音楽はもちろん、セックス・ピストルズの言動やエピソードについては、あらためてここで触れるまでもないだろう。 彼らの音楽は本物だったが、それだけで売れるほど世間は簡単じゃない。 ニューヨーク・ドールズのマネージャーも務めていたマルコム・マクラーレンはそれを分かっていたし、流行は"作られるもの"であることも知っていた。 マルコムの二枚舌と巧妙な戦略は、バンドの個性や当時の世間的(あるいは音楽的)状況と有機的に結びつく。 結果、ピストルズはセンセーションを巻き起こし、そして頂点に達した所で自爆した。 アルバム『Never Mind The Bollocks』が日本で発売されたのは'78年の1月だ。 だがその時には、ジョニー・ロットン(Vo)の脱退によりバンドの実質的な生命は既に尽きていたのである。
にも関わらず、商魂たくましいマルコムはさらにピストルズを利用しようとする。 '79年、ジュリアン・テンプルを監督とした映画『The Great Rock'n Roll Swindle』が公開された。 マルコムを語り手とした「ピストルズのドキュメンタリー」とされる内容で、後にマユツバ(全てではないが)であることが判明するまでもなく、インチキ臭さが全篇に漂うバカバカしくておかしい作品となっていた。
「The Great Rock'n Roll Swindle」はそのタイトル曲だ。
クレジットはスティーヴ・ジョーンズとポール・クック、そしてジュリアン・テンプルとなっている。歌詞はともかく楽曲面で中心となっているのはおそらくスティーヴだろう。 「Anarchy In The UK」、「God Save The Queen」といった有名曲を作ったのはグレン・マトロック('77年2月に脱退)だったが、スティーヴのポップ・センスもなかなかのもの。そのことがよく分かる一曲だ。