東方見雲録

東方見雲録

2026.02.19
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カテゴリ: 科学





生命の誕生には、その前の段階の化学反応である「プレバイオティック反応(前生命反応)」の積み重ねが重要であるという説があります。しかし、実験室で再現可能な化学反応と、生物の体内で起こる生化学には、それぞれの複雑さの間に天地ほどの差があります。このため、プレバイオティック反応の詳細を探るための研究が進められています。

生物がエネルギーを生産する上で欠かせない物質を作り出すのに重要な「クエン酸回路(TCA回路 / クレブス回路)」と呼ばれる反応があります。ハインリッヒ・ハイネ大学のJonathan Gutenthaler-Tietze氏などの研究チームは、その名前に反して地殻に豊富に存在する元素である「希土類元素(レアアース)」(※1)が、クエン酸回路と似たような化学反応を促進する触媒となることを実験で示しました。
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2012年に希土類元素がないと機能しない酵素「XoxF」が発見されると、その見方に大きな変化がありました。続けて2013年にはXoxFが機能しなければ生存できない細菌の発見、およびXoxFが似た機能を持つ酵素と比べて祖先的な系統に位置づけられることが判明したことで、希土類元素と生命はかなり古い時代から関連している可能性が見えてきました。

さらに、ウランやトリウムのような放射性元素は希土類元素と化学的性質が似ているため、しばしば一緒に存在します。ウランやトリウムからの放射線は、化学反応を進めるためのエネルギー源となり得ます。

これらの背景事情を踏まえ、Gutenthaler-Tietze氏らは「これらの事項だけでも、生命の起源に関する研究で、これまで希土類元素が無視されてきたことは、まことに驚くべきことである。」と述べています。
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クエン酸回路に関する研究では、酸素を呼吸しない生物(嫌気性生物)ではクエン酸回路が逆回転すること、いくつかの段階の反応は金属イオンや鉱物が触媒作用を持つことが知られています。このため、初期の生命、あるいは生命誕生以前から、クエン酸回路と似たような化学反応が既に存在していた可能性が示唆されています。

プレバイオティック反応におけるクエン酸回路と似た反応は、主に鉄の関与が調査されていますが、Gutenthaler-Tietze氏らは希土類元素でもこのような反応が起こるのではないかと考え、実験を行いました。反応の出発点としてピルビン酸とグリオキシル酸を用意し、熱水噴出孔を再現した環境(※2)で化学反応させました。



特に、ランタンがかなりの微量であってもこのような反応が進んだことを確認できたことは大きな成果です。これはランタンを含めた希土類元素が、化学反応を進める触媒としての作用を持つことを示す有力な証拠です。

今回の実験で、希土類元素はクエン酸回路と似たような化学反応を進めることが明らかとなり、生命の誕生に関連している可能性が示唆されました。一方で、希土類元素で起こるプレバイオティック反応の様子は、鉄のそれとは異なります。ランタンによる実験では、鉄とは逆にpHが低下すること、還元反応で生成されるグリコール酸と乳酸は鉄と比較して大量に生成されることが分かりました。

このため、生命の誕生に関与した金属元素は、鉄か希土類元素かという二者択一ではなく、両者が相互補完的に関与した可能性もあります。

引用サイト: こちら

関連サイト:生命誕生のカギの一つは深海底のメタルが握っている こちら
深海熱水噴出孔環境は、地球生命が誕生した可能性が最も高い場所として注目されています。しかし、このような環境で生命の原材料である有機化合物が作り出されるメカニズムはまだよく分かっていません。今回、研究グループは、初期海洋底の熱水噴出孔環境で生じていたと推測される電気化学反応場を室内実験で再現し、噴出孔の代表的な構成鉱物である硫化金属(鉄・銅・鉛・銀の硫化物)が電気還元によってメタルに変化することを実証しました。さらに途上で生じる硫化鉄と金属鉄の複合体が還元剤及び触媒となって、生命発生に不可欠な複数の有機化学反応を促進することも発見しました。





関連日記:2025.11.08の日記 レアアース   こちら





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Last updated  2026.02.24 08:48:29
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