ヨカッタ探し

フリーページ

シネろぐ2008

キーワードサーチ

▼キーワード検索

お気に入りブログ

福内鬼外（月日が往… 123maoさん
未定の予定～ラビ的… みっつ君さん
暇日記 going519さん
スノボ・バレー・読… マ・サシ～ロさん
ミステリの部屋 samiadoさん

カレンダー

< 新しい記事

新着記事一覧(全450件)

過去の記事 >

December 3, 2005

帰りの電車に乗る前に、本屋さんを物色しました。
畠中恵さんの『ぬしさまへ』を買うつもりだったんですが、
あいにく見つからなかったので、こちらを買いました。

この作品も、単行本で読みました。
わたしが初めて触れた、小川洋子作品です。
今度、映画化されるんですね。

交通事故による脳障害で80分しか記憶が持たない元数学者の”博士”、
その”博士”のもとへ派遣された家政婦である”私”と、

折々に挟み込まれる数学論が、なんだかとても美しく、
意味のあるものに思えてきます。
数の持つ美しさ、をサラリと伝えてくれる感じ。
むかーし、”数学”は”数が苦”だ、などと
数学が苦手な文系の友人がぼやいていたことがあったんですが、
博士がルートにしてくれるような授業を受けられたなら、
”数学”が実は”数楽”であったことに気付いたかもしれない。
無機質な数式が、美しい旋律となる…。
数に魅せられた博士は、記憶が80分しか持たなくなっても、
数と向き合う時だけは、自分を保っていられる。

この物語を読みかけで帰宅し、そのまま荻原浩さんの

そちらを読み終わって、またこちらの続きを読んで…。
記憶を失った者を見つめる人々のお話と、
記憶を失いつつある者のお話。
奇妙なサンドイッチとなりました。
病の形は違いますが…

確かに蓄積は終わってしまったのでしょう。
その後に会った”私”と”ルート”のことは、永遠に覚えられない。
それは、とてもとても切なく、悲しいことです。
でも、”私”と”ルート”の中には、80分を懸命にループする博士が
生きている。一方通行かもしれないけれど…。

大切な人を失った時、「胸の中に、あの人は生きている」
と自分を慰めたりしますよね。
あれってただの慰めじゃなくて、真実なんだと思います。
先に逝った人のために、自分に何が出来るか？？
忘れないでいること。
誰かを覚えている、ということは、その誰かが生き続けている、
ということとほぼ等しいのだと思います。
そのことはつまり、今・ここの世界に確かに生きていても、
自分しかそれを知らなければ、無意味なのだ、ということ。
人間は１人では生きられない…。

読みながら、そんなことを思いました。

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう

最終更新日 December 4, 2005 04:15:56 PM
コメント(4) | コメントを書く

[読書ろぐ] カテゴリの最新記事

■コメント

買いましたー！

イズミさん

anna２号さん、こんばんはv私もこの本、買いました！

本屋大賞ということもあり、ハードの時からずーっと読みたかったのですが、図書館にもなく、お金もなく（涙）文庫になるのをずーっと待っていました☆
まだ途中しか読んでいないのですが、数によって人とつながりがもてる、という不思議な感覚が、心地いいです。数ってすごくカタいイメージがあるのに、なぜか柔らかい感触をもたらしてくれる文章だなーって思いました。早く続きが読みたいデス… (December 7, 2005 10:32:29 PM)

返事を書く

イズミさん、待望の文庫化ですね！

anna２号さん

＞anna２号さん、こんばんはv私もこの本、買いました！

イズミさん、こんばんは。
またしても趣味がかぶって、嬉しいな♪

わたしは単行本で一度読んだのですが、
文庫化されたら絶対買うぞ！と決めてました。
長かったですねー(笑)。

＞まだ途中しか読んでいないのですが、数によって人とつながりがもてる、という不思議な感覚が、心地いいです。数ってすごくカタいイメージがあるのに、なぜか柔らかい感触をもたらしてくれる文章だなーって思いました。早く続きが読みたいデス…

そうなんですよね。とっても柔らかい世界なんです。
続きが知りたい、と思いつつ、じわじわ味わいたいような…。
読み終わったら、また感想聞かせてくださいね♪
(December 8, 2005 12:29:39 AM)

返事を書く

ようやく

イノーさん

前から気になっていて、ようやく買って読みました。

数学者と、80分しか記憶が保てないという非日常な要素を、数学の公式のように美しい筆致で日常風景を丹念に描写する事によって、何の違和感もなく、スルリとその世界に入り込めました。

小川さんの作品は初めて読みましたが、文章力といい、構成力(特に内面的に、静かに盛り上げていく筆力に、ただただ恐れ入りました）といい、並々ならぬモノを感じました。

博士と”私"が雷を見るシーン(P213∼)は特に、心がじんわりとした所です。

数式と同じくらい美しい人間の話でした。本当に小説(物語)っていいですよね～。 (October 24, 2006 11:14:37 AM)

返事を書く

イノーさん、いい作品ですよね。

anna２号さん

＞前から気になっていて、ようやく買って読みました。

わたしもお気に入りで、最近また読み返しましたよ♪

＞小川さんの作品は初めて読みましたが、文章力といい、構成力(特に内面的に、静かに盛り上げていく筆力に、ただただ恐れ入りました）といい、並々ならぬモノを感じました。

わたしもこれが初めての小川作品です。
何作か手を出したけれど、今のところ、『博士…』
が一番好きですね～。

わたしは、博士がルートの頭を撫でる、
その様子を母として幸せな気持ちで見つめるシーンが
じんわりあったかくて、ちょっと切なくて好きですね。 (October 25, 2006 12:02:38 AM)

返事を書く