためには十分な時間、口内にキシリトールが留まる必要がある」事も判っています。


キシリトールを使用する目的はなんでしょう?
1.虫歯予防
  ミュータンス菌の活動を阻害する事で口の中の酸化を防ぎ、歯のう蝕を防止します。
2.歯周病予防
  歯垢のネバネバを解除する事で歯垢が歯に纏わりつきにくくし、その結果、


他にもなにやら書いてありましたが、大きな目的としてはこの2点だと思います。

ところが犬では、そもそも虫歯自体が発症率がとても低くおおよそですが6~8%だと言われています。
(虫歯にならない わけじゃないです)
これは、元々の口内pHの犬と人との違いによるもので、犬の場合はアルカリ性に傾いているため、よしんばミュータンス菌が活動しても、せいぜい中和される程度でう蝕が起こらないとされているからです。
その代わり、歯垢に石灰沈着してできる歯石は、アルカリ性の口内では大げさに言うと一晩で出来上がるほど、スピーディーです。
じゃぁ、歯垢がつきにくくなるなら歯石予防の効果があるんじゃ?
と思われる方も多いでしょうが、
歯垢のネバネバを防止するためには、十分量の(糖質全体の100%の)キシリトールが、しばらく口内に留まる必要があります。
つまり、(人の)キシリトールガムが最も適しているわけですね。
しばらく、クチャクチャと噛み続けますから。

ところが人と違って、犬の場合は物を食べる時、口唇を閉じて咀嚼する事ができないので、食べ方としてはバリバリと噛み砕いてとっとと飲み込む、となります。
なかなか飲み込めない・齧れない大きさのガムだとしても、口を開けたままですからキシリトールの大部分はよだれと一緒に流れ出てしまうか飲み込んでしまいます。
なので、作用するのに十分な時間、キシリトールが犬の口内に留まる事は期待できないでしょう。
つまり、犬に対してはキシリトールの効能は期待できないというのが私の考えです。

ところでキシリトールは、医療用としても使う場合があります。
(正確には、ありました。肝不全の恐れがあると判った現在では使う獣医はいないでしょう)
用途は、キシリトールのインスリン放出促進作用を利用した糖尿病に対する血糖値降下作用です。
つまり、キシリトールを摂取するとすい臓から分泌されるインスリンの量が増えるわけです。
この効果は、人ではほとんど機能していないのですが、犬ではてきめん効果があります。
そんなものを、糖尿病でもなんでもない、健康な子が食べてしまったら・・一定量(いわゆる薬用量)を超えれば低血糖症を引き起こすのは当たり前の事ですね。
ASPCA(Animal Poison Control Center)の報告によれば、体重あたり0.1gのキシリトールを摂取した場合、低血糖治療が必要になる との事です。
犬のキシリトールの吸収はとても迅速で、30-40分で吸収されてしまうので、大量のキシリトール(例えば、人用のキシリトール入りガムなど)を食べてしまった場合、どんなに遅くとも1時間以内に処置する必要があります。
また、まだ低血糖のように用量については明らかではありませんが、肝臓障害を引き起こす可能性についても報告がありますし、私自身が、実際にキシリトール入りのおやつを止めてもらって以来肝機能障害が治ったケースを経験しています。

現在、日本で販売されているペットフードやおやつ、デンタル商品の多くに、キシリトールが混入されていて、こぞって「キシリトール配合!」とさも伝家の宝刀のごとく宣伝しています。
それでいて、これらの諸問題について質問が来ると「当社の製品に含まれるキシリトールは微量ですので心配いりません・・・云々」という返答が決まって返って来るようです。
ここで、人の歯科領域で判明しているキシリトールの作用条件を思い出して下さい。
「含まれる糖質の100%がキシリトールの場合にのみ、効果が期待できる」でしたね。
これは、どこの歯医者さんに質問されても、同じ答えが返ってくると思います。

人の食べ物と違ってあまり糖質を必要としないので、全てとは言いませんが、危険な量ではないという事はつまり、キシリトール100%ではないと宣言しているようなものじゃないかと思うのです。
100%だとしても微量のキシリトールに、いったいどれだけの予防効果があるのでしょう?
自ら、キシリトールは入ってるけど効果はないよと言っているようなものですね。

以上の事から、たいして効果があるとも言えないものを、確率はともかくリスクを伴うのにわざわざ与えなくても良いのでは?というのが私の見解です。

重ねて言いますが、キシリトールは人に対してはほぼ無害です。
人に良いから犬にも良いという事にはならない という事です。
そして、恐らくはこの「錯覚」を利用した商法でしかない としか思えないという事です。

なお、自然の果物や野菜などにもキシリトールは微量ながら含まれていますが、これらについては、どんなに頑張っても危険な量のキシリトールを摂取する事は不可能ですので、無視して構わないと思います。

グリニーズにしろキシリトールにしろ、日本のペット業界では今もなお平気で売られています。
日本の現在のシステムでは、これらに対して警告を公に発する機関や制度はありません。
なので全ては飼い主一人一人の不断の勉強と選択に委ねられています。

獣医の間で格言のごとく言われ続けている言葉があります。
「猫は小さな犬じゃない」
これはそのまま、人と犬の間にも、当てはまる事なのです。





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Last updated  May 22, 2007 12:24:02 AM
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