東方見雲録

東方見雲録

2026.01.25
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カテゴリ: ものづくり



 土壌微生物の発電の力を活用した微生物発電の研究に、米子松蔭高(米子市二本木)の生徒が取り組んでいる。自分たちの手で作り上げた電池での発電に成功し、関係者らと喜びを分かち合った。

 微生物発電は、有機物を分解する時に電子を放出する発電菌の性質を利用した新しい発電方法。発電菌は田畑や耕作放棄地の土中にすみ、研究では土壌探しも重要となる。

 鳥取再資源化研究所(北栄町)の竹内義章社長が新しい土壌を探していたところ、同校の長崎成輝校長が声をかけ、探究学習の一環として研究が始まった。

 研究には主に有志の1、2年生6人が参加する。生徒自ら土を運んで電池を作り、約60個の電池のつなぎ方に試行錯誤を重ね、ついに昨年12月、約2ミリアンペアの発電に成功した。成果発表も行われ、同校で点灯式を開催。カラフルなLEDライトを点灯させ、関係者らが拍手を送った。

 1年生の森田匠哉さん(16)は「今後は電気抵抗を小さくしてもっと光るようにしたい。ゆくゆくは、学校の全ての電気を微生物発電でまかなえるようになれば」と力を込めた。竹内社長は「耕作放棄地を利用した微生物発電が、鳥取ならではのエネルギーになる。諦めず研究を続けてほしい」と期待した。(安井桃華)

引用サイト: こちら   日本海新聞

言葉の森:微生物発電


 微生物電池の正式な名称は、微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell)です。水素を燃料にして走る究極のエコカーと言われている燃料電池自動車がありますが、その動力の燃料電池も酸化還元反応を利用する電池です。微生物燃料電池は微生物が作った水素を燃料とする燃料電池で、負極(アノード電極)で水素から電子を作り(H2→H++2e-)、正極(カソード電極)で空気から取り入れたO2が電子を消費して(O2+4H++4e-→2H2O)、電子が流れます。

 ここでは、土壌微生物電池について説明します(図1)。酸素が少ない土壌の中では、酸素を必要としない嫌気性微生分が活動しています。嫌気性微生物は電子を土の中にある二価鉄などの酸化体に渡します。土の中に埋めたマイナス電極が微生物の排出した電子を受け取って、プラス電極で酸素に電子を渡すことで電子が流れます。このときに、マイナス電極に鉄線を巻くことで、大きな電圧が発生します。二価鉄となって溶けた鉄は電子を増やすだけでなく、土壌の微生物の栄養分にもなります。乾電池は使用した後に廃棄物になりますが、土壌微生物電池の場合、電気が流れた後の土は有機分が分解されて、植物を育てるのにいい土壌改良材として有効利用できます。
こちら

言葉の森:発電菌
私たち人間をはじめとして生物は、炭水化物やたんぱく質、脂質などの有機物を分解して生命活動に必要なエネルギーを取り出して生きています。これを代謝といいます。

1980年代後半にシュワネラ菌(Shewanella)が発見されたことを契機に、有機物を代謝する際に電子を放出する微生物の存在が明らかになりました。
この発見以降、電子を放出する微生物を利用する研究が盛んに行われるようになりました。

このような代謝の際に電子を放出する微生物は「発電菌」と呼ばれ、発電菌によって電気エネルギーを生み出す装置が「微生物電池」です。

微生物電池は、アノード(-極)・カソード(+極)・アノードとカソードを繋ぐ電極・アノードとカソードを分けるセパレータ(隔膜)などから構成されます。

アノードでは、発電菌による代謝が行われ、有機物の分解が進みます。
この際発生した電子が、電極を通じてアノードからカソードに移動することで電流が発生します。
カソードでは、移動してきた電子によって酸素が還元され、水となります。

微生物電池は、カーボンニュートラルであるバイオマスを使用した発電方法です。
また、バイオマス発電やバイオガス発電とは異なり、発電時に燃焼を伴わないため、火災や爆発等のリスクは低くなります。
発電菌として利用する微生物は、自然界に存在し、病原性が低いものです。


引用サイト: こちら

関連サイト:発電菌の可能性 こちら

代表的な発電菌の「シュワネラ菌」。無酸素の環境下で電極呼吸ができる〈写真提供:渡邉一哉氏〉



渡邉 はい。それでシュワネラ菌の場合は、酸素がないときに電極に電子を渡す「電極呼吸」をすることができるため、その電子をうまく集めてやれば発電装置ができるというわけです。私たちはその装置を「微生物燃料電池」と呼んでいます。

──自分で電子を電極に運ぶとはまさに発電菌ですね。ただ、微生物の大きさから考えるといったいどれくらいの発電量があるのでしょうか?



──それはすごい! たくさんつないだり、培地を大きくすればもっと大量に発電させることもできそうですね。

渡邉 はい。ただ、現実的には同じ体積で実用化されている電池や燃料電池に比べて、まだ発電効率は10分の1とか100分の1といったレベルです。その意味で、さきほどの100mlの装置はボタン電池ぐらいですね。

廃水処理と組み合わせれば、省電力、汚泥対策などのメリットも
──ところで、先生はなぜこの微生物燃料電池の研究を?

渡邉 もともとは光合成などを行う微生物の研究をしていたのですが、環境やエネルギー問題に社会の関心が高まる中、次第にエネルギーを生み出す微生物に興味が出てきたんです。現在のエネルギー事情を考えると、微生物燃料電池の有用性は非常に高いと考えられますから。

──どういうことでしょうか?



渡邉 石炭や石油由来の化石燃料は環境問題や現在の埋蔵量などから見て、持続性という面で弱い。そのた め、今、自然界に存在しているものからエネルギーを作り出すという技術が非常に求められています。さまざまなエネルギー源が考えられますが、中でも微生物 の多様な能力を利用すれば、さまざまな持続的エネルギーが可能になると期待されています。

──具体的にはどのような活用を考えておられるのですか?

渡邉 例えば、廃水処理方法の改善などに役立てられると思います。今、実際に廃水処理と組み合わせた研究を進めています。

──廃水処理ですか?

渡邉 汚水の浄化処理はさまざまなところで行われていますが、原理的には微生物に有機物を分解させて行うものなのです。

──そういえば子どものころはどこの家にも浄化槽があって、「中のばい菌がトイレの水をきれいにしてくれる」と教わった覚えがあります。

渡邉 浄化槽も同じ原理ですね。一般的な廃水処理施設では、活性汚泥法といって、汚水に空気をたくさん送り込んで、酸素を食べる好気性の微生物を育てて有機物を分解させる方法がよく使われています。しかし、この方法だと、空気を入れ込む「曝気」に大きな電力が必要です。さらに、微生物そのものも増加しますので、最終的に沈殿させて取り除き、下水汚泥として廃棄処理しなくてはいけない。しかも、有機物の分解でエネルギーを得た微生物がどんどん増えることで、結局汚泥も増えてしまうという問題があります。


廃水処理で用いた容積約1Lの微生物燃料電池装置。省エネ型の廃水処理が可能になると期待されている〈写真提供:渡邉一哉氏〉
──それはあまりよくありませんね。

渡邉 そこで、微生物燃料電池と組み合わせてはどうかと考えているのです。発電菌は酸素の代わりに電極を使うので、まず曝気の必要がなくなります。エネルギーの一部を電気として取り出してしまうので、微生物そのものの増加も抑えられるんです。

──酸素を送り込んでいた電力エネルギーがいらなくなり、汚泥処理の必要性も減る。なおかつ発電した電気も利用できる一挙三得というわけですね。実用化の目途はもうたっているのでしょうか?


大学の実験室の微生物燃料電池装置。さまざまな条件下の発電量を調べている
渡邉 今われわれがやっているプロジェクトはすでに民間企業も参入していまして、実用も近いのではと考えています。理論はできているので、あとは、いかに電極などの設備コストを下げるかなどが課題です。

──実現が待ち遠しいですね。

電気を食べる微生物。発電菌と組み合わせれば可能性大
──今後はどのようなご研究を?

渡邉 有益な微生物をもっと探し出して研究ができたらいいなと考えています。例えば身近な土の中に存在する微生物をわれわれがどのくらい知っているかというと、実は現在の技術で培養できるのはほんの0.1%に過ぎないんです。

──たった0.1%! ということは、今後の大きな可能性を感じます。

渡邉 はい。微生物の代謝は非常に多様な上、まだまだ未知の部分が大きい。科学的にも大変面白いと思います。実は今、興味があるのは、発電とまったく逆の代謝をする微生物なんです。つまり電気を食べるとでもいいますか。

──そんな微生物がいるんですか!?

渡邉 そうなんです。最近電気から有機物をつくる光合成のような作用をする微生物がいることが分かってきているんです。いわば電気合成といえます。

──将来的に電気から食べ物ができれば、食糧難対策などになるかもしれませんね。

渡邉 そういう考えもありますね。廃水の有機物をもとに発電菌からつくった電気で、今度は私たちが使うことができるきれいな有機物ができるというわけですね。





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Last updated  2026.01.25 09:00:07
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