ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Feb 2, 2024
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カテゴリ: 映画、テレビ
「論破ルーム」(評価 ★★★★★ 満点五つ星)

 カンヌやゴールデングローブなど映画賞を獲りまくってる話題作を鑑賞。来月発表のアカデミー賞でも当然のように候補になっており。
 舞台はフランスの山奥。山荘で男が謎の転落死。果たしてそれが自殺なのか他殺なのか事故なのか、真っ先に妻に他殺容疑がかかり裁判へと発展する。
 日本でもまもなく(2024年2月23日)公開。 https://gaga.ne.jp/anatomy/

 カンヌ受賞ってのも納得。久しぶりに観応えのある欧州映画を観た。ぼく好みなので五つ星。二時間半というのは確かに長すぎだけれど、映画好きの人なら許容範囲内のはず。
 名探偵が主人公をする謎解き系どきどき系の娯楽作品ではなく、あくまで容疑者である妻(とその息子)の心情描写の重きが置かれてて、それがまた効果的。

 法廷での場面も見応えがあった。てか、裁判は当然のようにフランス語で行なわれるのだけど、容疑者である主人公はガイジン(ドイツ人)。フランス語よりもむしろ英語のほうが得意であり、尋問や答弁を英語でしゃべりたがる。それってフランス人からしたら決して好印象は持たれない。

 ほかにも登場人物のキャラ設定にこだわりがある。以下に列挙。

 妻が雇った弁護士も英語が堪能。しかも二人はビミョーに恋仲?

 夫婦はともに文筆業。夫より妻のほうが作家として成功している。
 唯一の家族である11歳の息子は目が見えない。
 盲目だが髪形や服装などの外見には凝っていそう(女の子系?)。

 脚本や撮影も上手いし、なにより役者さんたちの演技が素晴らしい。夫婦喧嘩の場面なんて、あまりの熱演にしびれてしまった。ぱちぱち。
 主人公を演じた俳優はサンドラ・ヒュラーさん。役者にとって、「容疑者」を演じるのは「探偵」を演じるのよりずっと難しいと思うのだけれど、ヒュラー氏は、ほんとに夫を殺しそうてもあり、いややっぱり無罪っぽくもある、そんなつかみどころのない雰囲気のあるおばさまを見事に演じていらっしゃった。

 息子を演じた俳優さんもお若いのに素晴らしかった。法廷での答弁の場面とか。
 あと一家の飼っている犬(死体の第一発見者)さえも名演技を披露なさる。

 敢えてこの作品にいちゃもんつけるなら、転落による即死というお題の事件なのだから、もう少し高層の建物から転落させるとか、地面をふかふかの雪ではなくかちかちの氷とかにしたほうが現実味があった。 

 映画のなかで効果的に使用されてる音楽は、ショパンの前奏曲4番ホ短調作品28-4とアルベニスのアストゥリアス/レエンダ(伝説曲)。





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最終更新日  Feb 3, 2024 11:54:01 PM
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