ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jul 21, 2006
XML
「転調の美学」

 今日の練習のメインはメントリの2番。超有名な1番の陰に隠れがちだが、自分としては1番よりも気に入っている。ルースさん(チェロ)とはもちろん、セス氏(ピアノ)と合わせるのもこの曲は初めて。ちょっぴり緊張しながらも、アルコホールの力をお借りしながら挑戦した。

1楽章: 表向きはハ短調ということになっているが、ベートーベンみたいに、ドの音にどっしりと基盤を置いて音楽が進んでいくのとは異なり、地に足をつけずに、ころころ調を変えながら転がっていく。ずーっと臨時記号で対応していくのだけど、ついに観念して「正式に」転調してハ長調になったりもする。まるで落ち着きのない曲だし、複雑でわかりにくいけど、その奥深さが最大の魅力。

2楽章: なんとも形容しがたい曲。なんとなく始まってなんとなく終わる。起承転結もはっきりしないし、サビとかクライマックスもあやふや。この「まったり感」、「漂流感」に、むしろイライラする人もいるかもしれない。「ケジメなさい!」と言いたくもなる(笑)。でも、この世のあらゆるトリオのレパートリーのなかで、たぶん最も美しいアンダンテだと思う。

3楽章: いかにもメンデルスゾーンっぽいスケルツォ。ピアニッシモの16分音符を軽やかに弾くのに手こずる。そんななか、最後に出てくる弦ののピチカートがご愛嬌。

4楽章: 枕詞も前置詞もなく、突然チェロのソロで強引に始まるので度肝を抜かされる。途中に出てくるコラールが印象的。交響的かつオルガン的で良い。

 全体にわたって効果的な転調が繰り広げられていて、いやでも調性について意識してしまう。短調と長調を往き来するだけじゃなく、予想を裏切る転調劇も展開される。

 室内楽を練習してても、単音をなぞっている我々弦楽器奏者は、一般に、ピアノ弾きほどには調性について強く意識することはないかもしれない。でも、この曲は弦パートにも分散和音とか音階とかが数多く登場するので、その行きつく先の音を意識して弾く必要がある。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Jul 24, 2006 10:15:40 AM
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ピカルディの三度TH

ピカルディの三度TH


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: