ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Oct 20, 2006
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「関白宣言」

 今日は月に一度のトリオの練習の日。ピアノのセス、チェロのルースと定期的に練習するようになって早くも四ヶ月め。毎回かなり無理めな選曲ばかりだけど、今日はついにブラームスに挑戦。

 この曲、作品番号が一桁とはいえ、交響曲1番のように何度か書き直しているらしい。この未練がましい彼の性格にはどこか親しみを覚える。

 1楽章の幸福感に満ちた冒頭のメロディーがこの曲の最大の魅力と言っていい。ブラームスの交響曲1番の終楽章のコラールに雰囲気が似ている。けど、交響曲のブラ1はハ長調なのに対し、トリオのブラ1はシャープが五つ!

 スケルツォの楽章も楽しい。しかしなぜかベートーベンのそれとして錯覚しながら弾いてしまったりもして。

 ところで、ピアノ三重奏という編成は、バイオリンを弾く自分としては実はちょっと苦手でもある。苦手というか、チェロ弾きの存在に微妙な感情が発生してしまうから。
 それは、 ライバルに主役の座を奪われる嫉妬心 とも違う。 共演者への無垢な信頼感 とも全然違う。なんていうか、単に 照れくさい

 特にユニゾンのとき、あるいは、チェロを三度とか六度下に従えてハモるときとかに、彼(彼女)のことを過剰なまでに意識してしまう。稀にだけど、メロディーを弾くチェロの下にもぐって三度下でデュエットすることもあるし。
 チェリスト自身が絶世の美女であっても、あるいはコぎたないオヤジだったとしても(失礼)、なぜか赤面してしまう。

 チェリストに対して自分が抱くこういった特別な感情というのは、うまく説明できないけど、ほかの室内楽の編成では決してありえない。弦楽四重奏のチェロ弾きに対して、僕はそこまでは萌えない。

 例えば、バッハの二つのバイオリンのための協奏曲(ドッペル)の独奏パートを誰かと共演するとする。僕は、相手のバイオリン弾きがどんな人であっても、楽しく弾ければ別にそれでいい。「理想的な共演者」という水準はない。バイオリンソナタを共演してくれるピアノ弾きに対しても同様。自分のような未熟者と一緒に弾いてくださるだけで大変ありがたいし、恐れ多いと思ってる。

 しかしながら、ピアノトリオという編成でのチェロ弾きに対しては、あんまり妥協はしたくない。自分より下手すぎてもイヤだけど、上手すぎるのもイヤ(笑)。極言すれば、性格や容姿までをも気にしてしまう。音楽的な感性、好みが自分とかけ離れていてはいけない。技術的なこととかは意外にどうでもよかったりするというのに、弓の持ち方とか楽器の構え方とかに違和感を感じるチェリストは不可だったりして。まー、ここまで来ると、「俺より先に寝てはイケナイ」状態(笑)。

 なぜ、急にそんな偉そうなことを生意気にもウダウダ語ってるかというと、このブラームスの1番はチェリストとの相性が全てだとつくづく感じるから。

 ちょっと例を挙げてみると、1楽章に出てくる五連符↓。
brahms8a

 この五連符、きっちり五等分にすべきなのかもしれないけど、現実的には他にも幾通りもの弾き方があると思う。

A) 2+3にする。つまり二連符(というか八分音符)と三連符。
B) その逆。3+2にする。三連符プラス二連符。

D)思い切って1+4にする。四分音符一つと16分音符四つ。

 僕はいまだにどれにしようか決めかねてるけど、BとDだけは絶対にイヤで、かといって律儀に五等分するのもどうかと思う。今日の練習でも、この箇所はちょっとだけ口論になった。


 同様に終楽章。チェロのメロディーで始まるのだけど、練習記号Aの前のリタルダンド。このオープニングのソロで、こってりとリタルダンドされるのも興ざめだけど、全く rit. しないのも淡白すぎ。molto って書いてるわけだし。↓写真はチェロ譜。



 同様のパターンが後で何度かユニゾンでも出てくるので、初回でチェロとピアノがどれぐらい rit. するのかを緊張しながら聴くしかない。ピアノ弾きとしても、こういう箇所って弾きにくいだろうと思う。
 ちなみに、ルースもセスも淡白派。
brahms8c






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最終更新日  Oct 25, 2006 10:09:20 AM
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